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人気投票SS:【メアリー編③】

「むぅ……何をデレデレしてるんですカ……」


「してないよ!?」


「じゃ何でそんなにやけてるんですカ?」


「あーそれは……」


先程の事を説明すると複雑そうな顔をする、今でも少し引きずっている様だ。


「でも、メアリーが居たからアイツの悪事を暴けたし。他の参加していた皆の事も救ったんだよ」


あの時メアリーがデータを届けてくれたから余計な被害が出る前にアイツの行動を封じれた訳だし。


「それでモ、今だに夢に見るのでス……。優希さんが帰ってこない夢ヲ……」


不安が揺らいでいる目で俺を見つめる。


「うーーん……あ、そうだ、コレを渡すよ」


空間収納アイテムボックスから小さなカプセルを取りだす。


「これハ?」


「分け御霊とか、そういった感じの魂を閉じ込める為の物だね。皆に渡す予定だけどメアリーには先に渡すよ」


「分け御霊というと……神棚に飾ってるアレですカ?」


「そうそう、前に京都に行った時に陰陽師の人に教えて貰ったんだ」


精神を統一して魂の一部を移す、すると中に淡く光りが灯る。


「よし、これで大丈夫。これがあればいつでも帰って来れるから」


分け御霊を込めたカプセルを手渡すと、メアリーは大切そうに胸に抱く。


「優希さんの温かさを感じまス……」


「少しは、不安が紛れたかな?」


「はイ、すっかり忘れてしまいましタ?」


疑問形で首を傾げるメアリー、どうしたというのだろう。


「もう一コ、優希さんから貰えたら不安が無くなると思いまス……」


そう言って指差すのは自作テディベアのパーツが置いてある所だ。


「そうだね、じゃあもう一個、心を込めて作るよ」


「はイ!」



◇◆◇◆

それからパーツを選び終えた所で、ワークショップが始まり、縫製に苦戦しながらもなんとか作り上げる事に成功した。


それから併設のカフェで食事をしたり沢山のお土産を買う、その後は予定していた宿に向けて出発する。


「お待ちしておりました、上凪様」


「お久しぶりです女将さん」


「前回は、両親達が良くしてもらったみたいで、ありがとうございます」


「いえいえ、あの時は私達も上凪様に助けていただいた様なものですから!」


お互いにぺこぺこし合う、ここの宿は突如ダンジョン化した湖を攻略する為に宿を丸々借りる事になったしまった、その時に丁度懇親会と文化交流の為に来ていた皆の両親がお邪魔したのだ。


「それで……本日は離れをご用意させていただきました」


「あれ? 普通の部屋で予約したんだけど……」


「はい、実は……」


どうやら外国人の団体から急遽予約が入ってしまい、俺達の取っていた部屋を落ち着く場所に変えてくれたのだ。


「でもかなり料金に差が……」


「いえいえ! 前回のお礼もし足りないので追加はいただきません!」


「わ、わかりました……」


一歩も引かないぞと言わんんばかりの女将の気勢に圧され了承する、そしてあれよあれよと食事まで終えてしまった。


「ふぇひひ~優希さんが3人いまふぅ~」


出されたお酒を飲み過ぎて、語尾のカタコトが消えたメアリーが俺の背の上で笑う。


「ほら、しっかり掴まって。ってか俺が目の前に3人はおかしいだろ……」


「ふぁ~い!」


見えて無いものが見えているのかメアリーがぐっと力を加える、そのままきゅっと締まる首。


「ぐぎぎ……やばいやばい……身体強化が間に合った……」


「Zzz……」


「寝ちゃったか……」


そのまま部屋に戻りベッドに寝かせる、転移で拘束から抜けるとメアリーが腕を彷徨わせる。


「代わりにこれをおいてっと……さて、俺も寝るか……」


俺の作ったテディベアを握らせると抱きしめるメアリー、俺も隣のベッドに入り電気を消す。


「おやすみ、メアリー……」


瞼を閉じるとスッと眠りに落ちた。



◇◆◇◆

――ゴソゴソ。


「んんっ?……メアリー?」


薄明りの中、物音がして目を擦りながら起きる、するといつの間にかメアリーが隣に居て裾を握っていた。


「——すぅ——すぅ」


「…………」


「——すぅ——すぅ」


「まぁ、良いか……」


隣のベッドは丁寧に直され、2人分のテディベアが並んでいる。恐らくメアリーも狸寝入りだろう。


「——すぅ——すぅ」


(折角だし……よいしょっと)


「——すぶぅっ!?」


空いてる手でぐいっと抱き寄せる。すると、メアリーの体温が上がる。


「まだ時間はあるし、もう一眠りするか……」


そう呟くとおずおずと手が背中に回されたので、瞼を閉じる。


――トクントクン。


心地よい音を合わせる内に俺は意識を手放した。



◇◆◇◆

「ひゃぅ!?」「おわぁぁぁ!?」


二人でウォータースライダーを下る、水しぶきを上げて着水する。


「緩やかとはいえ、結構な速度だったな……」


「えぇ、すごかったですネ……」


お昼を回って宿を出た俺達は、温水プール施設にやって来ていた。


「それにしても意外だったな、メアリーがプールに行きたいなんて」


「はイ、どうしても皆さんと一緒に居るとお仕事優先になってしまいますかラ……」


「いつも大変お世話になっております!」


すかさず土下座する、今度また二人でプールに行こう、水着も見たいし。


「ゆ、優希さン! 頭を上げてくださイ! 皆さん見てますヨ!?」


「今度はもっと色んなとこに行こうな! 気を遣わない様に二人で行けるとこに!」


「わかりましタ! 恥ずかしいので立ってくださイ!」


メアリーに引き上げられ立ち上がる、確かに注目されてたけどどうでもいい。


「そ、それより優希さン。私、飲み物買ってきますネ!」


慌てて、売店の方へ行ってしまう、そして残される俺。


周りの人も興味を無くしたのか、遊びに戻っていく。


「さて……帰りの渋滞でも調べとくか……」


日曜日という事もあり高速道路は混むからな、最悪は転移で帰ればいいけど二人で車で帰るのも乙なものだし。


「うわぁ……もう混んでるのか……」


渋滞予測を見ると、もう既に混み始めているようだ。


――ざわざわ……。


なんか周りが騒がしいな、どうしたんだろう。


メアリーの行った方から言い争う声がする。


「Per favore, lasciami andare‼(放してください!)」


「Bene, vieni qui a bere qualcosa!(こっちに来て飲もうじゃないか!)」


「Sì, è bello, vero? Adoro le belle donne come te!(そうだ、良いじゃいないか、アンタみたいな美人大好物だぜ!)」


耳に入って来るのはメアリーの声と複数の男性の声、内容的にナンパされているようだ。


メアリーは可愛いからなぁ……しかも今日は開放的なのか胸元がぱっくり空いたホルターネックの水着を着てるし、かなり目を引く格好だ。


「Sono qui con mio marito! Lasciatevi andare!(夫と来てるんです! 放して!)」


男に囲まれたメアリーが腕を掴まれ、困惑している。それに、両手に持った飲み物があるせいで振り解けないみたいだ。


「Ehi, Mary? Cosa c'è che non va?(おーい、メアリー?どうかした?)」


イタリア語で問いかけると、メアリーと男達がこちらを見る。


「あ、優希さン!!」


「Che ti prende, bastardo giapponese, non ti mettere in mezzo!(何だお前、日本人のヒョロガリが邪魔すんじゃねーよ)」

「Non ci conoscete o state ridendo di noi!(俺らを知らないとか笑わせるじゃん!)」


その言葉にケタケタと笑う男達。


「Huh. ...... Quella donna è mia moglie, e non è una persona che voi vanitosi alitatori come voi potete toccare.(はぁ……その女性は俺の妻でね、アンタらみたいな口だけの見栄っ張りが触れていい相手じゃないんだけど)」


呆れた様に挑発交じりで言うと、男達の沸点に触れた様だ。


「Ma che diavolo, amico!(何だとてめぇ!!)」

「Ti ucciderò!(ぶっ殺すぞ!)」

「Non leccarmi, piccolo pesce giapponese!(舐めてるんじゃねーぞこの雑魚日本人!)」


いきり立つ男達、メアリーの手を放し俺を囲う。背丈はほぼ同じだし、只のチンピラみたいな奴だから全く凄味が無い。


そして囲んでるのは良いけど、後ろでメアリーが空間収納アイテムボックスから何か馬鹿でかい斧を取りだしてる。


――そして、引き始める周囲の人。


「待て、メアリー! 流石にそれは不味い!」

「Ehi! Cosa state facendo?(おい!お前達何してる!)」


俺がメアリーを制止する声と共に、何やら懐かしい声が聞こえた。


「あれ? レオナルド?」

「「「「「Signor Leonardo!(レオナルドさん!)」」」」


「おー、ユウキじゃねーか! どうしたんだよ!?」


「いやさ、こいつ等が俺の嫁をナンパしてて、割って入ったんだ」


チンピラを指差して答える、指差された奴らがいきり立つ。


「Non fatelo, non fatelo, non potete battere quella persona nemmeno se siete in mille.(あーやめとけやめとけ、お前達が1000人居たとこでその人には勝てないよ)」


「No, nemmeno 10.000 persone possono farlo.(いや、一万人でも無理だよ)」


「Non fa differenza.(ちげぇねぇ)」


そう言って笑うレオナルドさんに不満そうな声を上げるチンピラ達。


「Ragazzi, questo è l'“eroe” sardo che ha schiacciato quel Nephilim da solo.(お前達、この人はあのネフィリムを1人でぶっ潰したサルデーニャの『英雄』だぞ?)」


その言葉にチンピラ達が顔を青くする。


「È quello che sto dicendo, io sistemo le cose qui, tu vai a raggiungere tuo padre e gli altri.(そういう事だ、ここは俺がケジメをつけるから、オヤジ達の所に行ってろ)」


そう言われ、そそくさと逃げていくチンピラ達、そして向き直り頭を下げるレオナルドさん。


「すまなかった、ユウキ、それと……」


「メアリーでス、レオナルド様」


斧をしまったメアリーが隣に並ぶ、そしてちゃっかりくっついてくる。


「あの時のメイドさんか!? これまた雰囲気が柔らかくなったな……」


「えぇ、幸せにしてもらってますかラ」

「そうだね、幸せにしてるし」


二人でハモる、予期せぬ事に顔を見合わせ笑い出す。


「あーあー、もう秋だってのにここだけ真夏だろ……」


呆れたように言うレオナルド、そして再度頭を下げる。


「ウチの若いのがすまなかった! アイツらには俺と親父からきつく言っとくから許してくれないか?」


「俺はメアリーが許すなら良いけど……メアリーはどうする?」


「そうですネ……これ以降邪魔しないというのであれば許しまス」


柔らかく微笑むメアリー、


「そうか、本当にすまなかった、後日オヤジと一緒に謝りに行くよ」


「あぁ、わかったよ」


「わかりましタ、では私達はこれデ」


そう言ってレオナルドと別れ、遊びに戻るのだった。



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