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第42話:終演

異世界に跳んだ家族の皆さん、それを迎えたのはのんびりお茶をしている西園寺さんと賀茂さんだ。


「「心愛!」」


「「依与里」」


「あら、お父様いらっしゃいませ」


「あっ、お父さんお母さん……」


二人は両親に飛び付かれ、おしくらまんじゅう状態になる。


「いらっしゃいませユウキ様」


迎えてくれたメイド長が近寄って来る。


「うん、お邪魔してるね」


「えっと……細川君は?」


「ホソカワ様はティアニール様に「あんなに不甲斐なく倒されるなど、鍛え直しだ!」と連れて行かれました」


一瞬ティアさんに瓜二つな声真似を上手にするメイド長にびっくりした。


(そして細川君……ご愁傷様……)


後で差し入れでも持って行ってあげるか……。


「と、いう事で細川君は無事ですが、師匠に連れて行かれました……」


「そ、そうか……」


「無事なら良いのですが……」


ご両親も若干混乱してるのか生きているとわかると、ほっとしているようだ。


「多分2~3日で帰って来れると思いますので、こっちで過ごして下さい。メイド長お願いします」


「はい、国賓待遇でおもてなしをさせていただきます」


「えっ?」


「国賓?」


「ささっ、どうぞこちらへ」


メイド長に促され、細川君の両親は連れて行かれた。


「そ、それで娘は? 結菜は!?」


「どこなの!? 早く教えて!!」


瞳を不安に揺らし、俺に詰め寄る二人。


「優希さん、そして結菜さんのお父様、お母様よろしいでしょうか?」


割って来たのは両親二人を引き摺って悠然と歩いて来る西園寺さんだ。


「君は結菜と同じクラスの……」


「クラスメイトでありパーティメンバーの西園寺 心愛ですわ。この度はお話が合って割り込ませていただいてますのよ」


西園寺さんのご両親に回復魔法をかけつつ立ち上がらせておく。


「それで、そのクラスメイトがどうしたんだい?」


「この度の茶番劇、発案者は結菜さんです。そして彼女は今でも死体のままですわ」


「んなぁ!? それじゃあ土御門家は……」


「そんな……」


膝から崩れ落ちる二人、それを見据えて腕を組む西園寺さん。


「どうして結菜さんが、この様な事を発案したと思いますか?」


「「………………」」


黙りこくる二人、それに対して西園寺さんが言葉を続ける。


「結菜さん、お二人が【土御門家】しか見てなく、自分を見てくれない事に嘆いておりました。進路から結婚相手まで、自分の意志など無い事に」


「で、でもそれが旧華族としての生き残る為……」


「それが悪いとは言いませんわ、ですが貴方がたは結菜さんを自身の繁栄の道具にしか見ていないでしょう?」


「そ、それは……」


「だからこうして、結菜さんは死を選んだのです」


そう言われ黙りこくる土御門夫妻、そこに西園寺さんが一枚の紙を差し出す。


「約束して下さい、結菜さんを華族の務めから外すと。好きな様に生きる事を約束すると」


渡された紙を見て、震える手でペンを手にとる。


そして葛藤の末にサインをする。


「と言う訳で、優希さん頼みますわ」


「あぁ、任せて」


俺は夫妻と供に、元の世界に戻るのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

 ◇六条家の息子side◇


「どうしてだ! どうしてこんな仕打ちを俺が!!」


暗い部屋の中、俺は壁を掻き毟り扉を叩く。


「どこで間違えた……どこで……」


「元々話があったで《《あろう》》紡家との婚約を取り止めにされて逆上した所か?」


「巴が他の男と幸せに歩いているのを見て嫉妬に駆られた所か?」


「それとも、あの庶民を陥れようとしたところか?」


「わからない……」


誰も僕のつぶやきに返答は無い……。


「へぇ……わかってるじゃん」


ぽっと灯りがともる、すると目の前には僕が陥れようとした庶民が居た。


「き、貴様ぁ!!」


拳を振り上げるが前には進まない……いや、あの惨劇を見てしまったら進めない。


「少しさ六条家が、裏で何をやってたか調べさせてもらったよ、いやぁ酷いねぇ……高利貸しで金に困った探索者をダンジョンに送り込んでたなんて……だから東日本での死者数が多いんだね」


「知らない! 僕はそんなの知らない!!」


「まぁ、後は警察の一部と共謀して薬の横流しにかなりの脱税。海外の会社もペーパーカンパニーでの資金洗浄マネーロンダリングと……階級として低い六条家が十条連合でデカい顔をしてたのはこれが原因だったのか……」


庶民がパラパラと紙を捲る、そこに描かれている事のは半分ほど知っているが、全ての悪事が本当ならば僕の地位など風前の灯火だろう。


「ま、待て! 僕は知らないし、関わってない! 何も知らないんだ!!」


「嘘だな、お前は知ってるだろ」


鋭い目が僕を射抜く、居心地の悪さと共に心臓が慌て始める。


「まぁ良い、お前を裁きに来た訳じゃないからな」


「じゃ、じゃあ何のために!?」


瞬間、総毛立つ、得体のしれない恐怖が俺を地面に縫い付ける。


「警告だ、もし次に俺の家族や領分を侵す事があればその時は、命を持って償わせるからな……」


「は……はひぃ……!?」


「それじゃあ、もう会う事は無いだろう……」


そう言って目の前の男は闇に消えた。


――コンコン。


「ひぃぃぃぃぃ!?」


「警察だ、六条 瑛太えいた君に逮捕状が出て――」


「だずげでくだざい!! なんでもはなじまずから!!」


先程の恐怖から逃れるなら、警察に居るのが一番だ!警察ならみすみす犯罪者を死なせる筈が無い!!


這いつくばって警官の足に縋りつく、今のこの一瞬もここに居たくない!


「うわぁぁぁぁぁ!!」


僕は、警察に保護された……。


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