第16話:魔式形代と霊泉
「優希さん……それ何ですか?」
俺が大量に出した魔石と紙を見て土御門さんが唖然とした顔をしている。
「えっと、これで形代を作るのさ。それにこの魔石をくっつける、それで形代で魔法を使えるようにするんだ」
「……どういう事? 出来るの?」
「多分……やる事は、さっきの賀茂さんに渡した様な杖を、疑似的に作り出すんだ」
「杖を……」
難しい顔をする土御門さん。多分この方法なら魔道具として扱えるとは思うんだけど……。
「やっぱり、形代で戦うのは嫌かな?」
難しそうな顔をしている土御門さんに聞く。
「そうじゃ無いんです、やっぱり火を吹くならドラゴンのが良いかなと思いまして、折り方を考えてるんです……」
どうやらこだわりがあるらしい、云々唸ってる土御門さんを置いておき細川君に向き直る。
「土御門さんが考え中だし、細川君のパワーアップを考えようか」
「はい、ありがとうございます! それで俺は何をすれば?」
「うーん、正直細川君って身体強化がまだでしょ? だからまずはそこからなんだけど……」
「それなら妾が力になれそうですねぇ」
少し幼いけど、艶のある声に振り向くすると煌びやかな金糸のチーパオを纏った劉英さんが居た。
「劉英さん、どうしてここに?」
「なんじゃ、ユウキは聞いておらんのか? 魔獣の事。それの報告でシルヴェーラへ報告に来たのじゃ」
「あーそういえば、そんな事ありましたね……別の事で忙してくて忘れてました……」
「酷いのぅ、妾がこんなに苦心してるというのに……」
よよよ……としなを作りながら泣き真似をする。
「あーそれでしたら、後で聞きますし力も貸しますから……それで力になれるとは?」
「クフフ……真龍様の居る霊峰、そちらに行けば龍脈より魔力の溢れ出る泉があるのじゃ、そこで1~2日過ごせば常人といえども身体強化が出来る位にはなろうて」
クフフと笑いながら言う、そんな便利なものがあるのか……。
「そんな便利なものがあるのか!? みたいな顔をしておるのぅ。だがその泉を使うには至極大変な条件があるのじゃ」
「条件ですか?」
「そうじゃ、そこな小童が真龍様に認められる必要があるんじゃよ」
扇で細川君を指しながら言う。
「それは、大変ですね……あの龍に認められるとなると相当ですよ……」
「クフフ……じゃから大変だといっておろう。それでそこな小童、どうするかえ?」
「やる!やらせていただきます!!」
「クフフ……よう言ったのう、ならば妾が連れて行ってやろう」
おもむろに服を脱ぎ、竜へと戻る。突如現れた竜に皆がポカンとしている。
『ほれ、乗るがいい』
「えっと……乗るってどこに?」
『なんじゃ、鞍が無いと乗れないというのか?』
「劉英さん……俺達の世界でも馬には鞍が必須ですし、そもそも馬に乗る事が滅多にないですよ」
『そういえばそうじゃった、ユウキも馬に乗れんで苦労してのう』
だって、馬に乗る必要なんて無かったし……。
「その事は忘れて下さい……それと、行くついでに俺ともう一人も乗せて貰えないですか?」
『なんじゃ、何か用なのか?』
「いや、さっき魔獣の件で手を焼いてるって話をしたじゃないですか……」
『おーその件、早速動いてくれるのか! 良き良き』
「じゃあ連れてきますね」
ポカーンとしてる土御門さんの元に行き声をかける。
「ほわわぁ~」
「おーい土御門さーん?」
「ほわわわわぁ~」
「反応が無い……」
トリップしておる……。
――パァン!!
「わわっ!? 優希さん、どうしました?」
「いや、呼んでも反応しなかったからさ」
「あぁ、ドラゴンが今、私の目の前に居るんで……夢の世界に飛んでました」
「そうか、おかえり……それでちょっと魔獣の件で一緒に行くから呼びに来たんだけど」
とりあえず、広がってる荷物をしまう。
「行くって……どこにですか?」
『ほらーユウキはよせんかー 竜の姿維持するのも疲れるんじゃよ~』
「そういう事で説明は後、行こうか」
「へ? まさか?」
「うん、乗っていくよ」
「…………きゅう……」
気絶した……まぁ良いか抱えるし。
『それで、鞍は無いがどうするかえ?」
「あー細川君。これで」
空間収納からハーネスとロープを取りだす。
「まさか……」
『大丈夫じゃろ、ユウキなら落ちない強度の物は持っておろうて』
「やっぱりですか~!?」
とりあえず俺も土御門さんと身体をロープで縛る、それから劉英さんの背中に乗ると想像以上に掴むところが無い……。
「これは……乗るのに苦労するかも……」
『クフフ……頑張ってくりゃれ』
浮き上がり飛び立つ、風魔法を合わせて一瞬で最高速になる。
「ぎゃーーーーーーー」
下から聞こえる悲鳴と風をBGMに一気に飛んで行った。