第43話:ランス防衛線Ⅴ
◇里菜side◇
「——うっ……私……」
生きていた? でもどうして……。
「リナさん、目が覚めたのですね」
柔らかく微笑む女性が水を持ってくる。
「あ、エアリスさん……」
「怪我も無く、気絶していた様です。春華さんとセレーネさんが心配してましたよ」
「不甲斐ないです……二人は?」
起き上がり水を受け取る、思えば凄く喉が渇いている。
「お二人は今、救助した方を送り届けている所です」
「そういえば、あのお母さんと赤ちゃんは?」
「無事でしたよ、お二人について今は避難所へ向かってます」
それを聞いて安堵する、私の油断のせいで助けれなかったら皆に顔向けできない所だった。
「それでリナさん、お聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」
真剣な顔をしてこちらを向いているエアリスさん、どうしたのだろう。
「はい、どうしたんですか?」
「それがですね、ハルカさん達があのお母さん達を救出した時なのですが。リナさんとあのお母さんの周囲に白い炎が護るようにあったそうですが、何かわかりますか?」
白い光? そんなもの見た事も聞いた事も無い。
「ごめんなさい、思い当たる節がないのでわからないです……」
そう言うと、エアリスさんは考え込む様に顎に手を当てる。
「そうですか……ハルカさん達が近づくと消えたみたいで、魔力の感じ的に特に害は無さそうとおっしゃっておりました」
「そうだったんですね……何だったんだろう……」
「一度ユウキ様に看てもらうのが良さそうですね」
「そう、ですね……優希さんにはまた迷惑かけちゃうなぁ……」
「大丈夫ですよ、ユウキ様は頼られるのが好きですから」
確かに、彼なら二つ返事で動いてくれるだろう。
「それで、お加減はもうよろしいでしょうか? 戦線が移動したので私達も動きますので」
そう言って立ち上がるエアリスさん、確かに救護所も私の寝ていた簡易ベッドだけだ。
「あっ、はい!」
急いで立ち上がる。異常は無さそうだし、むしろ身体が軽い。
「それじゃあ、向かいましょうか」
「はい!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇鈴香side◇
アンナちゃんのご両親を探す為に退避をしている住民を追い越しながら声をかけていく。
「見つからない……どこだろう……」
『神楽組の皆さんの中で誰か出れる方いらっしゃいますか?』
通信器から春華ちゃんの声がしたので私が出る。
『春華ちゃん、どうしたのかしら?』
『こちらの方で救助した方が多数居ますので手を貸してもらえますか?』
『わかったわ、私は探してる人が居て神楽組の皆の方へ向かっているのだけれど……』
『それでしたら私達が神楽組の皆さんの代わりに戦闘に入りますので、交代しましょう。皆さんお疲れでしょうし……』
『助かるわ、じゃあこちらも向かうわね』
通信を終えて走る、皆は目と鼻の先だ。
◇◆◇◆
「みんな! おまたせ!!」
神楽組の皆が押し返している敵を倒しながら戦線に加わる。
「いらっしゃい鈴香!」
「避難の方は大丈夫ですか?」
「(こくこく)」
「大丈夫よ、みんなが抑えてくれるから無事に避難しているわ」
「鈴香ーさすがに数が多くて疲れて来たよ」
疲れた言う蒼だが両手でクロスボウを連射しながら言う。
「さっき聞いてたと思うけど、そろそろ春華さん達が来てくれるから任せても大丈夫みたい」
「それは良かったですわ! っと」
「『土の使徒よ我と敵の間に堅牢なる礎を築け!』」
そう言って亡者を吹き飛ばす紅さん、大きく空間が空くそこに翠がすぐに兵を築く。
「私もいっくよー!!」
菫が戦斧を叩きつける、地面が陥没して亡者が落ちる。
「『炎の友よ私の敵を燃やして!——炎の旋槍』」
蒼の叩き付ける様な炎の槍が敵を焼く、大きな炎の壁で敵の姿が崩れていく。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇優希side◇
「それじゃあ皆、任せたよ」
「はい!」
「無事に送り届けます!」
合流地点に着いた俺は、救出した子達を春華とセレーネに引き渡す、これからエアリスと里菜の元に戻る予定だ。
「優希さん、里菜さんをおねがいします」
「あぁ、わかった、他の皆にもよろしくな」
「「はい!」」
「与一・鬼一も頼んだよ」
「御意」
「おう!」
援護として式神たちを残す、彼等であれば十分だろう。
「急いで戻らないとな……」
元来た道と違う方向へ走る、エアリス達の方へ急がないと……。
屋根を超えて進む、仕方ないけどショートカットしないとな。
飛んで進むと通路を進む二人が見えたので降り立つ。
「エアリス! 里菜!!」
「ユウキ様!」
「優希さん……あれっ?」
二人の前に降り立つ、すると里菜の膝が崩れる。
「里菜、大丈夫!?」
「ご、ご心配おかけしましたっ……」
倒れそうになる里菜を受け止める、安堵したのか泣き出してしまう。
「ううん、里菜が無事なら良いんだ。エアリスも里菜の事ありがとう」
「私はただ休ませていただけですので」
「住民の治療もあったのにありがとうね」
「ユウキ様に任された事ですから、それに私は治療が専門ですから」
空いた片手でエアリスを撫でる、もう少し里菜が落ち着くまではこうしていよう。




