第48話:二人のジャンヌとは……。
「それで、ジャンヌちゃんともう一人のジャンヌ・ダルクって?」
ジャンヌちゃんの元へ飛びながらアマテラスさんに質問をする。
「はい、もう一人のジャンヌ・ダルクの前に優希さんはジャンヌの人生はどのくらい知ってますか?」
そう言われても、某ゲームで英霊として出た際に軽く調べた程度だ。
「うーん、知ってると言っても百年戦争の時にフランスを敗北の危機から救って。その後は魔女裁判にかけられて殺された事くらいかな」
「そこまで知っているんですね、なら話が早いです。もう一人のジャンヌは〝魔女〟として殺されたジャンヌなのです、優希さん達で言う闇堕ちしたジャンヌですね」
「でも、もう一人のジャンヌは何のために?」
「えっと……わからないんです。ジャンヌさんに宿ったジャンヌは恐らく救国の為に動いてると思うのですが……」
「……放しても良い?」
「ぴゃう!?だだだ、駄目ですよぉ!? 一応身体は人間なんですから!」
真に受けたアマテラスさんが慌てだす、しっかりハーネスつけてるから落ちたりはしないんだけどね……。
「冗談だよ、それにハーネスついてるから落ちたりはしないさ」
「あっ、そうですね……っておちょくらないで下さいよぉ~!」
ぽかぽか叩かれつつ飛んで行く、そしてジャンヌが居る街へ辿り着いた。
「これは……」
「不味いかもですね……」
眼下に見える街は混乱の最中だった、その中心でジャンヌちゃんが高らかに演説をしている。
「このままですとこの街は明日には敵の手に落ちます! 皆様武器を取って戦いましょう!!」
ただ、その言葉は混乱を招き、
「うるせえ! オルレアンを襲ったのはモンスターって話だろ! 一般人の俺達が対抗できるわけないだろ!!」
「そうよ! 私達は武器を取った事も無いのよ!!」
「だからです! このまま、皆でこのまま死を待つしか無いのですよ!」
身振り手振りで大きく表現する、だが住民には響かない様だ。むしろ反感を買いそうな事まで言って煽っている。
「あれって……魂に引っ張られてるよな……」
「ですね、一旦離した方が良いかもしれません……」
「わかった、じゃあ一旦近くのビルにでも降ろすね」
ガチャガチャとハーネスを外していく。
「へっ!? ちょちょちょ!? ひゃぁぁぁぁぁぁ!?」
最期の留め具を外し、落ちていくアマテラスさんを風魔法で受け止めて近くのビルまで飛ばす、無事に着地したのを確認してジャンヌちゃんの回収に入る。
「さてと……少し大きな音で大丈夫かな?」
注意を逸らす為に号砲(音だけ出る打ち上げ花火)を設置していく。
「まぁ、少し混乱が大きくなるけどまぁ良いでしょ……せーのっ!」
――ヒュンッ!
――――ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ!!
「思ったよりも音が大きかったな……まぁいいか」
思った通り混乱が増していく、ジャンヌちゃんと言い争いをしていた人も音にビビッて逃げていく。
「あぁ! 皆さんどうして!!」
「うるせえ! 俺達は命が大事なんだ!!」
「そうよ! 貴女みたいなみすぼらしい子供にはわからないでしょうね!!」
そう言って散り散りになっていく、再び声を上げるがだれも彼女の声に耳を傾けない……。
「どうして……神は戦えと言ってますのに……」
「まぁ、数百年前とは違うからね」
「誰です!? あっ、ユウキさん……」
俺の事は覚えているらしい、怒られると思ったのかしゅんとなる。
「全く……とりあえず行くよ」
「えっ? 待って! 放して! 私はまだ!!」
ジャンヌと混じっているからのか言動が今までと変わっている。
「私は街を……フランスを守らないといけないのに!!」
そう言って逃れようとするジャンヌを抱きかかえアマテラスさんの元へ向かう。
「お、お帰りなさい優希さん……」
スーッと俺達から離れるアマテラスさん。
「ただいま、っと」
意気消沈したジャンヌちゃんを降ろし、その前に立つ。
「えっと……ジャンヌ・ダルクの意識はあるの?」
「はい、ジャンヌさんと私、双方の意識はあります」
「そうか……じゃあ、ジャンヌちゃんに聞くけどさ、どうして勝手に動いたりしたんだ?」
そう言うと少しバツが悪そうに喋り出す。
「優希さん達には、迷惑かけたくなかったので……」
「私が、この子を唆したんです! 人々を立ち上がらせればこの国を取り戻せると!」
「えっと、ジャンヌさんは少し黙ってて」
「は、はぃ……」
俺に言われ小さくなるジャンヌちゃん、というか自由に交互で話せるのかい……。
「先に、言っとくよ。俺はこれでも異世界で勇者なんてものをやってたんだ、そんな俺が知り合いに……それも友達の頼みを迷惑だなんて思う訳は無いさ」
そう言って軽くゲンコツを落とす、しばらく抑えているとジャンヌちゃんの足元に雫が落ちる。
その姿に狼狽える俺、やりすぎたかも!?
「えっと……やりすぎた?」
「優希さん、なんだかんだ馬鹿力ですからねぇ……」
アマテラスさんに顔を向けると、『仕方ないですね~』みたいな顔をする。
「え、えっと……痛かった?」
「ごめ……ごべんなさい……」
「へっ?」
「ごべんなさいぃぃ!!」
大声を上げてジャンヌちゃんが泣き始めた。




