|章間|①∶ロップルさんのお見合い【前半】
こちらの世界に帰って来て数日、今日はかねてより予定していたロップルさんのお見合い相手探しだ。
「そういえば、ロップルさんはどんな相手が良いとかあるの?」
「うーん……前にも言いましたけど、高収入で職人で背が高くて顔が良くて、私も職人仕事を許してくれて、それでいて真面目で優しくて、お金持ちで顔が良い人です」
「それは無理だろ……」
「うーん……じゃあ、私を見た目で評価しないで、好きな仕事をやっても良いよと言ってくれる、少し私に贅沢させてくれる人が良いですね」
「今度はえらいハードル下がったね……」
今までのは何だったんだ……。
「そこはほら……婚活の様式美?」
「さいですか……。それじゃあ同じ職人っていうのは?」
「あー……良いですけど、頑固な人は嫌ですよ?」
頑固か……どうなんだろう……。
「まぁ、いってみるか……」
ついでに彼女達も連れていこうか。
◇◆◇◆
「ありがとうございます、綿貫さん」
「いえいえ~。私これから少し本社の方に顔を出すので~何かありましたら私か巴様までご連絡を~」
「はい、ありがとうございます!」
「ではでは~」
走り去っていく車を見送ると、相変わらずぽかんとした皆がそこに居た。
「それじゃあ行くよ~」
皆を連れていつものお店へ入った。
「お久しぶり~元気にしてた?」
「あ、優希さん! どこに行ってた……」
金守君が唖然としている、どうしたのかな?。
「どうしたんですかね?」
「こちらを見て固まってるわね……」
「ご主人様、あのお方は?」
固まっている金守君へ視線を向けるレティシア。
「えっと、俺の会社の従業員で同じ学校の友達だよ」
「そうなのね……ってユウキは学舎に通ってるの?」
「あぁ、一応ね。こっちの世界だと20歳過ぎても学校で勉強を学ぶ人は多いいよ」
「そうなのですね……優希様は向上心が強いお方なのですね」
「うーん……というか、この世界だととりあえず大学は出とけと言われてるし。必要であればリリアーナ達も学校へ通えるように手配するけど?」
そう聞くと皆が難しい顔をする、ここでする話じゃ無いし後でゆっくり決めて貰おうか。
「とりあえず、今日は婚約指輪を見に来たからさ。みんな、自由に見てて良いよ」
もう既に、色々と見て回っているロップルさんは別として、商品を見ていてもらうのは良いだろう。
「それじゃあ、俺は金守君に挨拶してくるね」
みんなから離れ、金守君の前まで来る。
「おーい金守君? おーい」
手を目の前で振る、だけど視線が一点に向いている。
「あぁ……なる程……」
視線は勿論、一緒に入って来た彼女達に釘付けだ。
特に、宝石を眺めて耳がぴょこぴょこしている彼女にだ。
とりあえず、挨拶させるか……。
「氷を作って、背中にほいっと」
「うひょうおおおおお!? 何するんですか!!!」
「ずっと呆けているからだよ、ちゃんと相手してくれ……」
「あーすみません……それで、今日は……ってまた奥さん増やしたんですね……」
またコイツは……みたいな目で見て来る。
「あはは……まぁ、それもあるけど。本題は違うんだ……おーい、ロップルさん」
呼びかけるとぴょこぴょことこちらに寄って来る。
「はい、何でしょうかユウキさん」
「えっと、もしロップルさんの好みに合えば、彼を紹介しようと思ったんだけど」
「ゆ、優希さん!?」
狼狽えるな少年よ……バレバレだと恥ずかしいぞ。
「とりあえず、紹介するね。金守 弘幸君。俺の会社の従業員で同じ学校の友達、歳は……17歳だっけ?」
「は、はい! 金守弘幸17歳! 趣味はアクセサリー作りとアニメ鑑賞です!!」
立ち上がり直立で応える金守君、ガチガチに緊張してるのが微笑ましくもある。
「ふーん……あにめかんしょう? ってのがわからないけどアナタ職人なんだ……」
値踏みをするように、じっくりと見るロップルさん、そしてしばらく悩んだ後口を開く。
「アナタ、私の姿に嫌悪感は?」
「無いです! むしろ好みです!!」
「ふむ……それで、ここにある宝飾品はアナタが作ったの?」
「えっと……僕と祖父と父です」
「アナタの作った一番の奴を見せて」
「はい! 持ってきます!!」
鍵を持ってわたわたと取りに行く、その背を見ながらロップルさんに声をかける。
「どう? 悪くないとは思うんだけど……」
「うーん……正直60点くらいの男性ですね」
「手厳しいなぁ……」
「そうですか? 私的にはユウキさんが80点の男性なんでそれを超えないと」
「俺ってそんなに高得点なんだ……」
好みじゃ無いと言われてたので4~50点くらいだと思ってたけど……。
「ですね~お金持ちだし、顔は良いし。私の事嫌そうな顔で見ないし」
「まぁ、友達に嫌な顔はしないよ」
「まず、その時点で得点高いんですよ、どうしても兎獣人は避けられがちというか……」
「でも、割とモテて無かったっけ?」
なんか過去の時代でも言い寄られてたと思うんだけど……。
「あーあれは、私自身の頑張りと。後はいわいる度胸試しみたいなものです。兎獣人を嫁にすれば己の強さが示されるとか……」
「え? ちょっと待って。どういうことなの?」
「あれ? 知らなかったんです? 兎獣人ってかなり強いんですよ」
ポケットから鉄の板を取りだして、親指と人差し指を使い器用に折り畳んでいく。
「マジか……」
「そうじゃなきゃ、伝令役で派遣されないですよ!まぁ私が宝飾品の加工が得意なのは、力もあるからなんですけど、もう一つ兎獣人は『戦争兎』と呼ばれているんです」
「ウォーパル?……ヴォーパルじゃないのか……」
「その呼び名は昔呼ばれていたそうです。色々な戦場で戦い手柄を立てたからだそうです。とは言っても、そんな事私には関係無いんですけどね……」
そう言って寂しそうに笑ったタイミングで金守君が戻って来た。
作者です。
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