第15話:秋谷さんから仕事の依頼
放課後、自宅に帰ると秋谷さんが自宅に来ていた
「優希さん、お願いがるんだけど……」
「お願い? タレント出演とかって事なら断るよ?」
「優希さん、冗談言うなら怒りますよ?」
後から鈴香に今度出演するドラマの台本で頭を軽く小突かれる。
「いやいや! この間もトーク番組に出されて散々だったじゃん!?」
長年やっているご長寿のトーク番組に突如出演させられたのだがホント何を受け答えしたのか覚えていない位なのだ。
「あははーカチコチな優希さんが見れて楽しかったですし、可愛かったですよ」
「そういう事じゃないですよ、紅もちゃんと内容を言わないと……」
「そうでした、それでですね今度フランスのパリで行われる大きなイベントに私達が出演する事になったんです」
そう言って出してきたタブレットを見ると、翻訳されたメールがそこにはあった。
要約すると世界中の選ばれた、探索者の歌手やアイドルが一堂に会してコンサートやフランスの巨大ダンジョンに挑むといった企画があるらしい。
「私達はアイドルとしてはまだまだだけど、優希さんのお陰で探索者としては一流ですので今回お呼びがかかったんです」
神楽組は日本国内の探索者の中でも上から数えた方が早いレベルなので確かに声が掛かるのは当然ともいえる。
「それで、そのイベントに行くにあたって優希さんをセキュリティ……SPとして雇いたいんです」
「あ、一応巴ちゃんからなんだけど、私達の事務所をからの契約って事なってて優希さんのPMC《会社》との契約になるって事で、優希さんの許可さえあれば仕事として受けるそうだよ」
鈴香が補足を入れてくれる、一応プロダクションは巴ちゃんのお爺さんである厳徳さんの所有だしそこからの正式なお仕事の依頼という事か。
「それなら断り入れる必要はある? 一応会社の主な業務は巴ちゃんにお任せしてるし」
「あーそれがね……時期の問題があるんだよね……」
「時期?」
「そうなんです、そのイベントがあるのがGW中なんです」
その言葉に数秒思考停止する。
「…………GWって日本だけだよね? 国民の休日が揃ってるのはその時期ってだけで……」
「えぇ、元々フランスは6月に大きな音楽祭もあるんですが実はその前の月、つまり五月に大きなお祭りがあるんですよ」
秋谷さんがそう言いながらタブレットを操作する。
「大きなお祭り?」
「はい、ジャンヌ・ダルク祭りというのがありまして……」
「ジャンヌ・ダルクってあの?」
置かれたタブレットを見るとパレードの写真がいくつも見える。
「はい、それに乗っかったといいますか、掛け合わせたイベントですね」
つまり探索者の歌手やアイドルもジャンヌ・ダルクと同じ、勇敢なで偶像的な戦乙女として乗っかろうという事か。
「わかった、それなら手伝うよ。一応SPとしては俺とミュリ、パーティとかあったら対応できるようにメアリーとユキで良いかな?」
公的な場でも護衛としてマナーや立ち居振る舞いが出来るとなるとこの四人が正解だと思う、他は皆お姫様とかだし……。
「ありがとうございます、それじゃあ来週の金曜日に迎えに行きますね」
「わかった、それじゃあそれまでに準備しておくか」
(神楽組の皆も少し衣装を変えても良いかもしれないから、ウチのデザイナー陣に知恵を貸してもらおう)
そんな事を考えながら、秋谷さんと鈴香を二人の事務所所有の社員寮へ送っていくのだった。
◇◆◇◆
「さて、何かお菓子でも買ってくかなぁ」
二人を送り届け、商店街に戻ってくると困った顔をしているメアリーが居た。
「あっ、旦那様」
「どうしたのメアリー、珍しいね」
「はイ、実はこちらを頂いたのですガ」
「ん? 福引券?」
そういえば、最近やってたな、確か3枚で1回できる奴だったっけ?
「実は後1枚で回せるのですガ、特に買う物もありませんのでどうしようか悩んでましタ」
手元を見るとマイバッグに色々と入っている、夕食の買い出しに言ってたのか。
「それだったら……少しデートに行こうか」
「えっ!? 旦那様!?」
メアリーの手から買ったものが入ったマイバッグを受け取り手を繋ぐ、目指すは最近できたあのお店だ。
「こんばんはー、まだやってる?」
「あっ、優希さん。お久しぶりです」
「お久しぶりですっ! 優希さん、まだやってますよ!」
見知った顔が元気な声を返してくれる、手を繋いでやって来たのはクレープ屋さん、実は風間さんと長山さんのバイトしているお店で、二人が学校帰りでも出来る場所を探していたので紹介したのだ。
「そうか、なら良かった。メアリーはどうする?」
「で、ですガ。夜ご飯もありますシ……」
「大丈夫だよ。それに全員分のクレープ買ってけば、お咎めも無いだろうし」
その声に、軽い悲鳴を上げる二人。
「「え゛っ……全員分?」」
「あー不味い? 材料無いとか?」
「それは大丈夫ですが……何個くらいですか?」
「うーんと……15個くらい?」
「流石に……」「それは……」
「材料がない?」
「それもなんですが……」
「もう、閉め作業に入ってて……生地が……」
見せてもらうと、後数枚くらいしか焼けなさそうだ。
「わかった、じゃあメアリーここで食べる分だけにしようか」
「わかりましタ……では、いちごホイップミルフィーユにトッピングで追加ホイップとチョコレートソース、追加いちごスライスにバナナとブラウニーにアーモンドスライスをお願いしまス」
「「「へっ?」」」
何かとんでもない長さの注文が聞こえたんだけど……。
「ですのでいちごホイップミルフィーユにトッピングで追加ホイップとチョコレートソース、追加いちごスライスにバナナとブラウニーにアーモンドスライスをお願いしまス」
まるで呪文のように平然とした顔で諳んじた……。




