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人気投票SS:【春華編】

「3・2・1……いってらっしゃーい!!」


――ガゴンッ!


その掛け声と共に視点が下に落ちる、位置エネルギーと水によるほぼゼロ摩擦による滑走をする。


「うおぁぁぁ!?」


軽い驚きと共にチューブを滑り視界が開ける、ほんの10秒程の事だがトップスピードまで行った俺は緩やかに止まる。


「意外と楽しいなこれ……」


それからしばらく待っていると、次の人がスタート位置についたようだ。


「わぁぁぁぁぁぁ!!」


ほんの10秒程で桃色の弾丸が飛び出て来た、弾丸になった主を待っているとプールからでてこちらに駆けて来る。


「おかえり春華、どうだった?」


「はい! 楽しかったです!」


そう言って万遍の笑みを浮かべる春華、その手を取って歩き出す。


「でも、いきなり落ちるのはちょっとびっくりするよね」


「そう……ですね。私はジェットコースターが好きなのでタイミングのズレとかがわかるんですよね」


「そうなのか……でも、遊園地じゃなくて良かったのか?」


「えぇ! 前々からウォータースライダー巡りをしたかったので!」


「そうか、じゃあ楽しまないとね!」


「はい!」


腕を引く春華に連れられ先程のスライダーにもう一度並ぶのだった。


◇◆◇◆

「春華……流石に休まない?」


転移によって数か所のプールを移動した俺達、午前中だけで20回以上は滑っている。


「そう……ですね……お昼過ぎちゃいましたし、お弁当にしましょう」


上着を羽織って歩き出す、少し移動するとテーブルとパラソル、それからキッチンカーやプレハブ屋台のお店が並ぶエリアにやって来た。


「春華、お弁当はどのくらいの量あるの?」


「えっとですね……2段のお重ですね、おかずは卵焼きに唐揚げ、きんぴらにとんかつ、ミニハンバーグにかにクリーム春巻き、茹でたアスパラに海老とブロッコリーのタルタルとミニトマトのマリネに、おにぎりです」


「朝からご苦労様です!」


予想の倍くらいの品数が出てきてびっくりした、というかそこまで用意してくれる春華に頭が上がらない。


「えへへっ、ありがとうございます。でも、半分くらい空間収納アイテムボックスに作り置きのおかずですし、朝作ったのも卵焼きとおにぎりくらいです」


「それでもだよ。春華のご飯は美味しいし、バランスも良いからね」


「ありがとうございます! でも、無理して食べなくても大丈夫ですからね!」


春華の視線がキッチンカーや屋台の方へチラチラと向く。


「わかった、せっかくだしキッチンカーのも買って来て一緒に食べよう。空間収納なら傷まないし」


「はい! じゃあ私焼きそばと、あの屋台とあの屋台が良いです!」


春華が指差したのは……ルンダンとバインミーと書いてあるキッチンカーだ。


「ルンダン? バインミー?」


「はい! インドネシア料理とベトナム料理ですね、片方はスパイスを混ぜたお肉を焼いたものともう片方はベトナムで人気のサンドイッチです!」


「へぇ……でも、そこまで詳しいなら春華のが美味しいく作れそうだけどね」


パラソルのあるスペースは混雑はしていないので、席を取る前に買ってしまおう。春華の手を引きながらそこそこ人の並んでいる列に並ぶと、春華はスマホを取りだす。


「SNSで調べたら、ここのプールに来るキッチンカーのお料理が美味しくて有名なんです、これ見て下さい」


春華が差し出してくる画面を覗くと、写真と共に何件かの外国語でのレビューが見れた。


「へぇ……本格的なんだね。しかもそれぞれ店主さんはベトナムとインドネシア出身なんだね」


「はい、ですので本格的な味の勉強になるかと思いまして!」


むふーっとしながら表情をキラキラさせる春華、かわいい。


「なら、無理してお弁当を作らなくても。事前にリサーチしてたみたいだし……」


「あはは……実は、楽しみ過ぎて朝早くに起きちゃったんです。目も冴えちゃって……」


恥ずかしそうに言う春華、かわいい。


「そっか、じゃあ各々のお店は一人前だけにしてシェアして食べようか」


「はい!」



◇◆◇◆

そして、買って来た屋台メシと春華のお弁当を食べた後。俺と春華は転移した先の流れるプールでぷかぷかと浮いていた。


「いやー、気持ちが良いねぇ……」


「ですねぇ……」


「でも春華、スライダーに乗らなくて良いの?」


「はい~大丈夫ですぅ~ご飯も食べたばかりですしぃ~」


「そっかぁ~」


そうして、終点までたどり着く、流石にここまで来ると人が増えた様で騒々しくなっている。


「どうする? 人も少ないし、もう一回流れる?」


二人でプールから上がりながら聞く、意外と浮かんでるだけも悪くは無かったし休むのにも丁度良かった。


「そうですね……あれ? あの子」


悩んでいた春華の視線が小さい子を捉える、どうやら迷子の様子だ。


「優希さん」


「あぁ」


二人で少女の元へ行く、春華が目線を合わせて問いかける。


「お嬢ちゃん、どうしたの?」


「ママが居ないの……うぐっ……ママぁ……」


「そっか、おねーちゃんが探してあげるね~」


泣きだした女の子を抱っこする春華、その間に『鑑定』で女の子の名前を調べる。


「お嬢ちゃん、お名前は?」


「まりか……」


「まりかちゃんか~、優希さんこのまま迷子センターに行っても大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫。住所も名前も〝今〟見たし探すのも早いと思うよ」


「ありがとうございます」


それから迷子センターで呼びかけてもらうと、すぐにお母さんがやって来た。


「ありがとうございます! ありがとうございます!!」


「大丈夫ですよ、すぐ泣き止んじゃいましたし。お母さんもすぐ来てくれましたからね~」


「ね~」


すっかり仲良くなった二人が笑い合う。


「彼氏さんもすみません、せっかくのデートですのに……」


「いえいえ、時間も全く取られてませんから」


そして、笑いながら二人を見送る、俺達も次の場所に行くためにゲートへ向かう。


「まりかちゃん、可愛かったですねぇ……」


「そうだね、春華にもすぐ懐いてたし」


「ねぇ、優希さん……」


「ん? どうした?」


「私、子供欲しくなっちゃいました♪」


いきなり落とされた爆弾発言におどろいていると、腕を抱かれる。


「次行く場所、変えましょう!」


「えっちょ!? 春華!?」


ぐいぐいと出口へ引っ張られるのだった。



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