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第72話:西園寺家へ

話しを終えたら既に深夜だったので、結弦さんの好意に甘え仮眠を取らせてもらい翌朝、再び飛んで西園寺家に戻る。


「ささっ、上凪様こちらへ……」


洋風のお屋敷の窓が開き姫崎さんに手招きされる、靴を脱いで中に入りベルベットの絨毯をこっそりと進む。


「こちらです、見つかると厄介なので中へ……」


「あの、ここって心愛の部屋じゃ?」


ネームプレートがかかってるので一目瞭然である。


「残念ながら応接室や客間は、ご家族にバレる危険性がありますので……」


「いや、俺も奥さん達に女性の部屋に侵入したら怒られるんですけど?」


「厄介事を避けるには諦めて下さい、さぁ」


そのタイミングで運悪く、廊下の向こうに人影が見えた。


「仕方ない……心愛すまんっ」


謝りながら中に入ると、豪勢なお屋敷に見合わないごく普通の部屋だった。


「お嬢様……心愛お嬢様……」


ささっと移動した姫崎さんがベッドの中に入っている心愛を揺する、というか起きて無いの? せめて起こしてからじゃないの!?


「んんっ……姫崎さん? 確か優希さんの元に行ったんじゃ……」


「はい、朝になりましたので戻ってまいりました、出掛けますのでお仕度を……」


「わかりましたわ、うぅ……寒いですわね……」


起き上がる心愛、居場所が無くて扉の前に立っている俺、ばっちし目が合う。


「えっと……優希さん?」


「はい、優希です」


「どうしてここに?」


「貴方の隣にいる方に連れられて」


「へっ?」


ギギギと音がしそうな感じで心愛の首が動く。


「姫崎さん、どうしてですの?」


「そうした方が面白いかと思いまして」


「「おい!!」」


つい二人共思わず、大きな声を出してしまう、二人共良く通る声なので途端に廊下がざわつき始める。


「不味いですね、ご当主様はお嬢様の男女関係にとても厳しいのです」


「じゃあ何で入れたんだよ!?」


屋敷の前で待たせるとかで良いじゃん!!


「優希さん、仕方ないですわこちらに!」


視線を外した一瞬で俺の前に接近した心愛が、俺を自分のベッドに叩き込む。


「ちょ!? えっぷっ……」


「黙ってて下さい(ボソボソ」


「わお、お嬢様大胆」


ノックがして誰か入って来る、声からすると男性の様だ。


「心愛、どうしたのだ朝から騒いで。もう様子は大丈夫なのか?」


「すみませんお父様……怖い夢を見てしまったんです……」


二人の話し声が聞こえる。


(えっとこの視界に広がる不味い状況はどうしよう……)


足で抱えられてベッドの中に圧しこまれている、というかバレないの?


「そうか……残念だけど今日はパパ、お仕事なのだよ」


布団の中は呼吸がし辛く、甘い匂いでクラクラして来る。


「そうですか……頑張って下さい」


もぞもぞ動き、頭の位置をずらそうとする……何か柔らかいものに触れてるけどどうしよう……。


「ひゃう!?」


「どうした?」


「い、いえ……お手洗いに行きたいのですが……」


頭蓋骨が太腿で締め付けられる、身体強化で力が入っているのかミシミシ鳴り始めてる。


「そ、そうか……失礼した。それでは姫崎君、娘を頼んだぞ」


「はい、ご当主様」


扉の音がして布団が剝がれる、朝の光と白い肌が飛び込んで来る。


「上凪さんも相当テクニシャンですね……」


「姫崎さん、私怒っても良いでしょうか?」


「怖いですね、ねぇ上凪さん」


「どうでもいいので助けて下さい……」


起してもらったのは良いのだが、心愛は何か不満の様だ。


「優希さん……何か言う事は?」


「すみませんでした、それと咄嗟の機転、助かりました」


「…………はぁー、まぁ良いですわ……それで優希さんはどうしてここへ?」


「あぁ、もしかしたらなんだけど結菜の式神ってここに持って帰って無いか?」


「えぇ、そのまま処分されそうだったので、持ち帰っておりますわ……」


部屋の隅に置いてある木箱に視線を向ける、その中に入っているのだろう。


「良かった、ありがとう心愛。それじゃあ一旦、土御門家へ戻るね」


信乃の入った箱を空間収納アイテムボックスにしまい窓を開ける。


「待って下さい、すぐに結菜の所へ行くのでしょう? なら私も連れて行って下さい、一発くらい私の親友を攫ったクソ野郎を殴らないと気が済みませんわ」


真剣な顔で見つめて来る、まぁ皆来るし、大丈夫か。


「おっけー、じゃあこれ置いてくから、準備出来たら連絡して」


「わかりましたわ。それで、これは一体なんですの?」


「えっと……簡単に言うと俺が転移する場所を明確にするために置く目印みたいなものだね」


「へぇ……便利ですのね」


「あはは……そこまで個数無いから無くすと困るんだけどね……それじゃあ行ってくる」


窓枠に腰かけて靴を履く、そのまま飛び降りながら風魔法で飛び上がった。



◇◆◇◆

「さて……『——回復ヒール』、それから信乃、戻っておいで『——リザレクション』」


魔力を多く流し込んで傷を治療する、そして蘇生をするとぱちりと目を覚ます。


「うっうぅ……アタシ……どうして……?」


「……え?」


「あ、あれ!? アタシなんで!?」


喋り出しちゃったよ……これって俺のせいだよな?


「えっと……信乃?」


「優希様、これって優希様のお陰ですよね?」


「あ、あぁ……俺のせいだな多分……」


「ありがとうございます! まさか話せるようになるとは思いましませんでした!!」


「そ、そうか……良かったのか?」


「はい! とっても嬉しいです!!」


ぴょんぴょんと跳ねながら喜ぶ信乃。


「まぁ信乃が良いなら……あ、そうそう! 信乃は結菜がどこにいるかわかる?」


そう聞くと信乃がうんうんと唸り出す。


「優希様の魔力が強すぎて……わかり辛いのですが……一度上空に飛んでも良いですか?」


「あぁ、頼んだ」


信乃は頷くと高く跳んで行きぐるぐると回り出す。そしてしばらくすると降りてきた。


「わかりました! 場所は伊吹山です!」


「そうか……ありがとう」


「結菜様を助けに行かれるのですよね?」


「あぁ、信乃には道案内を頼むよ」


「はい!」


――♪♬♩♬~


スマホが鳴る画面を見ると心愛の準備が終わったらしい。


「じゃあ信乃、肩に乗ってくれ」


「仰せのままに!」


肩に乗って来たのを確認して転移をする、直前に結菜のご両親が不安げに見ていたのでガッツポーズしておくのだった。

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