第94話:王都制圧戦②
◇リティシアside◇
戦闘に向かった皆さんとは違い、僕は後方支援の任に就いていた。
「助かりますシアさん女性は私の近衛だけでしたので……」
「いえ、ナタリア様。避難民には女性が居るのは当然ですからね僕も出来るだけお手伝いしたいですから」
そう言って住民用の傷薬を作成しているとナタリア様の近衛の1人が駆けこんで来た。
「ナタリア様! 新しい避難民の集団です!」
「今回はどこの区画ですか?」
「32番です!」
「わかりました、ひとまず家族ごとに分けて集まらせて下さい、怪我をしている者は手当てを頼みます、重傷者は天幕の中へ」
「はい!」
そう言って駆け出して行く。
「ふぅ……想像より怪我人の数が多いですわね……総区画の半分ですが、増え続けますね」
「はい、手持ちの薬草も足りるか……」
痛み止めや止血薬をずっと作成しているが出ていく数のが多い、これだと残っている材料じゃ足りないかもしれない……。
「失礼します……」
その時身なりの良い教会職員がやって来た。
「おや、あなたは……確かレナス様では?」
「レナス……大司教様!?」
「シア様がこちらにおられと聞きまして……」
「どうしましたか? っとその前に、食事の提供ありがとうございます。教会も被害は少なくないというのに……」
「いえいえ、優希様より承っております重要な仕事ですので」
お互いぺこぺことしてしまう。
「それで、何か問題でも起きましたでしょうか?」
「いえ、市民用の薬を調合されてるのがこちらだと伺いまして」
「えぇ、とはいっても数が、あとどのくらい用意できるか……」
「それでしたら、教会と冒険者ギルドに貯蔵があります、ですが……」
レナス様が王都の方を見る、教会も冒険者ギルドも敵まみれだろう。
「い、行きます!」
僕の影から声が響く、直後クロコが影から飛び出してきた。
「わ、私ならこうやって影から取って来れます!」
影に物をしまい込むクロコ、だけど……。
「クロコの能力じゃ限界があるでしょ、僕も行く」
ご主人様に救って貰った、ご主人様が頼ってくれた、
「シアおねえちゃん!」
「材料を取ったらすぐ戻りますよ」
「うん!」
「それでしたら、教会内部の地図を描きますねですが、ギルド内部は……」
「ギルド内部は入ったことあるし、任せて」
「「え?」」
「え、えっと! 以前ご主人様と調査に来た時に行ったので!!」
「そうでしたか」
「シアさん、頼みました……」
「任せて下さい!」
危ない危ない……。
「それじゃあ準備してまいりますね」
僕は皆から離れ装備の置いてある天幕へ戻った。
◇◆◇◆
「さてクロコ、作戦の復唱を」
「はい! シアおねえちゃんの陰に潜んでる事、指示に従う事。いつでもおねーさんを助けれる様にする事!」
「よろしい、それじゃあ行こうか……」
クロコが影に沈む、僕も気合を入れる。
「城門前までは私が送ります!」
「ありがとうございます」
馬の後に乗りナタリアさんに掴まる、走り出して避難民の横を駆け抜ける。
「お二方いざという時は逃げて下さいね」
「はい」『はい!』
そうして到着した城門脇の塔から登り城壁の上に立つ。
「感覚を研ぎ澄ませ……あの頃を思い出すんだ……」
心のあるのはご主人様……ユウキ様のあの言葉。
『だからスティシアも過去のスティシアをゆっくりでいいから愛してあげて』
「ありがとうございます……ユウキ様」
私はその言葉と共に城下へ身を翻した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇セレーネside◇
「おーい姐さーん!」
リリアーナ様達を見送った後、簡単なバリケードを構築した私達、そこに馬に乗った兵士がやって来た。
「どうしました?」
「それがぁ、シア様とクロコちゃんがぁ冒険者ギルドと教会に向かったみたいなんですぅ!」
「えぇ!? どうして?」
「どうやらぁ、薬の材料が足りないみたいでぇ……」
「そっか……」
助けに行きたい……でもシアさんの強さは私よりも上にいる……でも……。
(ここの守りを抜けたら……)
まだ完成してないバリケードを見る、リリアーナ様達の退路の確保がまだ終わっていない……。
『セレーネ、セレーネ!』
「えっ?」
『一人で考え込まないの! 私の事忘れちゃった?』
「あっ、ごめんなさい!」
『全く……手伝いに行くんでしょ?』
「で、でも……バリケードが……」
「それ位ならワシがここに居ようじゃないか!」
大きな影が私を覆う、見上げるとバルドル伯爵さんが目の前に近くに居た。
「バルドル伯爵さん?」
「はっはっは! 近隣区画の避難が終わったのでな、見に来たんだ!」
『やだ、ダンディー♪』
「マ、マーレルさん!?」
「ほう、私の魅力を見抜くか……」
何か変な格好でキメ顔をし始めた……。
『でもざーんねん、私は旦那様一筋だから』
「これはこれは手厳しい」
大口開けて笑う二人、いやそんな場合じゃ!
「ちょっと! 二人共!?」
「すまんすまん、忘れていた。さて……セレーネ殿、向かわれるが良い」
「でも……ここの防衛が……」
そう言うと笑いだすバルドル伯爵さん。
「ふっふっふっ……私は魔王軍で何の役職に立っているか?」
「えっと……四天王です……」
「そうだ、私は四天王だ。リリアーナ様達よりは力劣るが、これでも強いのだぞ」
力こぶを作ってみせるバルドル伯爵さん。
『なら、行かないとね!』
「はい! お願いします!!」
「はっはっはっー! 行ってこい!!」
「姐さん頑張れ!」
「ここは任せて下せぇ!」
「ありがとう皆!!」
『屋根伝いで行きましょう! 魔法の補助は私がするわ!』
「お願いします! マーレルさん!」
そう言って、私は階段を作り駆け上がった。
作者です。
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