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第22話:呪詛師・三条家②

「ここじゃ、入り給え」


マンションの最上階、異様な空気を纏ったその一室に足を踏み入れる。部屋の中には呻き声が響き15人程の男女が横たわっている、その年齢もお年寄りから小学生まで様々だ。


「うわぁ……」


入った瞬間感じるこの気持ち悪さ、これが〝呪い〟の空気なのだろう。


「うっ……空気が重苦しくて、気持ち悪いですね……」


「そうだね、でも大丈夫?」


口に手を当て、少し青い顔をしながら付いて来た巴ちゃんを気遣う。


「大丈夫です、優希さんの傍だと楽になりますから」


そう言ってくっついてくる、すると途端に顔色も良くなってくる。


「とりあえず、解呪しちゃおうか……『祓へ給ひ、清め給へ、この悪しき呪詛を打ち消し、癒しの力を持って、この者を助け給え! ——破呪転生はじゅてんしょう!』」


それっぽい呪文を唱えつつ『解呪』を発動する、それに合わせ回復魔法で癒していく。


「おおぉぉぉぉぉ!!」


驚きながら感嘆の声を上げる三条さん、それっぽい呪文は効果覿面みたいだ。


気持ち悪い空気は打ち払われ、倒れている人達の苦悶の表情も和らぐ。


「とりあえず、これで大丈夫かな?」


『鑑定』を使い一人一人の容態を見る、見た限り何も問題は無さそうだ。


「それにしても、この人数で呪詛をかけてたんですね……」


「そうじゃ、おおよそ2~3人で一つの術式を用いて掛けるさかいな、今回はえらい強い者であるし、それ踏まえぎょうさんの術でお主に不幸を与え棄権させるつもりやった」


「そうやって、長く勝ちも取って来たんですね……というか、不幸の内容を聞いて良いですか?」


問いかけると、一瞬躊躇した顔を見せるが、諦めた様に語り出す。


「そうやな、道を歩く時に躓いてようこけるような事から体調不良、長引けば長引く程小さな不幸は幾重にも重なり、最悪は死に至る様な呪いでもある」


「おいおい、そんな呪いをぶつけて来たのかよ……」


「無論、棄権したら即座に呪いは打ち切るつもりやった」


「それが想像を超えて、ひどくなって返ったと……」


「根本的に返される事はほぼあらへん、それ故に我々も調子に乗っとった」


「それで蓋を開けたらこの有様ですか……」


「うぐっ……面目も無い……」


そう言って口を噤む三条さん、でもどうしてこんな事に命を張らせるのだろう。


「とりあえず、そちらが負けた際の約束である『治療をさせて貰う』という目的は達成しました。ここからはご当主の判断で良いですが、幾つか質問に応えて下さい」


「何じゃ? 何を聞きたいんじゃ」


「疑問なんですが、十条通協商連合というのは重要だと思うんですけど、どうしてこんなリスクのある事に命を懸けてるんですか?」


その質問に少し目をつぶってから目を開く。


「そら十条内での序列が関係してるんじゃよ」


「序列ですか……まさか三条さんは序列が低いんですか?」


そう聞くと、三条さんは笑いだす。


「いやいや、序列は上から2つ目やわぁ」


「ではどうして? イメージなのですが命を懸けている場合は序列の低い所が受け持つと思うのですが」


そう聞くと拍子抜けといった様な顔をする。


「我々はこの序列におるさかいこそ、重い責務を負わなあかんのやわぁ……」


「それは、ノブレスオブリージュという奴ですか?」


「そないな高貴なモノとちがうで、ただ私達の力弱まったらぎょうさんの傘下におる者たちが割を食うだけ。企業や商店街の頭取としてもな」


「それじゃあ今回の敗北宣言は……」


「そうじゃのう、下の序列からは突き上げを喰らうやろうし、序列を落とされるかもしれへんなぁ……」


何か言いたそうに俺を見る。


「そうは言われても、俺も譲歩できない範囲の事ですから……」


勝ちを譲る訳にもいかないし、何より喧嘩売って来た相手をそのままとはしたくないしな。


「いやいや、上凪殿とは、取引をしたい思いまして」


「取引ですか……内容によりますが、先にお話から聞いても?」


「そうどすなぁ……うち特に親交のある五条と七条を御前試合から退かせる、ほなどうでっしゃろか?」


にっこりと笑う三条さん。


「うーん……正直、五条家と七条家はどのくらいの強さですか?」


「そうどすなぁ、七条家は序列低いものの、武芸百般言われる程の武芸の達人。日本でも有数の実力者どす。五条家は特殊な神通力の天眼を所有しとってこちらがどないな攻撃をしようと全て回避されてまうんどす」


「なんだ、それなら大丈夫ですかね。武芸も人間の反射速度も限界はあるので」


もっと、空間ごと捩じ切るとか式神で何か出すとかかと思ったけど、それ位ならどうにかできそうだし……。


「そこまでどすか……こわい人やわぁ」


「うーん、それより。三条家さんと仲良くしたいかなぁ……」


「何どすか? 気に入った娘でもいてはったか?」


寝息を立てている少女達を指差す。


「そうじゃなくて、俺の奥さんの中でSANJOの服が好きな子が居てね。新作の優先販売とか、仕立てとかしてもらえないかなぁって」


「ほう、そないなんでええんか?」


「もっと言うと、業務提携をしたいですね」


今まで隣でちょこんと座っていた巴ちゃんがタブレットを差し出す。


「成程、業務提携か……。ここではなんや、別室を用意しよう。それと今日は止まっていったらええのに花山院も含め部屋を用意する」


三条さんはスマホを取りだしてどこかにコールする、あっという間に宿を取ったらしく通話を終了する。


「上凪殿、そこな娘を二人、起してもらう事は出来ひんやろうか?」


「了解です、えっと彼女は?」


「今の我が社のメインデザイナーとアパレル会社の社長よ」


「わかりました、じゃあ……はぁっ!」


魔力で気付けをして起こすと、二人共ポカンとした表情をしていた。



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