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第108話:優羽とクロコとリリアーナ

アミリアさんに送られ訓練場を出た私とレナちゃんとシアさん、少し歩くとシアさんが足を止めた。


「そういえば、もう一人紹介し忘れていたね。クロコ、出て来て」


「はい」


「わぁ!?」


足元の床から女の子が飛び出してきた……。


「わわっ! すみません!」


「びっくりしました……」


「ユワ様、こちらは僕の部下で護衛の任に就かせているクロコでございます、年齢はお二人に近いので仲良く出来るかと」


シアさんに紹介されたクロコちゃんは吸い込まれそうな黒い瞳に藍色の髪が目立つ、ぱっと見暗い印象をだけど目が輝いている。


「はい! クロコと申します! 夜魔やまという種族で、魔族領の孤児院に居た際にセレーネおねーちゃん達に勧誘されて諜報と護衛を任されています!」


凄く明るい子だ……見た目と真反対な笑顔に押される私。


「基本的には僕が見れない時に護衛として影に潜んでおりますので、何かあれば名を呼んで下さい」


「影? 影って、この?」


自分の足元にある黒いのを指差す、するとシアさんが頷く。


「はい、確か『百聞は一見に如かず』と言うそうですね、大丈夫ですので体験してみて下さい」


「え?」


その瞬間クロコちゃんに手を握られたかと思うと、私達の身体がずぶずぶと沈んでいく。


「えっえっえっ!?」


「大丈夫ですよ、健康に害などはありませんので」


「わぁ~」


そして完全に沈むと視界が黒一色に染まる、唯一感じるのはクロコちゃんと繋いだ手の熱だけだ。


「ユワ様、上を見て下さい」


クロコちゃんの声に上を向くと、ぽっかりと穴が空いていて先程の廊下が見えた。


それからもう一度、自分の手を見て見る。そこには真っ暗な空間があるだけだった。


「クロコ、一旦出ましょうか」


「はい!」


まばたきをしたらさっき見えた廊下に居た、どういうことだろう?


「ご主人様が言うには空間魔法の一種で独自の空間に一時的に転移をしているとの事です。もしくはクロコの体内にある空間だそうです」


「そうなんですね……」


「私もよくわかりませんが! 皆さんのお役に立てるのでやりがいがあるのです!」


楽しそうに笑うクロコちゃん、そこには夜魔というものとは真反対の真昼の太陽の様な明るさがあった。


◇◆◇◆

「ユワお姉様! こちらへ!」


クロコちゃんとの自己紹介が終わって再び庭園を目指す私達、そして近くなった所でレナちゃんが私の手をぐいぐいと引いて廊下を進む。


「レナちゃん! 少しゆっくり走って!」


レナちゃんがにっかりと笑う。


「ごめんなさい、つい楽しくて!」


私の言葉に気を悪くしたわけでもなく、ただただ嬉しそうに謝って来る。


「二人共、気をつけて下さいね~」


「は、はい!」


「は~い!」


そうしていくつかの角を曲がり手を引かれて行った先に、日傘を持った凄く綺麗な金髪の女性が居た。


「リリアーナお姉様!」


「レナと……貴女が優希様から聞いていたユワちゃんね、どうしたのですか?」


「お食事会の準備が出来たとの事です」


「はい、お父さんから呼んで来てと言われました」


「そうなのね、でも先に優羽ちゃんと自己紹介を交わさないといけないわ」


にっこりと笑うリリアーナさん、本当に美しい人でまるで触ったら崩れてしまいそうな感じがする。


わたくしは、リリアーナ・ノーブルブラッディと言いますわ、これでも魔王様である優希様の妻である魔王妃を拝命しているわ」


「魔王? お父さんが? えっえっ!?」


魔王って悪い人だよね? あの、お父さんが?


「あらあら、すみませんね。魔王と言っても魔族領の王様ってだけで、古の文献やお話にあるような悪い人とは違いますよ」


「そうですね、ご主人様は沢山の魔族だけでなく種族問わず救っておりますので超絶良い人ですね」


「そうなのですか?」


「はい、私の命も救って貰いましたし」


「僕の命もだねぇ~」


「私とお姉さまの命もですっ!」


リリアーナさんにシアさん、それにアミリアさんとレナちゃんもらしい。


「私もです……お父様らしいですね」


「はい、優希様らしいです」


「そうだねぇ~」


「流石ですお義兄さま!」


――ガラーンガラーン!


その時お城の鐘が鳴った。


「あら、少しゆっくりし過ぎましたわね、クロコちゃんいらっしゃいますか?」


「はい、リリアーナ様」


クロコちゃんがスッと影から出て来る、二度目はびっくりしなかった。


「クロコちゃん、レナちゃんは準備があるでしょう、先に戻っていいわよ、シアお願いするわね」


「えぇ~」


「かしこまりました、クロコお願いします」


「はい!」


そう言って三人がぱっと影の中に消えて行った。


「それじゃ、私達は一緒に行きましょうか」


そう言うとリリアーナさんが私の手を握る、見た目とは裏腹な凄く温かい手だ。


「行きましょうか優羽さん」


「は、はい!」


「そうそう、一つ言い忘れてましたね。私実は吸血鬼ですの」


そう言って笑った顔に鋭い牙が見えた。


「へっ!? きゅう……けつ……き……?」


吸血鬼ってあの……血を吸う怪物?


「えぇ、血を飲んで生きる魔族の吸血鬼よ」


赤い瞳が私を捉える、背筋に冷たいものが流れる。


「じゃ、じゃあ……私の血を飲むんですか……」


「さて……それはどうで……あいたっ」


「こら、何を言ってるのさリリアーナ」


さっきまでの雰囲気から一転、空いた手で頭を押さえているリリアーナさん。


「はえ? お父さん?」


いつの間にか来ていたお父さんがリリアーナさんの頭にチョップを入れていた。


「ただの吸血鬼ジョークですのに……」


「いやいや、優羽は吸血鬼の事知らないんだから驚かしちゃ駄目だよ」


「はぁい……」


そう言って私の目線に合わせてくるリリアーナさん、先程の壊れそうな雰囲気から一転親しみやすそうな顔をしている。


「優羽ちゃん、先に説明させて貰うわね、吸血鬼が血を飲むというのは本当なの。でも、その飲む人は生涯に一人だけ人生の伴侶になる人……つまり旦那様だけなの。だから優羽ちゃんの血は飲まないから大丈夫よ」


「それと、リリアーナは俺の血以外は受け付けない体でね。他の人の血を不味いと感じるんだ」


「そうなんです! 優希様の血が至高過ぎて他の血はもう飲めたものではありませんので!」


立ち上がったリリアーナさんが力強く言う、まだわからないけどお父さんもそう言ってるし大丈夫かな?


「だから、これからよろしくね優羽ちゃん」


両手を広げるリリアーナさんに、いつの間にか抱きしめられたいた。


作者です。


本日も読んでいただきありがとうございます!

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