第7話:カリキュラム開始
「優羽、学校お疲れ様」
「お父さん、今日はすみません。私が言ってしまったせいで……」
開口一番謝って来る、気にしないでいいのに……。
「いいよ、優羽のお願いなら聞いてあげるさ」
頭を撫でながら笑いかける、すると学校だからなのか少し嫌そうに手を持ち上げる。
「お、お父さん、恥ずかしいです!」
「あぁ、ごめんごめん。俺も昔父さんにやられて恥ずかしかったのを思い出した」
父さんの時は半ベソかきながらぐりぐりしてくるので水城家と共に笑っていたのを思い出す。
「全く……」
そうは言いながらも手は離さない優羽。
「えっ…と……上凪ちゃん?」
クラスメイトだろうか? 声をかけて来た女子生徒が幽霊でも見たかのように凄く驚いた顔をしている。
「ひゃう!? どどっ、どうしました小原さん?」
「えっと……先生が来たから……」
見ると先生がカリキュラムを受ける子達の出欠確認をしていた。
「そうでしたか……すみません、私はあちらに居ますので」
そう言ってそそくさと、設置されてるベンチの方へ向かって行った。
「えっと……小原ちゃんで良いのかな? 優羽のお友達なのかな?」
「い、いえ!? 私なんて上凪ちゃんのおともだちなんて!? 憧れではありますけど……」
「そうなんだ……そういう子ってクラスに多いのかな?」
「はい、クラス替え前から上凪ちゃんはお姫様みたいでしたから。頭が良くてカッコ良くて、女の子たちは憧れていました!」
目を輝かせながら言う小原ちゃん、優羽って人気者なんだな……。
「そっか、教えてくれてありがとう。でも、もし良かったら優羽と仲良くしてくれると嬉しいかな。優羽は前の学校だと勉強ばかりやらされてたからさ」
「そうなんですね! 上凪ちゃん、だから頭が良いんですね! わかりました、もっと積極的にアタックしてみます!」
「そっか、ありがとう……っつ!?」
思わず、優羽達と同じ感じで頭を撫でる。その瞬間、鋭い視線が突き刺さり、背中に冷汗が伝った。
「? どうしました?」
思わず振り返った俺を見上げる小原ちゃん、振り返ると、優羽が鬼の形相でスマホを見ていた。
◇◆◇◆
「さて皆、今日は皆も知ってる、〝日本の英雄〟である上凪優希さんに来ていただきました~」
先生の言葉に拍手が巻き起こる、ここに居るのは50人程で5年生と6年生のみだ。
政府の決めたカリキュラムは基本的に小学5年生からのスタートで、小学校は基礎的な体力作りから反射神経を鍛えるゲームや簡易的なアスレチックを使った全体的な身体能力の向上だ。
これは主に俺やミュリがダンジョン庁や文部科学省、それから方厳さんや宮田総理を含めた内閣の方々と話して決めた内容で、次世代の子達がダンジョンに参加した際の生存率を上げようという事で決められた。
「さて……皆さん、紹介されました上凪優希です。今日は先生に頼まれて臨時講師として皆さんの訓練を見に来ました。わからない事や質問があったらどんどん聞いて下さい」
少し堅いかな……そう思いながら言うと、早速一人の男子が手を挙げる。
「はい、そこの君何かな?」
指名をすると立ち上がり一礼をする、凄く礼儀正しくない?
「上凪さんは、沢山の奥さんが居ますけど、どうしたらそれだけモテモテになれますか?」
「こら、柏木! 関係ない質問は!!」
先生が声を荒げる、子供にしては何というか……少し、答えて良いのか悩む質問だ。
(ただまぁ、答えると言ったしそれを目標にしたい子も居るだろうからな……)
「あー……先生、良いですよ、答えますので」
「へっ?」
「モテたいもちゃんとしたモチベーションに繋がりますし、ここぞという時に力を振り絞る為のトリガーになりますので」
まぁ、この歳なら面白半分だろうけどね……。
「そうだなぁ……俺は正直モテたくて戦ったわけじゃ無いし、皆を守った訳じゃ無いんだ。全部の戦いは〝奥さんの元に生きて帰る〟それを目標に生き延びたんだ。結果的に奥さんは増えたけどね」
そう言って笑うと、皆ぽかんとしている。少し難しかったかな?
「だから皆は何があっても生きて帰る、お父さんやお母さん、自分を愛してくれる人を悲しませない様に。それを忘れずに、頑張ればきっとモテモテになれるよ。難かしくなっちゃったけどこんな感じで良いのかな?」
質問者の少年に聞き返すとコクコクと頷き返して座る。
「あはは……気晴らしに今日は特別授業という事で、皆をダンジョンの中に招待しようか」
「「「「「えっ?」」」」」
「優羽、おいで!」
「「「「「ええっ?」」」」」
優羽を呼ぶ、すると一緒に澪ちゃんもついてきた。
「呼びましたか? お父さん」
「「「「「えええっ?」」」」」
「あぁ、ダンジョンに向かうから優羽も着いて来て、優羽に施してある防御魔法で皆を守って欲しいんだ、防御魔法の魔道具の数が足りないし」
「そうなんですね、わかりました。澪ちゃんはどうします?」
「うーん、多分優羽の近くが一番安全だから、一緒に行こうか」
「はい!わかりました!」
「か、上凪さん? 流石にそれは!?」
「あぁ、大丈夫です。護衛に凄い人連れてきますので」
「そ、それでも……」
まぁ、俺が親だったら、唐突にダンジョンに行ったとか行ったら反対するよな。
「大丈夫です、これから行くのは初級ダンジョンですし。メンバーはモンスターや護衛をしなれてる、王国近衛騎士団ですから」
休み時間にリーベルンシュタインの皆にお願いしてきたからほぼ問題無いだろう。
「そうなんですか?」
「えぇ、皆さんこの世界の中・上級探索者の実力がありますから。彼らの動きや戦闘方法を見てもらうのも勉強になりますから」
「それでしたら……」
許可が出たので、皆を一カ所に集める。
「じゃあ行くよ……『転移』!」
景色が変わりダンジョンの中に到達した。




