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第51話:着物選び③

それからは春華や鈴香の知識、里菜のセンスに助けられつつ皆の着物を決める事が出来た。


「いやぁーユキちゃんとセレーネさんは凶悪だった……」


「そうですね、あのお二人は尻尾穴を考えないといけませんからね……」


ユキとセレーネの着物を選び終えた俺達は一息をつく。


「助かったよ二人共、俺だけじゃ失念してたよ」


意気揚々選び終えてから気が付いたのだ尻尾出す所無いじゃんと……。


「でも、さすが春華ちゃんですね。お二人の尻尾穴をあんなに綺麗に縫う事が出来るなんて」


セレーネの方は元々人化しているからいらないと言っていたのだが、この世界にまだ慣れてない分、凄く驚いた事だったり怖かった事があると。唐突に半分ほど人化が解けたりする事もあるのでやはり出す部分は必要という事になった。


「格好良かったよねぇ、空間収納アイテムボックスから裁縫道具を取りだして、こう……『シュパパ』っと縫っちゃうんだもん」


着物自体にスリットを作り二人の尻尾サイズに合わせ、まるでそこにスリットがあるように思えない位の仕上がりだ、それに襦袢も即興で上下別れにして、下はのスカート風に縫い合わせて着易い様にしていた。


「お待たせしました、優希お兄さん」


春華の声に振り替えると着物に着替えた二人が居た。


「ど、どうですかユウキさん……」


水色に散らされた桜の花びら印象的な着物に丈の短い薄羽織を着ている。


「うん、可愛いね。やっぱりセレーネの虹色に反射する髪には空の色が似合ってるね」


「ありがとうございます、でもいつものハカマと違って歩きづらいですね……」


歩くのに少し悪戦苦闘をしている様だ、短い尻尾がゆらゆらとバランスを取るように揺れている。


「ユウキ様! 私はどうですか!?」


ユキもくるりとその場で回転する、皆より少し薄めの生地を使った純白の着物で模様に雪の刺繍があしらわれている。こちらは桜色の集めの羽織を着ている。


「うん、ユキに凄く似合ってるな。歩き辛くは無いか?」


「はい、大丈夫です!」


ゆらゆらと動く大きな尻尾で、器用にバランスを取りながらくるくると回る、ふわっと広がる髪に桜の簪がまた映えている。


「ありがとう春華、助かったよ」


楽しそうなユキを見ながら話している鈴香や里菜を視界に捕らえつつ春華に近づく。


「いえいえ、これくらいなら……それと、どうしても尻尾穴が少し浮いてしまうので悩んでいましたら、牡丹様から羽織を進められたんです」


「そうだったのか、違和感無い様に思えたんだけどね……」


「やっぱり着物でも人間の身体に合わせると少し浮く部分がありますので、そこが違和感になってしまったんです。ですが丈の短い短い羽織のおかげで尻尾穴は隠れますし、普段は尻尾が少し持ち上げるだけなのであまり邪魔にもならずに済んだんです」


「言われると、確かに羽織のお陰で全然違和感ないね」


そして皆が3階に備えられたスタジオに移っていく、ただその中で春華だけが残っている。


「えっと……皆の所に行かないの?」


「はい、私の分は最後にしてもらいました」


「じゃあ何で?」


「だって優希おにーさん、着物選んで無いですよね? それにお疲れなおにーさんは適当な物を選びそうですから」


にっこりと笑う春華、確かに皆のを選びまくった上、自分のを選ぶとなると適当になりそうだ……。


「という訳で優希おにーさんのを選ばせてもらう事にしました」


胸を張り息巻く春華、気合を入れる程の事じゃないと思うんだけどな……。


「とは言っても、男性用の着物って種類も少ないし、特に色も多い訳じゃないよね?」


思い浮かべるのは鷲司さんや辰之助さんの着物姿だ、あの二人は良く着物を着ているが大体同じに見える。


「そうなんですけど、でも実は男性用の着物はシンプルな分生地や染め方によって仕上がりが変わるんです。お父さんもこだわりがあるみたいですし、私も優希おにーさんの好みを知りたいですし」


そう言って手を取り男性用着物のコーナーへ向かう。


「まずは生地と染め方……ここのはどれも一級品ですから恐らく着心地はとっても良いんですが、若干種類によって着心地が変わりますので」


春華が取りだす二つの着物、確かに色合いもほぼ同じだが片方はつるっとしていて、もう片方がサラッとしている。


「ほんとだ、手触りが全然違う……」


「直接肌に触れる事が多い訳ではありませんが、その感触一つが気になったりしてしまうので、結構重要なんですよ」


饒舌に語る春華、見ていてその姿がとても愛らしい。


「春華ってこういった『和』が好きだよね」


刀だったり着物だったりと料理以外にもときおり饒舌になる。


「はい。着物や料理はお母さんから、刀はお父さんからの受け売りですね」


「でも冬華はそうでも無いよね?」


冬華はどっちかというと、洋服やコスメみたいなもっと女の子っぽいものが好きに想える。


「うーん、実はそうでも無いんです冬華はああ見えて、お母さんの着物のこだわりから服好きになって、お父さんの様々な戦闘術の中から目の良さで弓を選びましたから、ああ見えてリーベルンシュタインから帰って来た後に乗馬クラブに行って流鏑馬をやってるんですよ」


「そうなの? あーでも、確かにたまに休日になると一人で弓の練習と言って出かけてたな……」


「はい、ちなみにお父さんの計らいで、今年の小田原であった梅祭りの流鏑馬に出てましたよ」


「そうなの? 見たかったなぁ……」


「あはは……その時優希おにーさんは、フィルレイシア王国で頑張ってた時期ですから」


となると二月なのか……来年開催するならぜひ休みを取らないとな……。


「後で、動画送りますね。凄くカッコ良かったですよ」


「そうなのか、楽しみだな……」


「はい、それではその前に今日の着物を選ばないとですね」


「そうだな、春華頼んだぞ」


そして春華とたっぷり時間をかけて着物を選んだのだった。


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