第107話:レナと優羽
ノックに応えると王城メイドの1人が入って来た、リリアーナの助けたマリティニアさんというダリアール侯爵家の奥様が、人手が足りない王城のメイドとして派遣してくれたのだ。
「アレウス様より言伝です、そろそろ準備が出来そうとの事です」
「かしこまりましタ」
「では、失礼いたします」
ぺこりと一礼して出ていく、相変わらず業務中のポーカーフェイスが凄い人だな……。
「さて、そろそろ昼食会の時間だけど……アミリア達とノクタールさんを呼びに行ったリリアーナは?」
皆が着替えに動いてる中、近くに居たシアにアミリア達の居場所を聞く。
「えっと……アミリア様は多分訓練場でリリアーナ様は庭園じゃないかな? ノクタール様はもう既に来てて湯あみに行ってるはず」
「そっか、ありがとうレティシア、そういえばクロコとレナちゃんは?」
「アミリア様と一緒に居るよ、クロコは護衛についてもらってる」
「そっか、ありがとう……巴ちゃんは?」
「巴さんハ、アレウス様との商談中ですネ。どうやら裏の湖を水質調査をしていたら砂金が出たとかデ……」
「え? そんなの出たの?」
「はイ、それで文献等を調べたら千年くらい前に邪神の封印に使っていた鉱山だったそうデ」
「おいおい、その水を湖に引き込んでたのか……」
「らしいでス」
「だから僕が地下牢に閉じ込められてる時、あんな簡単に洗脳されてたのか……」
「それもあると思うのですガ、バルダーンの書斎を調べていた際に洗脳薬を見つけましタ」
瓶に入った粉を見せる、少し茶色いが何だろう……。
「コカインでス、精製は甘いので色が付いておりますがのこの程度のモノであれば取引で何度も見て来たのでわかりまス」
「まじか……」
そう答えたタイミングで優羽が手を握って来た、顔を引きつらせ視線はあの瓶に向いている。
「優羽、見なくて良いから……」
少し強引だがこちらに向けさせ視線を無理矢理外す、背中をさすっていると落ち着いて来た様だ。
「すみません優羽ちゃン。アレウス様に聞いた所、元は医療品として使っていたのですガ、違法な使い方が流行った事から自身が王になる前に廃止したみたいでス」
「その処分品を掠め取って使っていたんだな……」
「みたいですネ、それか元々嗜好品として使っていたカ……ですネ」
「何にしても処分しよう、日本には持ち帰れないし」
「そうですネ、ただ室内で燃やすのは不味いですからどこか問題無さそうな所で処分をお願いできますカ?」
「そうだな……ちょっと行ってくるよ、毒とかの薬物耐性もあるし」
「ありがとうございまス」
「それじゃあ優羽、俺は少し野暮用を澄ましてくる。丁度良いしレティシアと一緒にアミリア達と挨拶をしてきてくれ」
「はい……わかりました……」
「そうそう、アミリアの妹のレナちゃんは優羽と同じくらいの歳だから多分仲良くなれると思うよ」
そう言って頭を撫でてから俺は窓から飛び降りた。
◇◆◇◆
先程の話をしてから20分後、魔装を使って全力で飛んで来たここは王都から見える高く険しい岩山の中腹だ。
「民家無し・動物無し、それじゃあ……」
瓶を取りだし木箱に封じ込める。
「これで良し『我は求める、竜の息吹きを、恒星の熱を、全て燃やし尽くし灰燼と成れ――紅炎旋!』」
目の前に出した火の渦を作り収束する、それに投げ込み燃えるのを待つ。
「やったは良いけど、暑いな……」
風魔法で涼しい風を体に送りつつ溶かしていく、魔力をコントロールしながら距離を取って火力を増す。
そして全て消え去った所で仕事終了だ。
「さて……戻りますか……」
メアリーの所に転移しながら優羽は仲良くなれたのかなと少し心配だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇優羽side◇
お父さんが出て行ってから、私はシアさんと共に訓練場を訪れていた。
「お、居た居た。レナ様ぁ~」
シアさんが手を振る相手は、綺麗な赤色の髪を持った私から見ても愛らしい女の子だ。
「あっ、シア! それと、どちら様でしょうか?」
映画でお姫様がしていたお辞儀と同じポーズをする女の子、お姫様みたいだ。
「こちらはご主人様のご息女でカミナギ ユワ様です」
「ど、どうも。上凪 優羽です」
「私はレナ・フィルレイシアです! レナと呼んで下さいまし!」
「は、はいっ……レナ様……」
レナ様の凄さに驚いているとレナ様が頬を膨らませる。
「むぅ……さまつけないで下さいまし」
「えっ……でも……」
「それに、ユワお義姉さまは私よりお年が上とユウキお義兄さまより聞いています」
「おねえさま!?」
「そうです! 私のお義姉さまです!」
ひまわり様な笑顔でいうレナ様……レナちゃん。
「あはは~ごめんねぇ……レナは友達が少なくて楽しいのよ」
いつの間にか私達の近くに立っていたお母さん達と同じくらいの歳の赤髪の少女が手を差し出してくる。
「ユワって言うのね。私はアミリア・フィルレイシア、よろしくユワ!」
その姿はとてもカッコよく、彼女が携えた剣も陽光に煌めいてより一層の美しさを引き立てる、その様はエアリスさんと良く似通っている。
「はい、アミリア様」
「えぇ……一応ユウキのお嫁さんだからあなたのお義母さんになるのだけど……そんなに畏まらないで欲しいわ」
「そ、それじゃあ……アミリアさん?」
「そうね、まずはそれからで良いわ」
私の頭を撫でて来るアミリアさん、その笑顔はレナちゃんとそっくりだ。
「アミリア様、そろそろお時間ですので」
「そうなの?」
「えぇ、ユワ様はリリアーナ様も呼びに行く予定ですので」
「そっかーじゃあまた後でね」
「はい、失礼します」
私が頭を下げると、少し困惑した様な顔をして送り出してくれた。
作者です。
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