第2話:イタコとこっくりさん
場所を移した俺達は、澪ちゃんのお母さんである零亜さんの話を聞く、山長さんと風間さんは澪ちゃんとお話をしている。
「イタコって、あの恐山の?」
「はい、霊を降ろして交信するといったものです」
「本当にあるのね……」
「はい、ですが年々担い手も減り、事業自体も小さくなっているのです」
事業なんだ……そりゃそうか、タダで交霊とかする訳にはいかないしね。
「それで、零亜さん達はどこに住んでるんです?」
「あっ、はい一応青森の方に住んでおります」
「そうなんですか? イントネーションが綺麗なのでこちらの人かと思っちゃいました」
「津軽弁は話せますけどね。私達は出張イタコなので、お客様は全国に居ます。ですので頑張って修正しました」
「そうなんですね。えっとそれで出張って事はお仕事なんですか?」
「えーっと……」
気まずそうにする零亜さん、確かにいきなり見知らぬ学生が首突っ込んで来たら何とも言えないよな。
「あれ? 優希君、それに耀ちゃんじゃん、どうしたの?」
この聞き覚えのある声は……。
「「「綴(縫衣)さん?」」」
よく見知った顔がそこに居た。
◇◆◇◆
「なんというか、優希君ってトラブル体質なの?」
「そんなつもりは無いんですけどね……」
近くのコンビニで買って来た温かいお茶を飲みながら眺める。
「優希君、こっち閉め終わったよ~」
「こっちもおわったよ」
山長さんと風間さんが戻って来る、折角なので手伝ってもらっている。
「お疲れ様、二人もこれどうぞ」
「ありがとうございます、あったか~い」
「冷えて来たので助かります」
それから簡易的に組まれた舞台の上を見る、耀と澪ちゃんが二人で屈んでいる。
「イタコって初めて見ましたけど、まさかこっくりさんでやるんですね」
「私も初めて見たわね。でも、こっくりさん自体は元々簡易的な降霊術だからイタコの人がやると強いのが呼び出せるんじゃないのかしら?」
「そうなんですね……俺はこっくりさんなんてやった事無いですよ」
そう言うと、綴さんが遠い目をする。
「そうよね……今の若い子達はこっくりさんなんてやらないわよね……」
「あっ、私やった事ありますよ!」
「私も、ありますね。女子は一度やってると思いますよ、おまじないとか好きですし」
「うぅ……二人共ありがとう~」
まぁ俺は、耀以外にろくな友達居なかったしな……。
それから女性三人で盛り上がっているので、ぼーっと耀の方を眺めていると奇妙な気配がした。
「なんか変な感じがしたな……よいしょっと」
狐の窓を使い、澪ちゃんを見る……なんかいるんだけど……。
「あれって!」
空間収納から刀を取り出し、身体強化をするそのまま一気に近づくと二人の間に割って入る。
「ちょっ優希!?」
「きゃあ!?」
『おわぁ!? 何だ!?』
刀を抜いて構える、大江山の後練習して狐の窓を通した相手は一定時間見れるようになった為そのままで戦闘が出来る様になった。
「二人共、下がって」
「ちょちょ!? 優希どうかしたの?」
割り込んで、刀を構えてる俺に驚きつつも武器を出して澪ちゃんを抱き寄せる耀。
「あぁ、噂の生首が目の前にいる」
「えぇ!? 私は何も見えないけど……」
『お主、儂がえるのか?』
「見えるし、声も聞こえているよ」
『そうか、やっと見つけた!』
喜びを表す生首、見つけたとはどういう事だろう。
『すまない、一度そこな娘の身体を借りるぞ』
「あっ、待て!」
するりと横を抜けた生首が澪ちゃんの身体に入る。
「澪ちゃん!?」
「大丈夫です上凪さん、娘は特異体質で霊を身体に降ろす事が出来るのです」
「でも、それだと悪い霊とかに乗っ取られてまずいんじゃ?」
「大丈夫です、あの巫女服は清めの糸で織られてますので。悪しき魂などは跳ね返せるものなのです、それに何かあれば私はすぐに霊を娘の身体から引き剥がせますので」
そう言われてしまうと引き下がるしかない、警戒をしつつ刀を鞘へ収める。
「あ゛……あ゛ー声を出すのは久々だな……。娘の母よ礼を言う」
「へっ……澪ちゃん?」
「あぁ、すまない女子よ、そう寄られると悶々としてしまう。儂はそれでも良いがな……」
そう言われて離れる耀、明らかに澪ちゃんの顔がだらしない顔になっている。
コイツ……今ここで、叩き切ってやろうか?
「お、おぉ……すまんすまん。悪かったから殺気を静めてくれ……」
「チッ……それで、澪ちゃんの身体を乗っ取ってるお前は誰なんだ?」
そう聞くと、少し申し訳無さそうな顔をして名乗り出した。
「えっとなぁ、信じて貰えないかもしれないが……。お主たちも知っておろう、平将門という者を、儂が将門だ」
そう言うと空気が固まった。
「「「「「えっ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」
皆の驚きが静まった境内に木霊した。




