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第24話:式神使いの暗殺者・前編

それから似たような内容の八条家の話が終わり、五条家と七条家は飛ばされる。


そして四条家の事を話そうとしたら部屋がノックされ女中さんが入って来た。


「ご当主様、【四条家】の方がお見えです」


「こら、話早なりそうやな」


「話が早く? どういうことです?」


「上凪殿、こちらに着替えてくれるか?」


部屋の棚から出されたのは袴と顔隠しだ。


「これは?」


「ワシが公の場に出る際のお付きの格好じゃよ。お主に警護を頼みたい、袴と雑面ぞうめんは付けたことあるか?」


「袴はありますが、雑面は無いですね」


「わかった、普通に額の所から前に布を垂らして、穴空いとるじゃろ? そこから覗くのじゃ」


確かに穴が空いてる、でもどうして警護を?


「そら、直接相対したらわかる。ワシも着替えるさかい少し【四条】には待ってもらいなはれ」


「かしこまりました、鳳の間に通しておきます」


「あぁ、頼んだ」


そう言うと女中さんは下がって行った。


「ほな行くで、上凪殿」


「わかりました。巴ちゃん、何かあったらあの魔道具で」


「はい、わかりました」


防犯ブザー型の魔道具を掲げる巴ちゃん、あれがあれば一定時間の防御魔法と俺に通知が来る。


「何かあったら二人も守ってくれ」


「わかりました、任せて下さい、優希さんもお気をつけて」


「あぁ、行ってくる」


微笑む巴ちゃんを後押しされ部屋を出た。



◇◆◇◆

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」


「片方は出るで、心しとけ」


鳳の間に続く廊下を歩きながら話をする。先程の着替えの際には【四条家】の事を簡単に聞いたが、式神使いで諜報を主としているという事しかわからなかった。


「そういえば、【四条家】の人はどんな人なんです?」


「そうやな、恐らく当主かその娘やな。あの家は昔から女性当主になるんやで」


「そうなんですね」


「まぁ、女狐みたいな奴故安易に気ぃ許しなや?」


古狸みたいな貴方が言いますか……。


「さて、もう着くさかいな。なんかあったら助けなはれ」


「はぁ……仕方ない冬華の為にお仕事しますか」


それからマンション内とは思えない豪華な扉を開け中に入る。


中に入ると、甘いお香の匂いが鼻を突く。目を凝らすと紙の煙管を吸って煙を吐いている妙齢の女性が居た。


「すまんへんな、おそなったわ。それよりも当主自らとは、どないしたんや?」


「構いんせんわぁ~。それよりも、お付きが付いて来るなんて珍しゅうござりんすなぁ~」


ねっとりとした視線を向けて来る四条家の人、目の奥に鋭いものが見え値踏みされているみたいだ。


「ははは! 最近入った若い衆でな、今度の御前にお付きとして連れて行こう思たんや」


「ほう、それはそれは……とても優秀そうな人なのに残念だわぁ。それより、三条家が御前のいさかいから降伏するとは非常に珍しゅうて、びっくりしたわぁ」


「うむ、それがのう、此度の相手半端ない奴でな。まんまと呪詛返しされて、戦えへんのやわぁ」


「それはそれは、呪詛返しをされたらお子さん達が大変なのでは?」


不思議そうな顔をする四条さん


「それがな、ここだけの話なのだが。我々が相対する上凪優希という奴が訪ねてきてのぉ。治療させろというので案内したら、不思議な神通力で呪詛を快癒させてしまったんじゃ」


「へぇ、それでご当主様はそんなに気分が良いんだねぇ」


「そうじゃな、救えんと思っておった子達が救えるのは幸運じゃった」


「そうかそうか、それは重畳やねぇ。それで、聞きたいのだけどなぁ、本当に手を引くのかい?」


四条さんの目がスッと細められ三条さんを見る。


「そうじゃな、六条の倅の癇癪に付き合うのも割に合わんし。それよりあ奴には敵わな来る。正面からも、絡め手もな」


「そうかえ、じゃあ。消されても文句は言えんと?」


「それは、三条への宣戦布告とみなすぞ?」


怒気を孕んだ声を出す三条さん、先程まで飄々としていた人とは思えない。


「おぉ怖い怖い、そんなんで呪われたら、たまったもんじゃありんせんわぁ……ふっ!」


「んなぁ!?」


一息に吹き出された煙と部屋に充満していた煙が無数の蛇になり三条さんへ襲い来る。


「心配せんでほしいわぁ、この毒蛇は選りすぐり。ひと噛みであの世迄すぐでありんすわ」


笑いながらちろりと出す舌は二つに割れていて、まるで蛇の様である。


「はぁ!」


魔力を込めた震脚をする、すると一様に蛇は煙となって霧散する。


「はぇ……?」


紙の煙管を落としポカンとする四条さん、今のが式神だったのかな?


「甘いのぅ、ワシがなんも対策せずにここに来る事はあらへんやろうて」


「い、今のは?」


「上凪殿、面を取ってええで」


三条さんに言われ、雑面を取る。


「彼が上凪殿じゃよ、お主想像してるより数百倍は強いで」


ニヤニヤしながら言う三条さん、してやったりといった顔をしている。


「そ、そんな……我々を裏切るのか?」


口をぱくぱくさせながら、辛うじて絞り出した声で言う。


「そないな訳なかろう、ただ単純に六条の倅の癇癪に付き合うてられへんちゅう訳じゃ」


「くそっ! 犬神!」


口の端を噛み切った四条さんが小さな茅の輪取りだし血を塗ると、輪の中から狼が現れる。


「こいつらを食い殺せ!」


余裕のなくなった顔で四条さんが叫んだ。



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