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第9話:不穏な話

西園寺さんをガリウスさんに預けた後、工房都市にあるユフィの家に転移をした。


「到着っと」


「優希さん、ここは?」


「えっと、俺の奥さんの1人で、エルフの人が使ってる家だね」


少し埃の被った室内を見渡しながら言う。


「エルフ……見た事無いです」


「じゃあ今度紹介するよ、魔法技能に関しては俺よりも詳しいし」


「わかりました、楽しみにしておきます」


玄関扉を開けて外に出る、夕暮れの街と夕食を用意する匂い、そして各所の工房から出る様々な匂いが混じった独特な空気を感じる。


「さて、ここから乗り合い馬車の停留所まで行くよ」


「わかりました……むぎゅっ」


「おっとと、大丈夫?」


「ゆ、優希さん!?」


人ごみに押しつぶされそうになった土御門さんを引き抜き手を繋ぐ、小柄な彼女だと歩きづらそうなので手を引き先導をする。


「ゴメンね、夕食の時間みたいで混んでるみたいだ。ここは市場も近いからさ」


「そうなのですね、私は大丈夫です」


それから少し歩くと乗り合い馬車の停留所に着いた。


「ふぅ……いつもより人が多かった気がするな……」


「そうなのですか?」


「うん、いつもなら身動き取れない程に、ごった返すことは無いんだけどね……」


と、ため息をつきながら人ごみを見る、この調子だと乗合馬車もいっぱいかもしれない……。


「おにゃ? そこにおりますのは勇者様じゃないですかにゃ?」


声をかけられたのは以前この街に来た時に、春華と行ったお店の店員さんだ。


「お久しぶりです、こんな所でどうしたんですか?」


「それがにゃ、この街から伸びる街道にあるアストラとの境で大きな魔獣が出たみたいなんですにゃ、それで仕入れの馬車が遅れに遅れて。とりあえず門についたから物品の確認だけしてきたんですにゃ」


「魔獣ですか……でもアストラとの境って龍頭リョウズウ伯爵の領地の辺りでしたよね。あそこら辺で出るのはかなり珍しいですよ?」


それに、あの周囲の魔獣っていざとなればティアニールさんが暇つぶしに倒してるはずだよね。


「だから問題なんですにゃ……」


「そうなんですね、とりあえず帰ったらエアリス達に聞いてみないとなぁ……」


「もし、勇者様が解決してくるならウチの商品お値引きしますにゃ」


ふむ、それは有難いかも……。


お金はあるとはいえ台所番や家事当番の春華やメアリーは比較的に節約志向だから喜ばれるだろう。


それに、問題が起きてるなら解決をしやすい例とシステムを作っておきたいしな。


「それで、勇者様。そちらの方は奥様ですかにゃ?」


「お、奥様ぁ!?」


指差された土御門さんが驚く。


「いやいや、違う違うこの人はクラスメイトで魔法鎧を作りにヒナギクさんの所へ向かってるんです」


「そうなんですかにゃ、にゃんだつまらないにゃぁ」


「いやいや、面白くしないで下さいよ」


「まぁ良いにゃ、今度また来て欲しいにゃ~」


そう言うと店員さんは手と尻尾をぶんぶん振りながら人ごみの中へ紛れて行った。


「何か、凄い人でしたね……」


「そうだね、台風の様な人だよ」


それから少しして道が開けると共に乗合馬車がやって来た。


「土御門さん手を」


「は、はいっ!」


馬車の乗り口が高めなので引っ張り上げる、それでそのまま中を通り椅子に座る。


「良かった、席が空いてたみたい」


「凄い人ですね……」


「そうだね」


走り出した馬車に揺られながら進む、停留所毎にお客さんが入れ替わるのを眺めている。


「そういえば先程の猫人ねこびとの店員さんが言っていた魔獣って私達の世界のモンスターみたいなものなのですか?」


「うーんと、どっちかというと野生動物とモンスターの間だね」


「そうなんですね……でも珍しいって言うのは? それにそこの伯爵さんが聞く限り優秀そうな感じなのですが?」


首をかしげる土御門さん、かなり聡いみたい。


「うん、そこを治める竜頭伯爵は竜人と連携してモンスターや魔獣を狩ってるんだ、だから交通の要所を任されてるんだよ」


「竜人ですか……その竜は西洋竜ですか? 東洋龍ですか?」


「えっとね、西洋竜だね。興味ある?」


「はい、これでも私、漫画やアニメが好きですので」


確かに、目の輝きがいつもと違う、一割増くらいでキラキラしてるな。


「じゃあ、後で様子見ついでに行こうか」


「良いんですか!? あ、でも時間が……」


「うん、ヒナギクさんのとこで採寸してもらうだろうし。その時に一度帰って皆の様子を見て来るけどね」


「わかりました!」


「お客さーん終点だよー、それとも戻るのかい?」


「あっ、降りまーす!」


気付いたら話し込んでたらしい、御者さんに言われ慌てて降りるのだった。




◇◆◇◆

「それじゃあ、ヒナギクさん頼みました」


「あぁ、任せてくれ。ユウキ君の頼みだ、明日には出来上がるようにしておくさ」


「はい、ありがとうございます」


机の上に置かれたデザイン画と、様々な衣装制作の本が開かれている。


「これが……私の……」


「まだまだイラストの段階だからね~、これから型紙の起こすのさ。さぁ~ユイナこれから採寸をしてしまおう」


「はい、お願いします」


ニヤニヤしている土御門さんが、ヒナギクさんに連れられ店の奥に向かった。



因みに今回出て来た店員さんは3章の22話で出てきた人です!

語尾に「にゃん」をつけるようにしたのは語尾に「にゃ」をつけた春華を見ていた店長さんから「試しにやってみて」と言われやった結果好評だった為普段からつけるようになりました。

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