第49話:正式な依頼。
暫くジャンヌちゃんが泣いた後、アマテラスさんがジャンヌちゃんを座らせる。
「さて、ジャンヌさん……」
「『はい……』」
「すみませんお二人共同じ名前でしたね、ジャンヌ・ダルクさん」
「はい……」
「私が誰かわかりますよね?」
「はい、神様の代理のアマテラス様です……」
「正解。では、私が優希さんについてきた理由は理解してますか?」
「はい……私が身勝手な行動をしてこの子やこの世界の人に迷惑をかけた事です……」
「そうですね、というか最初から優希さん達にお願いをして下さい……その為に私達が色々と裏で手を回したんですから……」
そう言って肩を落とすアマテラスさん、そして俺は聞き捨てならない事を聞いた。
「ん? 今手を回したって言ったよな?」
「あっ……」
ダラダラと汗を流し始めるアマテラス。
「アマテラスさん……いやアマテラス、そこに座れ」
「ひゃひゃい!!」
ジャンピング正座をした後汗を流しながらずっと下を向いている。
「質問、いつからこの旅行仕組んでた?」
「——えっとぉ……優希さんが京都から帰って来るあたりです……」
「ひと月くらい前か……どうして言わなかったの?」
「それは……優希さんが知ってしまうと、確実に歴史の齟齬が起きるので……」
「ほーう、じゃあこの戦いも知ってたし、さっき話してたもう一人のジャンヌ・ダルクの件も既に決まってると言う事だよな? それなのに忙しいとか言ってジャンヌ・ダルクの魂を逃がしたんだな?」
「あっ……」
しまった!という顔をするアマテラスさん
つまり、知ってたと言う事だし、この世界の流れはある地点まで完全に決まってると言う事か……。
「というか、理映が俺達の子孫なら少し考えればわかる事か……」
「そうですね……」
「いやいや、だからといって、何を平然としてるんだ? 少なくとも知っていたんだからジャンヌダルクを怒るのは筋違いじゃないか?」
「『あっ……』」「……」
二人共アマテラスさんを見る、汗の量が増えて水溜まりでも出来そうな位になっている。
「ジャンヌ・ダルク、君に聞きたいんだけど、今回のアマテラスさんのやらかし、許してくれる代わりに君のやりたい事を手伝わせてくれないか?」
「えっ?」『へっ?』「えぇっ!?」
いや、アマテラスさんは何で驚いてるのさ……。
「何でアマテラスさんまで……顛末は知ってるでしょ?」
「知っていますが……私の知っている事柄は教科書の様な感じで……どんな会話をしていたかとかどうやってその顛末まで進んだかは記録されていないのです」
そうなのか……映像記録みたいに事細かに載ってる訳じゃ無いんだ……。
「ですので、優希さんのその発言に驚いてしまったんです……」
「そう言う事か……それでジャンヌ・ダルク……長いからジャンヌでいいか。ジャンヌの返答は?」
「ほんとうならばフランスの民の力で勝ち取りたいのだが……頼む、力を貸してくれ……」
「わかった、じゃあまずは……朝ご飯にしようか……」
「ですが、そんな暇は……」
「うん、大丈夫。それに手順を踏んで戦力を確保しないといけないしね」
「???」
疑問に思ってるようなジャンヌを連れて皆の元へ転移するのだった。
◇◆◇◆
「ごちそうさまでした……」
食器を置くジャンヌ、気は進まないだろうけどしっかり食べてもらった。
「お口に合ったなら良かったです」
笑顔で食器を下げる春華ちゃん、それを俺も洗うのを手伝う。
「ごめんね、急に人数増えちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ。流石に食材が無くなってしまったのでこの後買いに出ないといけないですが……お店やってますかね?」
「うーん、どうだろう……昨日の今日だしなぁ……」
日本で買って来る方が良いかな?
「いっその事、日本へ買い物しに行こうか?」
「そうですね……ご一緒しても良いですか?」
「うん、じゃあ洗い物終えたら行っちゃおうか」
「はい!」
それから春華と冬華と共に日本へ転移して買い物を済ませて来ると、巴ちゃんが近寄って来た。
「優希さん、フランス政府と日本のダンジョン庁から正式な依頼が来ました」
「早かったね、それで何て?」
「それはこちらを見て下さい」
渡されたタブレットを見るとフランス各都市の被害状況が表されている。
「これは……酷いね……」
書かれてる数字は行方不明者、正式な死者の数、それと陥落した街の名前が書かれている。
「それとこちらが優希さんの居ない間に政府の方が届けて来た各地の空撮・衛星写真です。明日こちらの方に作戦本部が置かれるとの事で、先に情報を出してくれました」
渡された封筒を開けると、百枚ほど印刷された各地の被害写真が出て来た。
「殆どが亡者だね……正式な軍服を着ている敵は数少ない感じだね」
「はい、恐らく敵の大半が殺された住民と甦らされた人達です」
「アマテラスさん、仕事は大丈夫そう?」
「あーはい。これでもシステム化は終わったのでそこまでは忙しくないですね……」
「そっか、確認したいんだけど。一度敵にされた魂は助からないよね?」
「はい、ですのでこちら側で浄化します。思いっ切りやっちゃってください」
「了解、それで巴ちゃん、フランス政府は軍を出せるの?」
「はい、オルレアン以南の地域とパリ及び襲撃されてない都市間の防衛線もありますがそれなりな数は来てくれるかと……」
「そっか、それじゃあその軍はジャンヌに指揮してもらおうか……それと、もう一人協力を頼むか……」
俺の考えが当たっているなら、彼女の力は数万の差をひっくり返す力になるはずだ。




