第3話:将門さんが来た理由
なんかとんでもない大物の登場に驚いた俺達、何はともあれ落ち着いて話を聞く為に移動する。
「えっと……将門さんはどうして生首状態で漂ってたんですか?」
「それはな、強者を探しておったんじゃよ」
「強者?」
山長さんが首を傾げる。
「あぁ、武勇に秀でた……今の時代で言うと、チャンピオンとかベルト保持者とかで良いのかのう?」
なんでそう言うのは知ってるんだろう。
「それか力の強い【陰陽師】を探しておったんじゃ」
「陰陽師って……そんなの居るのですか?」
風間さん、すみませんここに居ます……。
「あぁ、昔みたいに妖術や式神を扱う者はおらんが、暦を見たり星を見たりと今での占い師のと似たような感じではあるがやっている者はおるよ」
「そうなんですね、呪術〇戦の様な人たちは居ないんですね……」
「いやいや、おるぞここに、妖術も式神も扱える奴が」
将門さんがそう言って俺を指差す。
まぁ、その指に知らない二人は俺の方を向く、耀と綴さんは苦笑いをしている。
「まぁ……そういう事です。陰陽術もいくつか覚えてきました……」
「凄い……」
「流石優希君……」
まぁ原理は魔法と変わらないからねぇ……。
「とまぁ、儂の祀られている近くに凄い力を持った者が降り立ったからのう。もしかしたら儂の力になってくれるかと思ってな」
「力に? という事は平将門さんは何か相談があったんですか?」
「あぁ、端的に言うと、儂の力の一部である首から下が娘である〝滝夜叉姫〟に取られてしまったんじゃよ」
(滝夜叉姫……って誰だろう。娘さんという事しかわからないな)
周りを見ると、わかった様な顔をしてるのは綴さんだけで、他の皆はわからないといった顔をしている。
「えっと……まさかわからんのか?」
「あーすみません、わかんないです……」
「そうか。簡単に説明すると滝夜叉姫は儂の三番目の娘でワシが死んでから妖術を習得して朝廷に仇討ちに向かったのじゃよ、残念ながら負けて逆に討たれてしまったがな」
「補足すると、江戸時代の浮世絵師によって作られた創作話のはずね、歌舞伎や歌川国芳によって浮世絵に描かれた事もあり、ぬらりひょんと並ぶ妖怪を操る者とも言われているわ」
「そうだったんですね、説明ありがとうございます」
綴さんと平将門さんにお礼をすると、平将門さんは何か考えていた様だ。
「ふむ、だからあの娘は妖怪を使役していたのか……」
「平将門さんの記憶じゃ違うんですか?」
そういえば、アマテラスさんが逸話や説話を取り込んでるとか言ってたし、創作の能力を当人が持っていてもおかしくはないのか。
「あぁ、儂が知っておるのは簡単な妖術、それこそ使役術なんかは使えず五行に属した理から現象を呼び出す感じじゃったな」
「五行というと、陰陽術ですかね?」
「いやいや、それとは違うな。陰陽師……高名なのだと安倍晴明や芦屋道満か? あ奴等は生きておった時代は後の時代だからなそんな完成されたものでは無いよ。言うなればそれの原形の様なものだ」
「そうだったんですね、それだと呪術や鬼道のが近いんですかね?」
「そうだな、そちらのが近しいな。お主は扱えるのか?」
「まぁ多分ですか似たような事は出来ると思います。鬼道はプロが一人居ますし、呪術はもしかしたら力強い味方を呼ぶことが出来そうですし」
「味方?」
「はい、俺に陰陽術を教えてくれた、凄く頼りになる味方ですよ」
降霊術が使える澪ちゃんが居て、鬼道のプロの酒吞が居る。これならば彼を呼び出す事も可能だろう。
「という事で、澪ちゃんの身体に負担が無ければ、とある所に行きたいのですが……良いでしょうか?」
零亜さんに向き直り、聞く。驚いていたが了承してくれた。
「それじゃあ……少し待っててね、向こうの予定を聞いてくるよ……『転移』」
二人の元へ飛んで行くのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「行くぞ優希、鬼國鏡界伏魔宮!」
山長さんと風間さんは耀に送ってもらい、俺と零亜さんと澪ちゃん(IN将門さん)と綴さんの皆で土御門邸に来た。
そして今、もう一人の味方を呼び出す為に酒吞に鬼道を発動してもらい蔵ごと包む。
「そうしたら、将門さんは一旦澪ちゃんの身体から出て貰えますか?」
「わかった、零亜殿頼む」
「はい……はぁ!!」
狐の窓で確認をする、将門さんは澪ちゃんの身体から出て浮かんでいる。
「それじゃあ、澪ちゃんお願いできる?」
「はい! まかせてくだしゃい!」
先程、将門さんを呼び出した降霊術である、こっくりさんを開始する。
「こっくりさんこっくりさん、居ましたらお返事を下さい!」
すると、蔵の中にとある人の魂が現れる。
『ほう、お主に陰陽術を教えたのはこの者か……どうりで……』
感心している将門さんを横に、集まった魂が澪ちゃんの中に入り込む。
「久しいな、優希殿、酒吞。無事で何よりだ」
「お久しぶりです、晴明さん」
どうやら、見事に思惑は成功した様だ。




