第6話:優羽についての評価
「優希~お昼ごはん行こ~」
昼休憩のチャイムが鳴り、少し前の席に居た耀がこちらにやってくる。
「ユウキ様、本日のお昼はどちらで食べるのですか?」
「えっと……今日は春華たちは友達と食べるって言ってたから学食かな?」
「そう、わかった。早く行こう~」
背中にユフィの重みがかかる、どうやらユフィは朝食を抜いて来たらしい。
「はいはい、急ぐからこれ食べててね」
鞄からお馴染みの台形のチョコレートを取りだして、ユフィの口へ放り込む。
「ん、少し元気出た」
「良かった、じゃあ急ごうか」
教室を出て学食へ向かう、その道中で蔵間先生に呼び止められた。
「おぉ上凪、今日も憎らしい程女を侍らせてるな……」
「そういう言い方やめて下さいよ……侍らせてるとか言うの」
「そうは言われてもな、噂になってるぞ。長期休暇を開けると生徒が増えて、それが上凪の女だと」
「なんですか、その不名誉な噂……」
否定はできないけどさ……。
「まぁ、俺の給料には関係無いから良いけどな。それよりも、第四小学校って知ってるか?」
第四って……優羽の行ってる学校だよな……何かあったのかな?
「知ってますけど……どうしたんですか?」
「あぁ、今小学校では希望者の探索者育成プログラムをやってるだろ?」
確か、この間の三者面談でそんなカリキュラムあるって聞いたな、優羽はやってないみたいだけど。
「やってますね」
「それで、特別講師として今日来て欲しいんだとよ」
「特別講師ですか?」
「あぁ、お前この間似たような事してたし余裕だろ」
「でも、高校生と小学生じゃ……」
「大丈夫だろ、小学生に剣術や戦闘術を教えろって訳じゃないんだから。少しお前の武勇伝を面白おかしく話してやればいいよ」
「それなら……って武勇伝って何ですか!?」
「武勇伝ですわね、我が国の戯曲にもなっておりますよ?」
「まぁ、武勇伝よねぇ……基にしてファンタジー小説書けるくらいだし」
「おなかへった……」
皆まで武勇伝と断定してくる……って、ユフィが空腹で倒れそうだ。
「わかりました、とりあえず放課後に向かいますね」
「あぁ、だが最終限受けてると、小学生の帰宅が遅くなりかねないからな5限で抜けていいぞ、6限の担当教員は俺だからな」
「わかりました、ありがとうございます。それじゃあ失礼します」
「おう、任せたぞ」
それから浮き始めたユフィを捕まえながら、急いで学食へ向かうのだった。
◇◆◇◆
「よっとと……到着っと……」
学校から急いで飛んで来たので屋上に着地する、そこから排水パイプと窓枠を伝いながら裏庭に降りる。
「さてと……職員室は……」
確か来客者用の昇降口から入って右手だよな。
靴を履き替えスリッパを履いて向かう、道中で幾人もの小学生とすれ違うが、皆丁寧に挨拶してくれる。
「失礼しまーす」
ノックして開けると、先生たちの視線がこちらを向く、まだ優羽のクラス担任の先生は戻ってきてない様だ。
「えっと……どういたしました? ここは小学校ですが……」
見た事無い若い先生が声をかけて来る、というか俺制服のままじゃん。
「あーっと本日呼ばれた〝上凪 優希〟です」
すると途端にざわつき始める。
「どうしたんです……あぁ上凪さん、いらっしゃい」
学年主任の先生が戻って来た、ひそひそ話が流れる職員室を後にグラウンドを目指す。
「すみません、早めに来てしまいました」
「いえいえ、こちらこそ新任の先生たちが申し訳ありません、もう少しかかるかと思っていたので。今、優羽さんを呼びに行った所なんです」
まぁ、あの人達は悪いひそひそ話じゃなかったし。ただ、カッコいいとか思ったよりもイケメンとかは俺の聞こえない所で言って欲しいなぁ……。
「そうなんですか? 優羽の事だし探索者には興味ないから、先に帰ってると思ったんですけどね……」
「優羽さんは責任感が強い子ですからね、自分がお父さんを呼べると言ってしまった手前残っていたんでしょう」
そうなのか、まぁワンクッションある方が参加する子達も緊張しなくて済みそうだよな。
「気にしないで良いのになぁ……優羽って妙に律儀なんですよね……」
「それは良い事だと思いますよ、お陰で同年代の子達より大人びて見えますし。中には優羽さんの事を目標にしている子も居るくらいですから」
「そうなんですか!?」
「えぇ、上凪さん達の教育の賜物ですね。所作も綺麗ですし、見ていてお嬢様というイメージが強いですからね。私も時々本の中の令嬢が出て来たと錯覚するくらいですから」
「あー、確かに……所作や立ち居振る舞いに関してはうちの家族凄いですからね……」
メアリーの身のこなしに、礼儀や所作はエアリス、巴ちゃん、リリアーナのお姫様&本物の令嬢仕込みだもんな……。最近は鈴香にモデルウォークや姿勢の作り方を習ってるみたいだし、諸々カンストしそうな講師陣だ。
「それに、普段のお父様を見ているせいか何かトラブルが起きた時も判断力や決断力の高さで解決策を見出すのが上手なんですよ」
「あはは……」
その後も学年主任の先生は優羽の話を続ける。というか俺達の知らぬ間に色々とクラスの問題をい解決してるのか……。
というかそれだけ細かい問題を解決してるのに嫌われてないのは凄いな……。俺の小学生の時なんてイニシアチブを取ってる人は嫌われてたけどなぁ……。
「あっ、お父さん」
グラウンドでカリキュラムを受ける子達を待っていたら、後ろから優羽の声がした。
作者です。
実は優羽、卒業式前に告白されまくって全員断ってます。
しかも断り方が「子供には興味ありません」と一刀両断です。
いつ優希に惚れるかは多分、本編完結後のお話になると思います。
一応本編で書きたいと思ってる部分は複数あるので後1年以上は続きそうです。
書きたい内容が出てきたらアフターストーリー的に書くくかもですが。




