第98話:王都制圧戦⑥
「ピぎゅうワあぁァあ亜ぁぁぁあ!!」
中々に捕まえられない俺に対して焦れた様に触手を伸ばす。
「当たらないよっと!! しかし、2時間は長いなぁ……」
回避をしながら触手を切り落とし着地をする。
「しかも攻撃しても攻撃しても再生するし……」
ダンジョンと一体化してるのかわからないけどひたすらに再生速度が速い。
「これだと全力で攻撃しても核まで到達出来ないよな……」
恐らくそれも含めて調査してるんだろう……。
「とは言っても帰る条件の他の勇者との邪神討伐って、これで大丈夫なのかな?」
『大丈夫だよ~』
「理恵!?」
『うん、大体8割くらいわかったから情報の共有をしようと思ったんだ』
「そうなのか? って俺が聞いてわかるのか?」
『うん、わかるように説明するから』
「そうか、頼む」
「ぐギュるルルルわぁぁァ!」
「少し黙れ!! 『小鳥遊流魔剣術——風影乱斬』」
風の魔法を纏わせた刀を叩きつけ巨体を吹き飛ばす体積の半分が消し飛ぶが、核は見えない。
「これで少しは大人しくなるだろ……」
『流石優希君……それで、この邪神なんだけど要約すると自然発生じゃない』
「え? でも今回はマリアンが放置し過ぎたからじゃ?」
『うーんとね、実はマリアンの管理するこの世界、以前僕を襲った神の管轄してた世界なんだ』
「でも過去の世界はマリアンが主神として居たよな?」
過去の世界でもマリアンは崇められてたんだけどなぁ……。
『うん、そうなんだけど。管理者が変わったのが優希君が邪神を封印した500年後なんだ』
「????」
『うん、そうなるよね……まぁ一言で言うと〝書き換えた〟んだ、記憶も世界も』
「そうなのか……驚いた……」
『詳しく話すとややこしんだけど、過去に飛ばされた時に優希君と繋がらなかったのはそのせいなんだ。その時はまだ、その世界に神が居ない状態だったんだ』
「うーんと……つまり過去の時代だとどこかのターニングポイントまでは以前理映を襲った神の世界だったのか」
『そうだね、でも優希君が過去に飛ばされた事により、マリアンの存在という楔が挿せたからね、でも邪神自体のエネルギーが多くて封印しか出来なったんだ』
「はえー、そうだったんだな」
『まぁそこら辺は僕よりも高等な神様の仕事だからね、それでその邪神ついてだけど……」
「あぁ、ちょっと待ってくれ……『我が魔力よ神の雷となりて目の前の敵を砕け――雷帝の咆哮!!』」
雷の槍で邪神へ攻撃をする、当たった個所は砕けまたまた体の三分の一が消し飛ぶ。
「よし、これでいいだろう。それでこいつについてか?」
『うん、その邪神なんだけど本来の目的はこの世界の人間を喰らって負のエネルギーとしてとある所に送っていたんだ』
「とある所?」
問いかけると少し気まずそうにする理映。
『うん、えっとね……怒らないで聞いてよ?』
「大丈夫大丈夫、対した事じゃ怒らないから」
『じゃあ言うよ……メアリーちゃんの居た世界』
それを聞いた瞬間、思わず右手を全力で振るってしまった。
「イギゅるテぃチチっちチち!?」
意味不明な断末魔を上げる、危ない危ない思わず核までぶった斬るとこだった。
『あちゃーやっぱり……』
「あぁ、すまん……うっかり倒すとこだった」
『ほらぁ! やっぱり怒ったぁ!!』
「いやいやいや、無意識だったから! 許して!!」
『むぅ……仕方ないなぁ……』
そう言って再度説明を始めるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇アミリアside◇
「はぁぁぁぁ!!『——空喰ぃぃ!!』」
「「「ウゥギャアァァァア!?」」」
邪神の腕を裂き、斬り落とす。中からは城内の兵と思わしき人だったものが流れ出る。
「酷い……」
「はんっ! ワシの栄光の礎になるために死んだんだ!光栄だろう!!」
「最低……」
「ワシは最高だぁぁあ!!」
邪神に半分取り込まれながら吠えるバルダーン、癪だがこの状態は攻めあぐねる鬱陶しさだ。
バルダーン自信を狙っても腕で防がれる、それ故に体を崩して行かないと厳しさがある。
「だったら! 丸裸にするのみ!!」
構えを変える、ユウキが使っていたもう一つの技……。
「くらえ! 『——風切り・重!!』」
「「「「キエェェエエエエエ!!」」」」
魔力を飛ばす二つの斬撃、両腕を切り取られた邪神が悲痛な悲鳴を上げる。
「くぅぅ……嫌な悲鳴ね……」
「くそぅ!! 何故倒せん!!」
「さぁ? アンタが付いてるからじゃない?」
「なんだとぉーーー!!」
軽く煽ったら、暴れ出し始める。まだ付着していない腕の肉片が飛びまき散らされる。
「ヒャあアぁアああア!?」
「いヤぁぁアッワ亜!!」
「——————!!!」
一つ一つが人間なのだろう……その悲鳴に吐き気を催す……。
「本当に……人の心が無いのね……」
「そのような物は不要! 王たるワシには要らぬものじゃ!!」
「そんなことは無い! 王という存在は民や人あってこそ! それを只の使い捨ての道具の様に使うなんて間違ってる!!」
「ふん! そのような戯言! 知った事か!」
残った腕を纏め振り下ろそうとする……チャンス!
「今だ! 『天を喰らえ私の剣——天喰!!』」
魔力を切っ先に集め一点突破を仕掛ける、腕を切り裂き奴の正面に躍り出る。
「————んなぁ!?」
「トドメだぁぁぁ!!」
奴の胸に浮き出た鈍い色の石、あれが核!!
全力で砕くように突きたてる瞬間、腹部に現れた顔がニヤリと笑った。
「……アミ……リア……」
私はその顔を見た瞬間剣が止まる、それから全身を襲う痛みによって私は吹き飛ばされたのだと気が付いた……。
「なんで……お父様……」
奴の胸に浮き出た顔はお父様そのものだった……。