第20話:凱旋門からの景色
「えっと……はい、今回の旅SPとして着いてきて貰ってます」
鈴香がそう言うと、ひたすらに『新婚旅行?』とコメントが飛んで来る。
「あはは……これでもちゃんとお仕事があるのと、未知のダンジョンなので優希さんの会社に護衛を依頼したんです」
「そうそう、このメイドさんや秘書さんも上凪さんの会社の人だからね!」
「快適、最高……」
「(こくこく)」
「という事でこれから移動をして動画用の観光名所ツアー、行きますね~」
生放送を終えてバスに乗り込む、それから30分程走ると凱旋門が見えて来た。近くの駐車場へ停めて俺達は徒歩で向かう。
「「「「「おぉ~」」」」」
「ここハ、シャルル・ド・ゴール広場でございまス。目の前にあるのハ、かの有名な凱旋門でございまス」
「大きいなぁ……」
皆が唖然としている。
「この位の門私の城にも欲しいですわね……」
リリアーナ、確かに魔族は身体が大きい種族が多いけど……このサイズはいらないでしょ……。
「皆様、上に上がれますのでこちらへどうゾ」
受付を経て上に登る、少し長い階段を経て視界が開ける。
「うわぁ……」
「凄い……」
「高い……」
「(こくこく)」
「凄いわねぇ……」
「地上高およそ50m、我が家よりかは低いのですガ。パリの建物には高さ制限がありますので視界の開け具合が凄いのでス」
ウチってそんなに高いんだ……確かに俺の出入りの為に高い部屋を用意してもらってたけど、でも周りの建物の均一さが際立ってて凄く綺麗に感じる。
「この形の区画整理は良いですわね」
「ん、中央に噴水、そこから大きな街路を6本通して地域ごとに工房街や商店街の区画を作る」
「メイン通りにはガラス張りの商店を沢山置きたいですわね」
「でも、それだと防犯面は悪くなりませんか?」
「そこは日本の防犯器具でどうにかなるんじゃない?」
エアリス・ユフィ・リリアーナ・セレーネ・アミリアの五人が何か話してる、区画整理とか言ってるし、王都の整備でもするのかな?
「えっと……皆、何を話してるの?」
近付いて話を聞く、どうやら俺の領地について話している様だ。
「はい、ユウキ様の新領地である都市の参考にですね」
「貿易都市とするつもりらしいので相談を」
「せっかくユウキを象徴する街だからね、新しいものを取り込んで作っていきたいし」
「わっと驚くような街にしたいですからね!」
「だから、この街の区画の作り方とかを調べておきたい」
「そっか、でも皆。折角の旅行なんだから、固く考えないで楽しんでよ?」
普段からこっちの世界に慣れたり、勉強を頑張ってるんだからたまには肩の力を抜いて欲しい。
「「「「はーい!」」」」 「ん、大丈夫。でも……」
「でも?」
「優希との未来の事を考えるのも楽しいから」
「そうですわね、私達は嫌でやっている訳ではありませんし」
「むしろ、ユウキと一つの大きな……それこそ歴史に残るような物を作りたいからね」
「なので、とても楽しいのです」
皆が笑顔を浮かべて色々と語る、その顔は凄く生き生きとしている。
「そっか、じゃあ俺も皆がより楽しめるようにしないとな」
仕事も大事だけど、家族との時間も出来るだけ作らないとな。
そう思っていると、手を引かれた。
「ん? 優羽か、どうした?」
「お父さん、そろそろ皆さん動くそうです」
指差すと、動画も撮り終えた神楽組と耀達が話している。
「ありがとう、優羽は楽しんでる?」
「はい、まさか私の人生でこんな場所に来れるとは思ってもみなかったので感謝しています」
「そっか、それじゃあ少しだけ父親らしい事するかな」
「父親らしい事? っひゃぁ!?」
優羽を抱きかかえ持ち上げる、出会った頃より増えた重みを感じながら景色を眺める。
「お父さん!? 何を!?」
「たまには、良いじゃないか」
「良く無いです! 恥ずかしいです!!」
顔を赤くしてわたわたとする優羽、危ないのでガッチリとホールドしてるので優羽の抵抗が弱くなってくる。
「うぅ……少しだけですよ……」
「ありがとう、それにしても優羽、重くなったがふっ!?」
肘が落ちて来た、結構痛い……。
「っつ!! お父さん! 女の子に禁句です!」
肘を擦りながら言う優羽、確かに小学生とは言え女の子にそう言うのは禁句だった。
「す、すまん……」
「全く……デリカシー無いと、嫌われますよ」
「うっ……気をつけます……」
怒っている優羽に謝りながら周りを見る。
「確かに、普段の私じゃ見えない景色ですね……凄く高いです」
「普段は空を飛んでるからもっと高いけどね」
「それとは少し違います、地に足が着いてる感覚が強いんです。それにお父さんにこうやって持ち上げられるのもあまり無いですし、凄く新鮮です」
「そっか。じゃあもう少しこのままでいいかな?」
「仕方ないですね……特別に許します」
先程肘が落ちて来た場所をさする優羽。
顔は見えないけど、きっと嫌な顔はしてないだろう。




