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第12話:はじめてのじゅじゅつ

「おぉ、居た居た」


辻を曲がるとゴブリンに似たモンスターの餓鬼が居た、ゴブリンより少し大きいが特に問題無いだろう。


「それじゃあ賀茂さんよく見てて。巴ちゃん皆の守りお願いね」


「「はい!」」


「優希さん何を……ひゃっ!?」


土御門さんの小さな悲鳴と共に身体強化でパワーアップした脚力で飛び跳ね餓鬼に近づく、そのまま軽く刃物で血を取り戻って来る。


「はい、ただいまっと……」


剣についた血を紙で拭う。


「上凪さん、それをどうするんですか?」


賀茂さんが不思議そうな顔で問いかけてくる。


「えっとね、これだけじゃ使えないから……あったあった、もう一つの道具がこれさ」


先程作った藁人形を取りだす。


「優希はんまさか……」


花山院さんが驚いた顔をしている。


「えぇ、そのまさかです、よしこれで……」


藁人形に魔力を込めて呪文を唱える。


『我が魔力により上凪優希が命ずる! この藁人形いれものに、汝の魂を宿らせん。血の繋がり、五行の理、天地の陰陽に従い、魂の鎖よ縛りし給え! ――魂縛命躯こんばくめいく!』


藁人形と餓鬼の身体が魔力で繋がる。すると、ピクリともしなくなる。


「ふぅ……こんなものかな?」


「優希さん、今のは何をしたんですか?」


警戒を解いた巴ちゃんがこちらに寄って来る。


「そうだな、これは簡単な契約魔法で相手の身体を魔力で奪う方法だね」


「それで、藁人形ですか……」


「うん、でも折ったり心臓を止めたりとかはできないよ、あくまで相手の身体を自由だけを奪う方法。それにほら、喋れてはいるでしょ?」


餓鬼を指差すとギャーギャーと声を荒げ、威嚇みたいな叫びをしている。


「うちはそれ、一教育者として見過ごすのんはどうなのやろうか……」


「あはは……でも自分より魔力のある相手には効かないですし、止め続けるには魔力も相当使いますから。あくまで一瞬の足止めに使う位です」


「一瞬とはいえ、相手の動きを止めれるのは強すぎますわね……」


西園寺さんが率直な感想を言う、流石パワー系陰陽師、理解が早い。


「そうですね、優希さんと鷲司さんのお稽古を見ていると一瞬で勝負が傾く時がありますものね……」


巴ちゃんも頷く、というか稽古見られてたのか……。


秘密にしている訳では無いけど、身体強化を切ってる為結構恥ずかしい結果だったりするのでひっそりと訓練をつけてもらってたりする。


「あはは……最近はだいぶ力量差を埋められるようになって来たり、返せるようになってきたけどね……。それでどうかな、賀茂さん?」


主役である賀茂さんに声をかける。


「ふぇひひ……す、すごいです、これなら私でも皆さんのお役に立てます……ウェヒッ」


うん、良さそうだね。賀茂さん自身の人の為になりたいとか守りたいという部分の琴線に触れるようにしたけど正解だったかな?


「よし、それじゃあ、賀茂さんも実践してみよう。呪文はわかる?」


「ふひっ、ちょっと心許無いです……」


「そうか、じゃあこれが呪文を書いたメモね、それとこれが操る為の藁人形。今回はそのまま使えるようにしてあるから」


メモ用紙ともうひとつの藁人形を渡し、剣と盾を出して餓鬼に近づく。


「それじゃあ解除するから、成功させるように頑張って。巴ちゃんは皆を任せたよ!」


「はい!」


「任せてください!」


「それじゃあ待たせたな、悪いけど付き合ってもらうよ」


藁人形を燃やし拘束を解除する。


「グギャアアアアア!!」


飛び込んで来る攻撃を躱し、盾で往なす。時折蹴りや殴りも合わせて注意を引く。


そうした攻防を何度か繰り返していると、敵の動きが鈍った。


「上凪……さん! 出来ましっ……たぁ!」


「ナイス!! はぁ!!」


動きの止まる餓鬼、その首に剣が吸い込まれ頭が飛ぶ。


「グギャッ!?」


短い断末魔を上げ骸となった。



◇◆◇◆

「ふぅ……お疲れ様」


「はふぃ……これ凄く疲れます……」


戦闘終了後、汗を拭う賀茂さんに魔法の使用感を聞く。


「でもこれで、やっと皆さんの役に立てます……」


「良かった良かった。それでもう一つ教えたいんだけどどうかな?」


「もう一つですか?」


「うん、これは敵じゃなくて味方にかける術。付与魔術ってやつなんだけどね。試してみるかい?」


俺の言葉に大きく頷く賀茂さん。


「うぇひひ、今ならどんなものも成功させられるような気がします!」


「それじゃあ……西園寺さーん」


休んでいる西園寺さんを呼ぶとこちらに来て首を傾げる。


「どういたしましたのかしら上凪さん?」


「えっと、髪の毛を一本貰えないかな?」


「髪の毛ですか? まさか、先程の術を私に!?」


顔を朱に染めながら言う。


「あー違う違う、術をかけるのは賀茂さんだから」


「賀茂さんが私に!?」


「あ、あのっ! かけるのは強化魔術ですっ!」


同じく朱に染まった賀茂さんが叫ぶ。


「あれ? そうですの? 私てっきり身動きを束縛され新たな扉を開くのかと思いましたわ」


「あー先に説明しなかった俺も悪いけど、さっきの金縛りの呪術って、基本的には魔力が格上の相手には使えないんだ。相手が相当消耗してたりしない限りね」


「でもそれ、上凪さんですと誰にでも出来るって事ですわよね?」


キョトンとした顔でこちらを見て来る、やらないよ?


「やらないよ……」


「うむむ……上手く生かせれば高負荷トレーニングになるかと思いましたのに……」


「それなら出力の調整をしながら、身体強化でトレーニングする方がいいよ……」


――うん、話を戻そう……。


「話が脱線したね。 それで西園寺さんを髪の毛を貰えるかな?」


「かしこまりましたの、でも上凪さんが切って下さる?」


「あーうん、わかった」


さらさらの髪に指を通し髪の毛を一本切らせてもらう、それを藁人形に埋め込んで……。


『我が魔力により上凪優希が命ずる! この藁人形いれものに繋がりし高潔なる汝の魂を繋ぐ。魂の繋がり、五行の理、天地の陰陽に従い、わが友を天下無双の徒となり給え! ――豪剛心身ごうごうしんしん!』


「おっ……おぉぉぉぉ!! 凄いですわ!!」


藁人形と魔力で繋がった西園寺さんに変化が訪れた様だ。



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