第101話:セレーネと双子天使
◇セレーネside◇
「くうぅ……敵が多い……」
あれから戦線を維持して戦っているが、敵の出現する数のが多く時間を追うごとに増えている。
「敵の再生さえなければもう少し楽なんだけどね……」
先程の大型ほどの回復力では無いが一般の兵に倒された敵はしばらくしたら立ち上がり向かって来るのだ。
『でも、さっきみたいな大型の敵が出てこないだけ幸いね』
「そうですね……」
私もバリケードの外に飛び出して間引いているがかなり押されている
「姐さん! 水でっせ」
補給兵が水筒を差し出してくる、その間に軽く食事もとる。
「もごもご……」
『セレーネちゃん、食べてから話しなさい……』
「んくっつ……うん」
『それで、何を言ってたの?』
「全体の避難状況を聞きたくて」
「はい、そうですね。俺が通って来た時は残り3割ほどでした!」
「3割……確認してきてもらえる?」
「はい! わかりました!!」
そう言って走り出していく、その内に私は身体を休める。
「ふぅ……」
『戦線によってはそろそろ下がらないとね……』
「そうですね……これ以上は限界だし……」
所々壊れたバリケードを見る、押し戻された分も含めるとそろそろ限界だろう……。
『少し目を閉じてなさい……伝令が戻るまで少しかかるでしょうし』
「そうですね……何かあったら起こしてください……」
◇◆◇◆
「姐さーん!!」
「っつ!?」
突然響いた伝令の声に私はすぐ起きる、見ると馬が貰えたのだろう馬に乗って来た。
「お待たせしました!」
「ありがとう、助かるわ」
そろそろ戦線を下げるべきか……リリアーナ様達はもう脱出したかな?
「避難はどのくらいですか!?」
「後1割でっせ姐さん!!」
その声に皆が沸き立つ、皆も疲れているのだろうけど顔に光が差している。
「わかった! 頑張るよ皆!!」
「「「「「おう!」」」」」
皆から気合が入った返しが来た直後……。
「ぐわぁ!?」
「ぎゃあ!?」
遂に戦線の一部が完全に崩れた。
「姐さん!! バリケードが!!」
『不味いわね……』
「私が向かいます!!」
崩壊した戦線へ向かおうと飛び出す、その瞬間視界に飛び込んで来る影が……。
「セレーネ殿!!」
『セレーネ!!』
隊長さんとマーレルさんの声が響く。
(ダメだ……この体勢じゃ避けれない……)
私に至る衝撃を防ぐ為身構える。
「させない!」
「させません!!」
聞き馴染みのある声と轟音が響き、私の身体へ届く攻撃が砕かれる。
「大丈夫でしたか!? セレーネさん!」
「大丈夫だった!? セレーネおねーさん!」
硬くした瞼から力を抜き声の方向を向くと、ぱっと見戦場に似つかわしくないピンクと空の色をしたドレスを纏った見知った顔の双子の天使が舞い降りる。
「二人共……その服は?」
「舞踏会があるって聞いたからね!」
「えぇ、ですので優希さんに見せようと!」
「えっ? えっ?」
舞踏会? 何の事!?
「ハルカさんトウカさん、舞踏会はやってないですよ?」
私がそう言うと二人共可愛らしい笑顔を見せる。
「いいえ、間違いないです」「いーや間違いないよ」
「「だって……」」
ハルカさんが私の右腕にリングを着ける、その瞬間私の服がドレスに変わる。
「「ここが会場ですから(だから)!!」」
その瞬間音楽が鳴り出した。
◇◆◇◆
「凄い……本当にダンスの様……」
飛び出したハルカさんは次々と持っている大鎌で敵を裂いて行く。
「いや……強すぎるでしょ……」
『あの子……何なの?』
「えっと……私の師匠みたいなものです……」
『あなたの師匠ってヤバいのね……』
――ドカーン! ——バコーン!
「はるかーずるい!! 私にも!!」
その声と轟音が聞こえて来る、放たれた矢が恐ろしい威力であるというかあの矢はなんなの!?
『あの子は?』
「うーんと、私の二人目の師匠みたいなもの……」
『凄いわねぇ……』
「うん……」
そして曲が終わる頃、次々現れた敵を片っ端から倒していき、あっという間に掃討してしまった。
「なんなんだあの子達……」
「強すぎるだろ……」
「本当に天使じゃないのか?」
そして倒し終わった二人が歩いてくる。
「ふ、二人共お疲れ……」
「つ~か~れ~たぁ~ここあついしぃ~」
「はい! それでセレーネさんはお怪我とかは大丈夫でしょうか?」
「う、うん。私は全然大丈夫……」
「それじゃあ! 帰ろうか!」
トウカちゃんが溌剌と答える。
「え? で、でも皆の援護に……」
「あーそれは大丈夫……」
「え? それって?」
そういった瞬間貴族街の方で大きな破壊音が鳴った。
「!?」
「あちらにも援軍は向かっていますから大丈夫です」
「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ王城に!」
またまた激しい破壊音がして王城の一部が吹き飛んだ。
「えぇぇ……」
「あっちは耀さんとエアリスさんが行ってますので大丈夫ですよ」
「耀さんとエアリスさんが……」
あの二人が行っているのであれば何も問題は無いだろう……。
「そう! だから皆帰って休もー!」
そう言って腕を引かれる。
「あ……でもまだ避難の人達が……」
「それも大丈夫です!」
ハルカさんがそう言うと伝令の兵士が慌てて飛んで来た。
「姐さーん! 避難完了しましたあ!!」
「へ? まさか?」
「はい! 里菜さんと鈴香さん達が居ますので大丈夫です!」
「えっと……リナさんとリンカさんいうのは?」
「優希おにーさんのお嫁さんだよー」
「そ、そうなんだ……」
聞いてはいたけどユウキさんのお嫁さん多いなー。
『うむうむ、セレーネちゃん。頑張らないと他の奥さんに負けちゃうわよ?』
「うぐっ……私も今そう感じてた所です……」
「大丈夫ですよ、セレーネさん。優希さんは優しいので!」
「何だかんだで女の子に甘いしねぇ~」
そう言って笑うトウカさん。
「確かに、それはありますね」
私もつられて笑う、すると途端に力が抜けて来た。
「大丈夫ですか!?」
ハルカちゃんに支えられて、なんとか立てる位だ。
『ありゃりゃー流石に限界っぽいね~』
「そうみたいですね、私が背負いますので。背中にどうぞ」
そうして、するっと私よりも小さい身体のハルカさんに背負われる。
「それじゃあ冬華お願いね」
「はーい、じゃあ私は警戒に回るね」
二人の話し声に癒され、揺られる背中で私の瞼が落ちて行った。
作者です。
セレーネの元へは小鳥遊姉妹でした!!
ちなみに冬華の矢はメアリーの魔力(神力)が込められた弾丸を利用した鏃なので当たったら邪神はしめやかに爆発四散します。
本日も読んでいただきありがとうございます!
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