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第19話:細川君③

ひたひたになるまで霊泉水を入れるとまた隣に腰を下ろす。


「そういえば、身体強化を本能で拒否してるってティアさんは言ってたけど、今後は使えそう?」


「はい、完全にボコボコにされて吹っ切れました。というより本能が使わないと死ぬと思ったみたいで、最後の方は出てたっぽいんですよね。脱力した状態で受け止める事が出来てたので」


「そっか、鍛冶場の馬鹿力って奴かな? 何にしても使える様になって良かった」


「はい、ティアニールさんには感謝しないとですね。世の中には絶対的な強者から、理不尽に命を狙われる事があって、それを打開するにはプライドなんて捨てる必要があるって知れましたから」


翼をはばたく音が聞こえ顔を上げると丁度ティアさんが帰って来た様だ、どでかい獣を連れて……。


「狸寝入りは終えたかの? どうじゃ気分は」


「最悪です、何もかも曝け出された気分です……」


「妾にそのような口答えが出来るとはなぁ。まぁ良い、ユウキよこやつは捌けるか?」


猪だが熊だかわからない生き物を指差し言う、それを食うのか……。


「ティアさんなら一飲みでしょ?」


「馬鹿言え、妾ではないこ奴じゃよ。傷は霊泉で治れど、力をつけるには食は捨て置けぬ、この獣は霊泉の水を飲んでおるからの、食すには丁度良い」


とは言っても、捌けるかなぁ……。まぁ大きく解体して内臓は焼けばいいか。


「わかりました、とりあえず血抜きして適当に解体しますね。頭とか食べない部分はどうします?」


「ふむ、それは配下の竜にでも食わせるわ」


「了解です、じゃあ……『——躁血魔法』」



◇◆◇◆

血抜きを終え解体した後は、ティアさんの計らいで食事にしようとの事で土御門さんと劉英さんも呼んで料理の時間となった。


「優希さん、凄く手際が良いですね……」


「そうじゃのぉ……いつもハルカにやらせてるだけかと思いきや……」


風魔法で野菜の皮を剥き、手元の包丁で乱切りにして、それを流れ作業で鍋に入れていく。


「覚えました、耀の手伝いで軽くは出来てたましたが、春華と一緒に料理する間に簡単な料理ならって事で……」


ちなみに今作っているのはポーク?ベアー?シチューである少し身の硬い部分のお肉を食べれるようにする為だ、後の柔らかい場所は食べやすいようにハンバーグである。


「よし、終了。土御門さん、捏ねるのと形作るのお願いしても大丈夫?」


「はい! お肉をパンパンするんですよね!」


そうなんだけど、言い方が……。


「パンパンというより空気抜きだから、何回かやってね」


「わかりました!」


ハンバーグは任せて霊泉の水を入れて圧力鍋に蓋をする。


「劉英さん、お願いします」


「まったく……世話が焼けるのぅ……」


先程作った竈に火魔法で薪を燃やす、火が出た所で薪をくべて火を安定させる。


「オッケーです、ありがとうございますね」


「良い良い、それより美味いもんを食べさせてほしいですわぁ」


そう言って土御門さんの方へ戻って行った。


「のうユウキよ」


「っ!? びっくりしたぁ……。どうしたんですか?」


いつの間にか背後に居たティアさんが声をかけて来た。


「いやの、お主は今暇か?」


もじもじしながら視線を送って来るティアさん、一体どうしたというのだろうか……。


「暇……と言う訳では無いですが。料理の番もあるので」


「それをどうにか! 頼めないだろうか……」


珍しい、この人がこんな頼みをして来るとは……。


「いや……どうしたんですか?」


「それがのぉ……ちょっと消化不良でなぁ……」


「消化不良?」


「そうなのじゃよ……お主の魔力に当てられて戦闘意欲が……」


「あっ……はい……」


要はストレス発散をしたい訳ね……。


「あと五分待ってください、ちょっと沸騰すれば後は放置しておけるので……」


後でもう少し煮込まないといけないけどね。


「わかった、待っておるぞ、待っておるぞぉ!!」


嬉々として飛んで行った。


「うーん……面倒な事になったな……」


燃える薪を眺めながら、残り少しの自由を噛み締めるのだった。



◇◆◇◆

「それじゃあ、いただきます」


「いただきます」


「いたた……いただきます……」


ボロボロになった俺が手を合わせる、それに応じて土御門さんと細川君も手を合わせる。


「あの優希さん、大丈夫ですか?」


ボロボロ姿に心配したのか土御門さんが聞いてくる。


「あー大丈夫……ボロボロなのは服だけだから」


「そ、そうなのですか……」


「うん、身体の方は回復できるからね、服は……『——復元』で、元通り」


「もはや何でもありだな上凪さんは……」


あきれ顔の細川君が、シチューを口に運びながら言う。


「ユウキだけよ、妾と互角に戦えるのは」


そう言うとティアさんが満足げに肉にかぶりつく、要望通りかなりレアだけど大丈夫かな?


「相変わらず凄いですなぁ……私と戦った時より強くなってますね」


意外とこの中で、一番丁寧にナイフとフォークで食べている劉英さん。


「まぁ色々ありましたから……というか味付け大丈夫ですか?」


割と皆何も言わずに食べているが、気にはなる。


「大丈夫ですよ、ウチのシェフと良いレベルです」


「そうだな、味も良いし上凪さんは本当に何でもありだな……」


「美味いぞ、春華たちには劣るがな」


「美味しいです、このような場所で食べれる食事ではありませんし」


大体みんな満足げに食べ進めるのだった。


作者です。

説明し忘れてましたが、細川君はボコボコにされ大量の怪我と出血したのですが、霊泉水の魔力によって傷の回復と魔力を体内の押し留まってた魔力の開通で魔力を吸収してます、デトックスですね。

血の代わりにもなるので失った血液補充にも役立ちます。

死にかけてるから身体が無理矢理に治ろうとしてる感じですね、竜族が基礎的に魔力が高く個体として強いのはこの為でもありますね。

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