|章間|②∶ロップルさんのお見合い【後半】
「ロ、ロップルさん! これです!」
出してきたのは一つの腕輪、装飾には月と湖畔と女性が彫られている。だが宝石も無い、すごくシンプルなデザインだ。
「ふーむ……手に取らせてもらうね」
どこからか出した白手袋をつけていろんな角度から見る、そのままじっと考えていたら口を開いた。
「うん、ありがとう。それじゃー私もう少し見せてもらうね~」
そう言って商品を見に戻ってしまった。
「えっ……優希さん、これってどういうことですかね?」
「うーん……わからん……」
「えぇ……アレだけ奥さんいるのに?」
うん、とは言っても女の子の気持ちなんて、絶対はないんだよな……。
「そうですわね、優希様は女性の気持ちを考えるがダメダメですから」
そう言っていつの間にか横に居たリリアーナに腕を組まれる。
「失礼しますわね。私、優希様の新しい奥さんでリリアーナ・ノーブルブラッディと申しますわ」
「は、はい……金守 弘幸です!」
うーむリリアーナの完璧お姫様スマイル、貴族との話し合いや外交などの場でエアリスやリリアーナがよくやる、惚れさせチートスマイルだ。
「えっと、ついでに後二人も紹介するね」
レティシアとアミリアを呼んで二人を紹介する。
「あと一人居るんだけどね、今日はちょっと用事があって来られないんだ」
帰還前から別行動してるセレーネは、用事でこちらの世界に居ない。
「あと一人……もう何でもありですね……」
「あはは……俺もびっくりだよ……」
苦笑いをしながら頬を掻いた。
◇◆◇◆
それから金守君より商品を増やすから今のお店から大きな店舗を移転する事を教えてもらったので、今日はセレーネも居ないし後日来ようという事になった。
「そういえば、ロップルさん。金守君はどうだった?」
「それは、恋人として? 結婚相手として?」
「うーん……恋人?」
そう聞くと、目をつぶって考える、段々眉間に皺が寄る。
「うーーーーーん、すっごく好印象でお願いしたいんだけど……ちょっと悩んでる……」
「そうなの?」
「うん、性格がまだわからないから何とも言えないけど……視線がわりとドスケベで……」
「「「あっ……」」」
女性陣三人が言っちゃったかーみたいな感じで反応する。
「いやね、私だけ見てるなら良いんだけど。リリアーナ様とアミリア様の胸をガン見してるし、シアさんの尻をガン見してるし……」
よし、埋めるか! 親御さんには悪いけど!
「まぁ、男性はよく見てきますし……」
「そうだねぇ……ユウキもガン見してるし」
「そうですね、流石にクロコとかには向けないですが、いやらしい視線を感じますね」
「すみませんでしたぁ!!」
仕方ないじゃん! 皆可愛いし……。
「うん、それもあってね。恋人になったらすぐに手を出されそうで……」
「それはないんじゃないかなぁ……」
あのガチガチさは、昔の俺みたいに奥手だろうし。
「それに、こっちが理由としては大きいんだけど。彼の才能と情熱を私が奪って良いのかなぁ……ってところがあるのよ……」
優しい目をするロップルさん。
「彼の作品は一つ一つ沢山の時間かけてるのが感じ取れるし、妥協をしない様に自分の古い作品をなるべく並ばせない様にしてるのよね……」
「そうですね、アンティークな作品が多い中、作風が違うからわかりやすかったですわね……」
リリアーナもうんうんと頷いている、俺はよくわからないけど、色んな作品を識ってるリリアーナと、自分でも作ってるロップルさんが言うのだからそうなのだろう。
「流石リリアーナ様。そして、そんな沢山の作品に向いている彼の情熱を私に向けさせるのは……」
「うーん……それだったら試してみません?」
「試す?」
「うん、金守君からオーケー出たらなんだけど。これから一カ月、週末はロップルさんとデートしてもらって更に今までと変わらないクオリティの作品を作ってもらう。作品の出来はリリアーナとロップルさんに判定してもらってその結果で決めましょう」
とは言っても金守君の気持ち次第な所はあるけどね……。
そう言うと、また眉間に皺を寄せ悩み始める。
「わかったわ、それで行きましょう」
そうして、二人のお試し期間を始める為に俺は金守君への連絡を取った。
◇◆◇◆
「そういえば、優希様。今日はお上手な誘導でしたね」
就寝前、リリアーナとベッドに入った所でそう言われた。
「まぁね、ロップルさん自身も好意があるって言ってるし、だったらくっつけちゃおうと思ったからね」
リリアーナも察していたようでふふっと笑う。
「良いと思います、それにしても、カナモリさんから返事を貰ったロップルさんは微笑ましかったですね」
「そうだね、連絡用に用意したスマホをずっとチラチラ見てたもんね」
帰りに、そのままの足で買いに行ったスマホに金守君との連絡が出来るようにしたら、通知の度に耳をぴくぴくさせてた。
「そうそう、金守君からも凄い大量の連絡来たんだよ、俺じゃなくてロップルさんに返せと言ったけどね」
デートはどこがいいとか服装はどうしようとか、好みとか……ひたすらに相談事が多かったんだよね……。
「それに、私のスマホも買ってもらえましたからね」
枕元に置いてあるスマートフォンを取って笑う、それにしてももう使いこなしてるのは凄いな……。
「そうだ、優希様。調べたら〝恋人はお互いの写真を待ち受けにする〟との事です。ですので、写真を撮りませんか?」
「良いけど……もうパジャマだよ?」
「だいじょうぶです、ほら顔を寄せて下さい!」
「了解」
顔を近づけた瞬間、距離を詰められ口を塞がれた。
――カシャッ。
そしてスマホの画面を見ると、目を閉じたリリアーナと驚いて目を開けた俺が写っていた。
「リリアーナ……まさかそれを待ち受けに?」
「はい! 出来ました!」
「なんか凄く恥ずかしいんだけど……まぁ人に見せないだろうし……」
「え?」
「え?」
――ピコンッ。
通知音が鳴り俺のスマホを見ると、通話アプリのリリアーナのプロフ画像が今撮った写真になっていた。
「えへへ~やっちゃいました……」
可愛らしく笑うリリアーナ、その柔らかい笑顔に降参してスマホを置くのだった。
作者です。
何か、ロップルさんの話しだけだと少し足りなくて、優希側でイチャイチャさせてたら800字書いてました……。
一応この後はカクヨム側で行った人気投票のSSを掲載してから新章に移ります、新章は陰陽師やら呪術師やらが出てきます!
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