第13話:消える参加者と祠
翌朝、早々に俺達は脱出ゲームを開始した。
このイベントは二人一組で進むとの事で、俺はジャンケンで勝ち抜いたエアリスと共に進む。
「えっと……特に変な所はないよね?」
周囲の人達が悩む中、二人で周囲を調べつつ問題を解く。
「そうですねぇ……っとこの回答はこれですね」
「エアリス……解くの早いよ……俺まだ解けてない……」
解くの早すぎて謎が謎じゃない位に進んでいく。
「そうですか? でも、確かにもう少しゆっくりでも良いですね……」
腕を組んで来るエアリス、いちゃついて来るけどまぁ良いか。
「それにしても、エアリスはどうやってそんなに早く解いてるんだ?」
「うーん、この脱出ゲームって推奨年齢が15歳以上となってますので問題の解法が中学卒業位の答えになるようになってるんです」
問題の答えをよく見る、確かに計算方法や図形問題なんかは中学生の勉強だけで出来ている。
「……確かに、高校生で習う様なものは使ってないや」
「はい、ですのでサクサクと解けてしまうんです」
「いや、聞いてもそこまで早く出来るかわからないんだけど……」
「そこは半年前に猛勉強しましたので♪」
そういえばそうだった、エアリスとユフィは中学3年分の勉強をひと月ほどで終わらせたんだった。俺よりも中学生のクラスの問題の記憶が新しいのだ。
「そう考えると、エアリス達は凄いよなぁ」
「はい、頑張りましたので褒めて下さい!」
ドヤ顔をするエアリスの頭を撫でる、何か周囲の視線が向いてる感じがする……。
「ユウキ様」
「エアリスも気づいた?」
「はい、鋭い視線がいくつかありますわね」
「人間じゃ無いし、モンスターでもない感じだね」
「そうですわね、昨日相対した妖に酷似してますが魔力の感じもしますわね」
今のは微量の魔力を感じたからかエアリスもしっかり気づいた様だ。
「気付かれない様に、気付いてない振りをしておこうか」
「そうですわね。ですが完全に知らないフリより、なんかあったけどわからない的な方がよろしいですわね」
「わかった、じゃあそんな感じでいこうか」
腕を組みながら周囲を見て頬を掻く。
「ナンカイマー見られてる気がしなかっタ?」
「ユウキ様……そうですか? でしたら私の視線かもしれませんわね♪」
そう言って頬をつついてくる、いちゃ付いてバカップルを演じていると視線が弱くなって来る。
「一旦、休憩所に入ろうか」
「そうですわね、喉も乾きましたし」
二人して無料の休憩所に入る、中では脱出ゲームの参加者の為にお茶を出してくれたり休めたりするようになっている。
「いらっしゃい、お二人ですか?」
「はい、脱出ゲームの参加者はここで休めると聞いて」
「えぇ、どうぞどうぞこちらへ。簡単なお茶しか出せませんが」
座敷の奥の庭が見える縁側へ通された、そこで出されたお茶を飲む。
「美味しいですね」
「この近は白川茶の産地でね、私の孫が生産してるんよ。もし良かったら街の方でお土産のお茶も売ってるから帰りにでも買って行ってね」
「わかりました、帰りに寄ってみますね」
それからしばらくお茶を飲んだり、村の事について聞いたりして十分時間が経ったので出発する。
「それではお二人さん頑張ってねぇ~」
おばあさんに見送られ休息所を出た、興味を無くしたのか伺う様な視線は無い。
「エアリス、大丈夫だった?」
「はい、私は解毒と呪い無効のアミュレットがありますので問題はありませんでした」
「そうか、しかしまさか毒盛ってるなんてな……」
「私もアミュレットに反応があって驚きました」
「ただ、あのおばあさん普段から服用してるみたいなんだよね……」
鑑定で出てきたのはチョウセンアサガオ、どうやら普段から自分の飲むお茶に少量交えて飲んでいる様だ。
「それですと故意に入れたのか使っている茶器に残っていたのかわからないですわね……」
判断が難しいのは以前俺達が漢方茶を飲んだ時に同じ様な事があったのでわからないのだ。
「他に気になる部分が無かったし、偶然と思っておこうか」
「そうですわね、それ……ユウキ様あの女性達……」
前を歩く女性二人を指差す、俺達と同じ様に近くの休息所から出て来たばかりだ。
「ふらふらしているね『——鑑定』」
状態を見るとどうやら幻覚を見ている様だ。
「ユウキ様、隠れましょう」
「あぁ」
物陰に隠れると、休憩所から出て来た老人が女性を誘導する。
「追いましょう」
エアリスの言葉について行く、そのままつかず離れるの距離で追うと古びた祠があった。
「今の二人は……この岩の奥か……」
岩を触り薄く魔力を放つ、すぐ探知にひっかかる。
「開きませんね、何か細工があると思うのですが……」
エアリスが覗いたり周囲を回って観察する。
「うーん……よっと!」
魔力を込めたパンチで祠を壊す、凄い音を立てて土台が割れ奥に道が見えた。
「流石ユウキ様ですね」
「よしっ、じゃあ進むか」
「はい!」
降りて中に進むと、一人の老人が驚いた顔をしていた。
「お主ら何故ここに!?」
「え? 祠を壊したんだけど……」
「えぇ!? お主!あの祠を壊したんか!?」
「あっ、はい……後で直しますから……」
「そんな……呪われてしまう……、宿儺様に呪われてしまう……」
「スクナ?」
(まさか、両面宿儺? 前に天照さんが言ってた?)
その瞬間、ぞっとする感覚と共に防御魔法を展開した。




