第104話:やってやった……
◇アミリアside◇
「はぁぁぁぁ!!」
「ベぎゅルうばッババば!?」
下からの斜め斬りで邪神を斬りつける、切り落とされた腕がお母様に変わる。
「ナじゃえ!? なジェカてにゅノだ!!」
バルダーンが叫ぶ、攻撃は全て二人に潰され再生も無くなり、お母様は先程分離した……残るはお父様とバルダーンの分離のみだ。
「そりゃ、アンタのもってる剣。優希の神力がふんだんに織り込まれてるからよ」
「そ、そんな!?」
「そして、こちらの剣も元は優希様が打った剣ですわ」
「なんだと!?」
耀さんとエアリスさんに言われ驚いた顔をしているバルダーン。
絶対的に優位だったはずの余裕は消え失せ、最早醜く歯ぎしりをしているだけだ。
「だがワシには、まだアレウスが居る!」
「アミ……リア……」
虚ろな目が私を射抜く、後ずさりそうな足を前へと踏み出す。
「お父様!」
「アミリアちゃん! 援護するわ、踏み出して!」
私の踏み出しに大して返す様に振る剣、目の前が一瞬遮られ気付けば邪神の背後に立っていた。
「アミリアさん! 魔力を解き放って!」
エアリスさんの声に、私は全開放した魔力を乗せ渾身の技を放つ!
「わかりました!! 『空喰ぃ!』」
その瞬間城の壁ごと貫き空の上に舞う中、私の剣は邪神の核を貫いていた……。
「グゾぉ!! 動ゲ!ごろゼ! あレヴスぅゥゥゥぅぅゥ!!!」
「ぐがぁぁぁぁぁ!!」
お父様が暴れる、魔力を全部込めた私の手から剣が離れる。落ちていくお父様の身体にひびが入りバルダーンと分断していく。
「戻レ! ヴぉどべえェェえェぇぇぇぇ!!」
(やってやった……)
思わず笑みがこぼれる……。
そして落ち行く身体が、ふわりと浮く。
「よくやったな、アミリア」
逆光で良く見えないがその顔は今、一番見たい顔だった。
「ありがとう……ユウキ……」
身体の力が抜けていく……。
ここちよい微睡に……。
身を任せよう……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇優希side◇
耀によって強制的に呼び出された俺は混乱しつつも「つべこべ言わず受け止めなさい!」と耀の指差した先に居るアミリアの元へ転移する。
落ちていくアミリアを受け止めながら風魔法を使って宙に浮く。
「よくやったな、アミリア」
そう声を掛けると、アミリアは大輪の花が咲いたように笑った。
「ありがとう……ユウキ……」
力が抜けた身体を持ち直し、耀達の元へ。
「さっすが王子様……いや魔王様かな?」
「うっ……その呼称は実は慣れてないんだよ……」
「ですが、とてもノリノリで魔王様を演じておりましたよね?」
耀とエアリスがニヤニヤ顔で突《》いてくる。
「ちょ! やめて! 恥ずかしい!!」
二人からの攻撃を回避しているとアミリアのお母さんが呻き声を上げ目を覚ました。
「うぅ……ここは……、私は死んだはずじゃ……」
「エアリス、頼めるか?」
「任せて下さいまし」
「それと耀、アミリアを頼む」
「任せなさい」
アミリアを預け俺はバルダーンの元へ向かう。
城の前にある広場へ降り立つ、アレウスさんとの分離は成功し、半分になった体で銅像の剣に刺さっている。
「うググ……貴様ラぁ……絶対にゴロしテヤる……」
「もう二度目はねーよ、お前のせいでこの世界は滅茶苦茶になった。それに邪神に汚染された魂は消滅するんだ、諦めろ」
「ゾンなぁ……アノお方ハ……!!」
「あのお方?」
「ヴついハだおぃジダィんわウェでゅフぇえッセおじャヴぁぁぁぁぁぁ!?」
突如暴れ出し、触手が伸びる。
「くそっ!」
跳び退きアレウスさんの持っていた剣を拾い構える。
「理映! 今のは!?」
理映を呼ぶとすぐさま声が聞こえる。
「大丈夫! 調べは付いてるから!」
「そうか! なら遠慮はいらないな!」
触手を斬り払い剣を投げる、今度こそバルダーン側の核を両断し消滅させた。
「お疲れ様、ありがとう優希君」
「あぁ、大丈夫。それでアイツの言ってたあの方ってのは?」
「それは、落ち着いたら話すよ。危険性も無いし、特に急ぐ事じゃ無いしね」
「大丈夫なら良いけど……」
「大神様も太鼓判を押してるしね!」
「そっか……それなら大丈夫なの……かな?」
疑問に思いながら剣を空間収納にしまい、アレウスさんの元へ行く。
「うん、息はあるし。後は目を覚ますだけかな?」
毛布を出して身体を包む、背中に括りつけて耀達の元へ跳んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日、俺と耀が酷い有様になった王都に入る。
「しかし、耀が時空間魔法が使える様になるなんてな……」
「うん、私もびっくりしたんだけど。元々適性があったんだって」
「確かに、耀の『虹の天球儀』は空間から空間に飛ばして攻撃してたもんな。」
ハーメルン事件の時を思い出す、あれは見た目も綺麗だったな。
「それでね、私の力が優希にも影響をもたらして、優希の空間収納や『転移』が使える様になったたらしいのよ」
「へぇ~そうなんだ……あれ? でもそれだと耀のが先に空間収納とか使えて無いと駄目じゃない?」
「そこは〝練度〟らしいわよ、」
「練度?」
「そう、優希の方が魔法に触れてた時期が長かったし、魔法ならこれが出来るっていうのがわかってたから優希のが早くに使える様になったんだって」
「へぇ~ってどうした?」
突然耀の足が止まる、顔を赤らめてくちごもる。
「あー後ね……今までは優希におんぶにだっこだったじゃん、こうして世界が離れる事になって、優希の事で心細くなったから覚醒が進んだんだって……」
「そういう事か……ゴメンな心配させて」
耀の元に寄って手を繋ぐ、そして二人で歩き出す。
「良いの、優希は凄い存在だし、これからも色んな世界で戦うかもしれないって言ってたし。それに付いて行きたいってのは私の願いだもん」
「そっか、そう思ってくれてすっごく嬉しい」
手を握る力が強くなる、抱きしめたくなるけど今日中に街の復旧を終わらせたいので我慢する。
「どうしたの優希? そんなニヤニヤして」
「いやー俺って幸せ者だなぁ~と思い返してた」
「そう、私もそう思ってもらえて幸せよ」
それからゆっくりと歩きながら、時間を埋める様に沢山の話をしたのだった。
作者です。
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