第52話:フランス政府との話し合い・上
「それじゃあ、ティアさんよろしくお願いします」
「あいよー、それじゃあリア、頑張るぞ」
「はーい!」
政府の人との約束の時間が来たので一旦俺はフランスへ戻る、それから黒色のスーツに着替えて巴ちゃん達と出発する。
用意された黒塗りの高級車へ分かれて乗る、俺の車は窓口役の巴ちゃん、ダンジョン庁の役員として里菜、二人の護衛役でメアリー、リーベルンシュタイン大使としてエアリス、その護衛としてミュリの六人だ。
「なんか、皆揃って黒スーツだとカチコミにでも行くみたいですね……」
里菜がボソッと呟く。
「「「えっ!?」」」
カチコミという里菜と似合わない言葉に思わず振り返る俺達、慌てて里菜が言葉を続ける。
「あっ、いえ!! 祖父が好きだったんです。昔から洋画好きで晩年、よく見ていましたので」
「へぇ……意外だね」
「それでしたら、後で集合写真を撮りましょう。お爺様にも喜ばれそうですし」
「でも、リナさんのお父様に見せたら、腰を抜かしそうな気がしますわね」
「いえ、父も実は結構好きで。あのお店のプロジェクター元々映画用に買ったんです」
そう言われると、あのお店プロジェクターとスクリーン、それからしっかりとした音響設備整ってるな……確か防音性も高めてたしそういう事だったのね。
「そう言われてみれば、音響設備にかなりこだわりがありましたね……」
「あう……すみませんその節は……」
「いえいえ、それに我が家の設備にも助言いただきましたので、良いものが出来上がりそうです」
(そういえば、お嫁さんの人数増えたから手狭になったという事で家を建てる話が出てるんだよな……)
これから免許も取るって話してたし、そうなると駐車場も必要になるという事で皆で家を建てようという事になったのだ。
(巴ちゃんが、任せて下さいと息巻いてたけど……圧倒的に仕事量多いし大丈夫かな?)
そんな事を考えていると車は郊外を出て進んでいく、道中は軍の人達が砲弾の処理や畑の整地を行っている。
「ここら辺の被害は少なそうだね……」
「そうですね、位置的には街から外れた場所ですし、逸れた弾が落ちている位ですね」
「それでも痛々しいのは変わりないですわね……」
「私達が護れるのはモンスターからの脅威ですから……」
「なに、いざとなれば畑を耕すのはリーベルンシュタインから兵を連れて来ればいいさ基礎訓練には丁度良いからな」
ミュリがケロッと言う、確かに俺もやらされた……郊外の畑でひたすらに鍬を振ってたし……。
「うっ……思い出した、あの時きつかったなぁ……」
長距離走に木剣の素振り、それが終わったら畑で鍬を振って耕して……。
「新兵の入る時期だし、必要であればな。良い体力づくりにはなるだろう」
「そうだね……機械も数の限りがあるだろうし、シド様の許可次第だけどね」
そんな事を話していると駐屯地らしき所に入っていく、しばらくすると建物の前に到着した。
「皆様、お待たせしました」
そう言ってドアを開けてくれたのは軍服を着た若い兵士だ、最初に俺が出て皆の手を取って降ろす。
「それではこちらへ」
後について歩いて行くと、軍服を着た人とスーツを着た人が半々の部屋に通された。
「日本の探索者ユウキ=カミナギ様、カミナギプライベートミリタリーカンパニーのトモエ=ツムギ様、日本ダンジョン庁代表のリナ=オオトリ様、リーベルンシュタイン大使のエアリス=カミナギ=リーベルンシュタイン様、以下カミナギプライベートミリタリーカンパニーの皆様です!」
紹介を受けると、喜ぶ顔をした者から、見下した様な顔、値踏みする様な顔、嫌そうな顔をする者、様々だがおおよそ受け入れられてると……思う。
「わざわざすまない、私はフランソワ・リュドヴィック、首相をやらせてもらっているよ」
「私はユウキ=カミナギです、色々と肩書はありますが今はPMCの社長として来させていただきました」
「そうですか、ですがお先に改めて……我が国の街を守っていただきありがとうございます」
そう言って頭を下げる首相、横目で見るがスーツを着ている内の数名は苦い顔をしている。
「いえいえ、頭を上げて下さい。俺だけじゃ守り切れませんでしたし、皆の力があってこその戦いでしたから」
そう言って後ろの皆へ視線を送る、するとフランソワさんが深く礼をする。
「さて、カミナギさん。こちらへどうぞ」
椅子へ案内されて座る、右隣は巴ちゃん左隣は里菜が座る。
「それではお話の前に、こちらに来ていただけたのは私達に力を貸していただけるという事でよろしいでしょうか?」
その言葉に相手方の人達がこちらを見る、何人か優越的な顔をしている。
「えっと、その件ですが……お断りさせていただきます」
「「「「「は、はぁ!?」」」」」
相手方から驚いた声が上がる、まぁ当然だろうね……。
「ど、どういうことだ!!」
「政府を通じて正式な依頼を出しただろう!!」
「金か! この卑しい黄猿共が!!」
口々にこちらを罵って来る者、狼狽える者、抗議だ抗議だと騒ぐ者達様々だ。
「あー、まだ話の途中なんだけど……」
というか、どれだけ当てにしてるんだよ……。
埒が空かないので立ち上がる、するとウチの皆は耳を塞ぐ。
「はぁっ!!」
思い切り手を叩く、すさまじい音が響き渡り皆が呆け顔で制止する。
「えっと……話を続けて良いでしょうか?」
皆が頷くのを確認して席に座り話しを始める。




