第25話:路地裏の少女
「……ふう、そうね助けてもらっちゃったわけだし。ある程度は教えないと筋が通らないわね」
女性の方が髪を解いて眼鏡を外す。
「私は……リア、歌手をやってるわね」
「私はジャンヌ・ルシュール、ただの町娘よ。歌いまわってる時は、名目上アリスって名前で呼んで貰っているわ」
にっこりと笑うアリスもといジャンヌ、ジャンヌってまさか……。
「あーえっと……ジャンヌって名前はフランスじゃよくある名前だからね、おにーさんが想像してるのとは違うよ?」
お祭りのポスターを指差しながら困った様に言うジャンヌ。
「そうなんだ、ごめん」
何度も聞かれた質問なのだろう、俺の早とちりに肩を竦めながら笑う。
「大丈夫大丈夫、それよりお兄さんたちの名前は?」
気を取り直してこちらに問いかけるジャンヌ。
「えっと、俺は上凪 優希、普通の日本人だよ」
「私はエアリス・上凪・リーベルンシュタインです、よしなに」
「私はユミュリエル・上凪・グロウナイトだ、よろしく」
二人と握手する。
「普通ねぇ……嘘ね。その洋服、『SANJO』のでしょ?」
チラッと見ただけでわかるのか……。
「あぁ、そうだけど、見てわかるんだ」
「まぁ、腐っても色んな所で歌わせてもらってるからね、無論日本にも行った事あるわよ」
「そうなんだ。ま、まぁ知り合いに『SANJO』の人がいるからね。その人から一張羅に良いからってお勧めしてもらったんだ」
「へぇ~まぁそういう事にしておくわね」
ニヤリと笑う、俺はそこまで有名じゃ無いし知ってるとは思えないけど……。
「それで、追われてたのはリアさんの方?」
「えぇ、恥ずかしながらあの人たちは私の護衛よ」
めんどくさそうに言うリアさん。
「うーん、不味い事しちゃったかな?」
「良いのよ、私が好きでジャンヌと歌いたいから抜け出してるのにしつこいんだもの」
「あはは……リアさん連日抜け出してるみたいで……」
苦笑いをするジャンヌ、それに頬を膨らませるリアさん。
「むぅ……そう言ってもジャンヌは私が来たら嬉しそうな顔する癖に」
「うっ……」
そうして笑い合う二人。
「それで、二人共これからどうするのですか?」
「あーっと、どうしようか?」
「そうねぇ……私は最終的に宿に戻るけど……」
リアさんがジャンヌを見る。
「あーあはは……」
「そういえば私、ジャンヌのお家知らないわね」
リアさんにそう言われ、目が泳ぐジャンヌ。
「あーうー……ごめん!」
「あっ、ジャンヌ!!」
ばっと駆け出すジャンヌ、リアさんも追おうとするがあっという間に入り組んだ地へ逃げ込んでしまった。
「私、何か悪い事でも言っちゃったのかしら?」
「うーん、どうなのでしょう。何かしら事情がありそうですけど……」
「ともかく、少女が一人で出歩くのは心配だし追いましょう」
「そうね、ユウキ様お願いしますわ」
「任せて……こっちだね」
探知で、ジャンヌの魔力を追う、郊外に向かっていて住宅街に移っていく。
「随分入り組んでますわね……」
「そうだね、でも家の形的入れる路地とかは少ないし、見つけやすいからすぐに追いつきそうだね」
道は多いものの細道とかは無いので家の間を抜けて移動しているジャンヌには追い付かないが止まれば場所が丸わかりなので追いつくだろう。
「止まったみたいだね、あっちだ」
それから幾つかの道を抜け小さな家に辿り着く、路地を抜けた先にあるかなり狭い家だ表通りの家と違って見た目は古めかしい。
「ここだね……」
「表通りからは全く想像できないわね」
「そうね、でもどうしてカミナギさんはわかるの?」
「あー実は魔法使いでね、魔法で探せるんだ」
「企業秘密って事ねぇ……犯罪には使ってたりしないわよね?」
鋭い目を向けて来るリアさん。
「いやいや、そんな事はしてないよ。人探しに使う位だし……」
「大丈夫ですよリアさん、ストーカーなんてする場合は私が捩じ切りますので♪」
「そうだな、私も剣で斬り落とすな」
待って、怖いんだけど!?
「まぁ、二人の彼女さんが言うなら安心か……」
納得してくれたみたいで、扉に向き直りノックする。
「はい、お家賃はまだ……ってリアさん!? それにお兄さんたちも!? どうしてここが!?」
目を見開き驚くジャンヌ、慌てて閉めとようとする扉を掴むリアさん。
「待ちなさい、今聞き捨てならない事を聞いたわ」
「うぐっ……」
「まぁ、それはそうとさっき慌てて別れたからね、心配になって追いかけて来たんだ」
「もし良かったら入れて下さいます?」
エアリスに言われ俺達を見る、諦めたのかため息をついて扉を開けてくれた。
「どうぞ、狭いですが……」
「ありがとうございます」
皆で軽く土を払い家の中に入った。




