第100話:アミリアと光射す戦場
◇アミリアside◇
「アミ……リア……」
痛みを堪え立ち上がる、確かに記憶の中にある顔と全く同じだ。
「どうして! どうしてお父様が!!」
「フフフ……ハヒャヒャヒャ!!! そうだ! お前の父親だよ!!」
その言葉に私の頭が殴られたような衝撃を受ける、いや……実際に殴られ宙を舞っていた。
「キャシャハハハ!! 教えてやるよ! ワシがなノコノコ城のに来たこの男を薬で支配下に置いたのだ!! ワシが聖剣を握るという完璧な計画の為に!!」
バルダーンは台座から岩に刺さった聖剣を抜く、そして私へと飛び掛かかってきた。
「んなぁ!? 何で聖剣が!!」
「ハハハハ!! この体は半分お前の父親だそれにお前の母親の身体とワシとの子供も喰らっている! 殆ど王家の者と同等だ!!」
「そんな!? お母様? それに子供!?」
「あぁ……知らなかったか? 先程お前が切り捨てた手はワシとお前の母親の子供だ!」
振り下ろされた剣を受け止める、打ち合った古い聖剣にひびが入る。
「クソッ! おんぼろじゃこんなもんか!」
そう言って剣を投げつけて来る、速い!?
――――バキバキバキィィィィィィン!!
古い聖剣と新しい聖剣がぶつかり古い聖剣が半分砕ける。
散った破片を防ぐ為に顔を覆うが両手足に触手が巻き付いた。
「ははは!! 捕まえたぞ!!」
両手足が拘束されギリギリと締め付けられる。
「ぐぎっ……がぁぁぁぁぁ!!」
「おうおう、良い悲鳴だ、お前の母親もワシに犯されている間そのような声だったのう……」
その言葉と痛みと怒りで頭がごちゃごちゃになる……。
――ブツンッ!
頭の中で何かがきれたおとがした……。
「フン! これでも剣は取り落とさんか……しかたないっ!!」
――バキンッ!
おなかにこうげきされる……でも、そこまでいたくない……。
「クソ!! なんだその鎧は!!」
おとうさまのかおがゆれる……。
「クソクソックソクソクソクソクソがぁ!!!」
なにかがわれるおとがした……からだがいたい……。
「ごはぁっっ!?」
「フハハハハハ!! 守りは破った!! このまま貴様の聖剣を奪ってやる!!」
痛みで意識が戻った……気付いたら私の鎧は半壊し、腹部には大きな痣が出来ていいた。
「はぁ……はぁ……がはぁ……」
胃の中身をひっくり返した、口の中の気持ち悪さで今自分が吐いたのだとわかった。
「フン!汚らしいなぁ……まぁ良いどうせ貴様は四肢を捥ぎ取りワシが直々の子を産ます道具にするだけだからな!」
「ふざ……けんな!」
「んなぁ!?」
剣を取り怒り任せに跳び上がる魔力を込め薙ぎ払いをして、あと一歩の距離まで詰める。
「どこにそんな力が!! えぇい!!」
「これで終わりだぁ!!!」
完全に不意を突いた一撃、これなら。
「アミリア!」
お父様の声と顔に一瞬剣が鈍る、それがいけなかった……。
視界が変転し強力な一撃で壁に叩き付けられる、その瞬間変な音がして痛みと身体の感覚が消える。
「お父様……」
「ふふふ、はははは!! 勝った!! 聖剣は砕け、娘は捕らえた! よくやったアレウス!!」
「ああ……アミ……アミ……」
お父様が私に手を伸ばす、よく見ると泣いている様にも見える。
「ゴメンね、お父様……。私、お父様を斬れる訳が無いよ……」
ユウキから貰った剣も手から離れ、支えにしていた心も折れた……。
ゆっくりと近づいてくる二人を元にした邪神……その手には大切な宝物が鈍く光を纏っている。
「ごめん……ユウキ……」
勝てなかった……悔しい……。
約束守れなかった……悔しい……。
でも……。
ユウキに暗い顔をさせちゃう……これが一番悔しい!!
「でももう……身体が動かないや……」
「ぎゃはははは! その偽物を殺せぇ!!!」
命令により振り下ろされる、聖剣ユウキの剣で死ねるなら……良かったかな……。
ぎゅっと目を瞑るがその時はいつまでも来なかった。
恐る恐る目を開けると、目の前には黒天の闇と満点の星を散りばめた輝きの髪と、闇を纏ったかのような服を着た女性が居た。
「だ、だれ?」
「全く……忘れちゃうなんてひどいなぁ……」
振り返ると夢の中で幾度となく話した彼女がそこに居た。
「ヒカリさん?」
「せいか~い♪」
「どう……して……?」
私が疑問を口にすると、ニコッと笑い答える。
「そりゃアミリアちゃんを助けに来たんだよ!」
「『私の前で傷付きし者、私の力をもって癒やせ!その力はすべての傷を直し給え——パーフェクトヒール』」
私の身体が光に包まれ傷が癒える、手足に血が満ちて行き熱を取り戻す。
「全く……私の事忘れないで下さいね」
「エアリスさん……でもどうして……」
「優希が手一杯みたいでね~助けに来たのさ!」
「ユウキは大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。でも強制的に引き起こされたスタンピードを止めてるから時間かかるみたいなのよっと『——復元』! よし、出来た!」
ユウキの使う復元の魔法、それを使ったヒカリさんによって、先程砕けた聖剣が再生する。
「すごい……」
「私のは物しか治せないけどね。さぁ! さっさとアミリアちゃんのご両親救うわよ!」
「え? 出来るんですか?!」
私の疑問に、エアリスさんが答える。
「えぇ、あの聖剣はユウキ様の力がたくさん入っております、振れば振るだけその神力で邪神との分離は進むと言ってましたわ」
「だから! 私が道を切り開く! アミリアちゃんはお父さんの中にある核をぶった斬って!」
ヒカリさんの声によって力が戻って来る、今まで狭かった視界が一気に開けた。
「はい! 任せて下さい!」
「行くわよ! 『——天刻の虹星儀』!」
ヒカリさんがそう言うと彼女の周りに星の煌めきが現れる、そして楽団の指揮者の様に腕を振ると邪神が崩れていく。
「ぐぎぃぃぃぃぃ!!」
いつ攻撃されたかもわからない邪神は驚きと混乱の呻き声を上げる。
作者です。
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