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第89話:最終決戦の朝

翌朝、天幕の外に出ると非常に良い天気だった。


「んん~いい天気だなぁ……」


恐らく今日ですべての戦いに決着が着くだろう、そんな気がしてる。


皆もそう感じていたようで、昨日は特段甘えてきていた。


「おはようございます優希様」


大きく伸びをして身体をほぐしていたら、リリアーナがやって来た。


「おはようリリアーナ、今日もかい?」


「えぇ、日課ですから」


「じゃあ俺も手伝うよ」


二人で各所を回る、体調不良の者や怪我した者が居ないか確認をしていく。


「すみません、魔王様……」


「良いって、これくらい。はい、終わり!」


昨晩の食事の準備の際に指を切った兵士を治療する、運悪く利き手らしいのでこれだと事故につながりかねない。


「じゃあ気をつけてねぇ~」


手を振って見送る、リリアーナの方へ視線を向けるとニヤニヤしたドヤ顔がそこにはあった。


「流石です、私の旦那様は」


「珍しいね、そう呼ぶの」


「そうですね、せっかくですしこの陣中(ばしょ)くらいそう呼んでもいいかなぁ~と思いまして」


そう言うと周りに見せつける様に俺の腕を抱きかかえる。


「それじゃあ、後はどこを回るの?」


「むぅ……少しくらい反応してくれても良いじゃないですかぁ?」


「いや、これでもドキドキしてるさ。それに可愛いリリアーナが近くにいてくれるから嬉しいんだよ?」


そう言うと顔を赤くしたリリアーナが「うぅ……強敵……」ポツリと言う。


「それじゃあ皆に見せつけに行こうか」


「はい!」


赤くなるリリアーナと共に朝の視察に回るのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

視察から戻って来ると天幕の中に朝食が用意されていた。


「あ、ユウキさん! お帰りなさい!」


何故かエプロン姿のセレーネと一緒に……。


「セレーネ、どうしたのその格好?」


「いえ、以前お母さんから貰ったんです、せっかくですし着ようかなぁ……と」


「そっか……ん? 朝ご飯がいつもと違う感じだね」


よく見るといつもの朝食より少し豪華で、あまり見ない品だった。


「えへへ~、マーレルさんに教えて貰った昔の宝石獣カーバンクル伝統料理です!」


「へぇ~美味しそうだね」


メキシコ料理みたいな色とりどり野菜と、お肉が混ざりトルティーヤっぽいのの上に乗っている。


「じゃあ皆? ってあれ?」


そういえばみんな居ないな、リリアーナも一緒に戻って来たはずなのにいつの間にか消えている。


「えへへ~、二人っきりにしてもらいました」


恥ずかしそうに言うセレーネ、そういう事か。


「そっか、じゃあ一緒に食べようか」


隣同士で席に座り、いただきますをする。


「ユ、ユウキさん! はいっ!」


いきなり揚げ春巻きみたいな料理を、少し震えながら手に持って差し出してくる。


「あ、あーん!」


「お、おう……あーん」


「はい! っふゃう!?」


小さめの料理なので一口で食べれてしまう、その際セレーネの指ごと口に含んでしまうのは仕方ない。


「んー美味しい! 美味しいよセレー……ネ……」


舌鼓を打ってセレーネの方を見るとうっとりした顔で指をねぶってた。


「セレーネ……」


「はっ!? こ、これは! ソ、ソースが付いてたので!!」


「さいですか……」


それから、食べさせ合いをしながら美味しく朝食をいただいたのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

朝食を食べ終わり、各々準備をし始める。


「はい、これで大丈夫です、ご主人様」


「ありがとうシア」


「これが僕の仕事ですから!」


「そうだったね、慣れてないから助かるよ」


頭を撫でるといきなり抱き付いてくる。


「どうした?」


「名前で呼んで下さい……」


「名前……スティシアの方?」


「はい……」


力が目一杯入る、その感じで少し震えているわかる。


「ふぅ……スティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシアスティシア」


一息が切れるまでシアの名前を呼ぶ。


「ちょ!? ご主人様ぁ!?」


壊れた様にいきなり言う俺におろおろするシア。


「すぅ……ふぅ……これで、嫌な気分は晴れた?」


そう言うと、驚いた顔から次第に泣き笑い出す。


「ふふっ……全く、緊張させてくれませんね」


「俺は皆が緊張してるのが嫌いだからね」


流れている涙を拭いながら微笑みかける、するともう一度強く抱き付いてくる。


「ん~そういう所大好きです」


それから、満足して離れたスティシアに向き直る。


「シア……いや、スティシア」


「はい?」


「過去は消えないし、切り離せない。それはスティシアという名前だったり重ねて来た事、それでもその過去も未来も、全部のスティシアの事は愛してるし離すつもりは無い、これからもね。だからスティシアも過去の名前(スティシア)をゆっくりでいいから愛してあげて」


「ご主人様……」


「本当は婚約の時に言ってあげれば良かったんだけどね」


「いえ……すっごく嬉し゛い゛て゛す゛!!」


力強く抱きしめて来るスティシアと、その涙を受け止めるのだった。



作者です。


本日も読んでいただきありがとうございます!

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