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第3話:顔合わせ

「すんまへん優希はん、この子達がごやくたいを……」


顔に赤い痕をつけた俺に花山院さんが謝る。


「あはは、だいじょうぶですよ。それと、西園寺さんは大丈夫でした?」


横で正座をしている、西園寺さいおんじ心愛ここあちゃんに向けて問いかける。


「はい、すみません……」


「反省しないと駄目、この人は寝てる私が風邪ひかない様に掛物をしてくれた」


むふーって感じで胸を張るのは土御門つちみかど結菜ゆいなちゃん、凄くマイペースな子だ。


「それで優希さん、どうして避けなかったんです?」


赤くなった顔の部分を冷やしながら聞いてくる巴ちゃん。


「あーそれは、俺が西園寺さんの片足を受け止めてたから。あのまま避けたりすると、体勢を崩して頭から落ちるところだったからね。それに、こうして巴ちゃんに看病してもらえるし」


滅多にない事だし、いい機会という事で堪能させてもらおう。


「もう……優希さんったら……」


恥ずかしいのか、ぐりぐりと濡れタオルを押し付けて来る巴ちゃん、そんなところも可愛い。


「コホン、ほして優希はん、この二人の他に後二人剣士ともう一人呪術師が居りますゆえ、ご挨拶をさせとっただきたく思うて、よろしいどすか?」


「はい、おねがいします」


「そないなら、細川はん、賀茂はんおいでやす」


後に控えていた二人だ、片方が黒髪長身の剣士の青年、もう一人が片目を隠して髪にメッシュを入れた女の子だ。


「僕は細川 悠真、細川流ん師範代ばい! 得意な武器は剣太刀つるぎたちばい! こん度は神閃ん使い手たる上凪しゃんに師事出来る事をば嬉しゅう思う!」


元気よく立ち上がり、大きな声で言った青年の言葉が全く聞き取れない……異世界言語じゃないから、翻訳魔法も発動しないんだよなぁ。


「……なんて?」


「細川君、興奮してるのんはわかるけど……熊本弁は最初驚かれてまいますで」


少し、呆れながら言う花山院さん、あれ熊本弁なのか。


「すみませんでした! 改めて……僕は細川 悠真、細川流の師範代ば……です! 得意な武器は剣太刀ば……です! この度は神閃の使い手たる上凪しゃ……さんに師事出来る事をば……事を嬉しく思います!」


所々詰まりつつ言い直してくれる、お陰で大分聞き取りやすくなった。


「ありがとう細川君、とは言っても俺もそこまで優秀な剣士とは言いづらいからね、逆に教わることがあると思う、その時はよろしくね」


そう言って手を差し出すと、緊張していた顔が段々と喜びに変わる。


「はい! ありがとうございます!!」


握手を交わし、元の位置に戻り正座をする細川君、ずっと握手した自分の手を見つめている。


「なんだか、アイドルの握手会を彷彿とさせますね……」


「巴ちゃん、行った事あるの?」


え、意外な事実が……。


「いえ、鈴香さん達のを見学に行かせてもらったんです」


「あぁ、そういう事か……」


ほっとすると巴ちゃんがニヤニヤする。


「へぇ~意外と優希さん、独占力強いんですね……」


「うっ……それは……」


「い~ですよ~私も嬉しいので♪」


そんな話をしていると、もう一人の女の子が至近距離に居た。


「うぇひひ……やっぱり恋する二人はいいですねぇ~」


「えっと……君は?」


目を輝かせながら俺達から一歩引くと、にまにましながらタロットカードを取りだす。


「ふひっ……わ、私は賀茂かも 依与里いよりですぅ、好きなものは恋バナと恋のおまじないですぅ、うぇひっ……」


キャラ濃いなぁ……いそいそと戻って水晶髑髏みたいなもの出して、床でタロットを始めるし……。


「うぇひっ……凄い……お二人の相性は最高潮……ビックバンレベルです……ふひっ」


「ビックバンまで来たかー」


「なんか恥ずかしいですね……」


「あーすんまへん優希はん、賀茂はんはちょい治れへん病を抱えてまして……」


気まずそうに言う花山院さん、不治の病?


「それって……」


「はい、中二病どす……」


「わかりました、深く追求するのはやめましょう!」


「おおきに……」


しかし、全員キャラが濃い……。


剣太刀という特殊な武器の使い手に。

ゆるゆる系陰陽師。

中二病呪術師と来て。

パワー系陰陽師という。


少し自信が無くなって来たぞ……。



◇◆◇◆

それから、細川君の頼みで真剣を用いた一本勝負をした後、皆で夕食会に行くことに。


そこでは皆との交流や、問題点などを話し合ったり、巴ちゃんにジト目で見られながらの舞妓さん遊びに興じたりと、かなり有意義な時間を過ごせた。


「ということで、優希さん一緒にお風呂に入りましょう」


「うん、どういう流れで?」


宿に戻って来た俺達、部屋に入るなり開口一番で巴ちゃんが言い放つ。


「だって、舞妓さんや土御門さんや細川君にちやほやされて、喜んでたじゃないですか……」


「まて、一人男が入ってるぞ」


「まんざらでもないくせに……」


拗ね調子な巴ちゃんがいじけつつ倒れ込んでくる。


「いや、嫌だよ!? 男はノーサンキューだよ!?」


「むぅ……折角、優希さんが喜びそうな報告が出来ると思ったのに……」


「おれが、喜びそうな? なんだろう……?」


「実はですね、胸のカップ数が上がってました」


耳元で囁かれ一瞬くらりとした……。


「むぅ……反応が薄いですね……」


俺のを急所を触りながら言う。


「いや、我慢してるんだよ……明日は転入初日だし……」


「むぅ……じゃあこの服を見てもそう言えますか?」


ベットから降りてクローゼットに駆け寄る、開くと中から新しい制服が出て来た。


「それって……」


「はい! 裁縫師の方が居ましたのでもう用意できたそうです! ですので……」


おもむろに服を脱ぎ捨て、着替え始める。紫色の扇情的な下着の上に可愛らしさ満載の制服を着ていく。


「もう、数着ありますので楽しみましょう……」


ニヤリと笑う巴ちゃん、なんか目が怖いんですが……。


「まさか……酔ってるのか?」


「どうなんでしょう? いただきまーす♪」


「ちょ……まって……あぁーーーーー」



実は、俺と花山院さんに出されたお酒を、巴ちゃんは飲んでしまっていたらしいのだった。

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