第91話:お前の悪事はまるっと全部放送中だ!
「では、レノスさんよろしくお願いします」
「はい、かしこまりました。何かあったら場外へ向かいますね」
「えぇ、外には仲間が居るので頼って下さい」
「ありがとうございます、皆もしもの際は逃げ出せる準備を。そこ! 経典は良い、市民に分け与える為の食料を詰めなさい!」
次々と指示を出すレノスさん、教皇らしい貫禄が出て来たなぁ……。
「じゃあ、部屋を借りますね」
「はい! 二階の奥を使って下さい!」
レノスさんに言われ二階の奥部屋に入る、そこでレティアスと入れ替わる。
「レティアス? おーい?」
呼ぶけど中々出てこない、どうしたんだろ?
「クロコ、レティアスは?」
「あーそれが……」
どうやら影から俺とアミリアの事を見ていたらしく、変化が解けてしまったらしい。
「そっか、じゃあ準備が出来たら頼むよ」
「わかりましたで……ござる……」
影の中から声だけ返って来た。
それから5分程で平静さを取り戻したレティアスと入れ替わる、ここからはアミリアの影に潜み護衛に入ることになる。
「そうだ、レティアス」
「どうしました?」
「もし危険になったら逃げだして良いからね」
「はい、わかりました」
「あくまで自分の命が一番だからね」
「ユウキ様……はい!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
城の前に着くと昨日とは違う、上等そうな服を着た兵士が待っていた。
「アミリア・フィルレイシア様、それと魔王様ですね……」
「はい……」
「あぁ……」
「王への案内を任されました、私に付いて来て下さい」
その言葉に頷き付いて行くアミリアとレティアス、道中でレティアスは別の兵に連れられ部屋へ通されていった。
「姫様はこちらです」
更に歩き謁見の間に到着する、昔と同じく中は広間になってるはずだ。
「王よ! つれて参りました!!」
重い扉が開き、兵士が声高に叫ぶ、中には貴族が複数いてアミリアをジロジロと見ている。
『嫌な感じですね』
『仕方ないよ、ここに居るのは全員敵だろうから』
ニヤニヤとアミリアの身体を見ている男貴族、口元を隠し憎々しく見ている令嬢や女貴族、悪意が渦巻いているのが見て取れる。
その中でも一際憎々しげにこちらを見て来る存在、バルダーンだ。
『クロコ、外につなげたね?』
『はい! 今の状態なら声を外に出せます!』
魔道具を構えると話始める。
「よくぞ参られた、アレウスの娘よ」
「貴方が、父と母を殺し、王位を簒奪した人ね……」
憎々しげに睨み返すアミリア、その視線に気圧されるバルダーン。
「ふん! ワシはこの国の利益を求めたまでじゃ!」
「そんなの仮初も良い所じゃない! この10年で貧富の差は大きくなり、王都にはスラムが増え、長い戦争で国は疲弊したわ!」
「知った事か! ワシはワシの為に行っていたまでだ!!」
「そう……じゃあ、国境を侵し宝石獣の少女を捕らえ見世物として戦わせてたのも、他の魔族をアースドラゴンに喰わせ殺していたことも事実なのね!」
「そうだ! 魔族を殺した所で何が悪い!! 人の何倍も生き、人の形を取り人の真似事をする化け物じゃないか!!」
今ので危うく飛び出しそうになる俺、クロコがシャットアウトしてくれなきゃ飛び出て首を描き切るところだった。
「だから戦争を仕掛け、兵を無駄死にさせていたのね!」
「はん! そんなのワシの実験の為に土地が必要だったのでな! 良いように使ったまでだ!」
「実験?」
「あぁ! あそこは人の死体が多く作れるのでな! そこでワシはこの薬の元となる私の神を作っていたのさ!!」
バルダーンが出したのは禍々しい姿の石だ、あれからは邪神の気配が感じる。
「そんな……人を堕とし、アマトリウス様の元から外れる行為!」
「知った事か!! そもそもこの研究はアレウスの時代から進められていたのだ!!」
「お父様の?」
「あぁ、だがまぁアイツはワシと違い、我が神を封じる事に躍起になっていたがな!!」
「そんな……」
「それに、ワシは言ったのだ! この力を兵士に与えれば魔族を根絶やしに出来ると!」
「そんなの……民を人でなくしてもそんな事!!」
「ほう……知っているとはな驚いた……」
「えぇ、魔王都に送った刺客を倒したもの!」
「そうか貴様が! 私の安寧を!!」
怒りで顔を沸騰させたバルダーンが叫ぶ。
「まぁ良い! 何といおうとこの国はワシの物!! 貴様が正当だろうが関係無いわ! やれ!!」
「ぐわぁ!」「ぎゃぁ!」「ぐへぁ!?」
次々と控えていた給仕たちが貴族に注射器を立てている、まさかあれは!?
『クロコ、緊急事態だ! 俺が影から出たらレティアスを回収してリリアーナの元へ!』
『わかりました、放送は?』
『中止していいよ! 録画してるし!』
『わかりました!』
「頼んだ! アミリア!!」
アミリアの影から飛び出したその直後、部屋に邪神が溢れ返える。
「きゃあ!?」
「アミリア、頭を下げて!『上凪流魔剣技——千刃爛漫』」
身体強化と魔装、それと血戦陣を合わせた防御技を放つ、自身の周囲に魔力で千の刃を作り出し、近づくモノを切り刻む独自の技だ。
「はぁぁぁぁ!!」
最終的に魔力の刃を放ち周囲の邪神を細切れにする、後に残ったのは意図的に斬撃を逸らしたバルダーンのみだ。
作者です。
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