第83話:セレーネの覚悟とミローズ到着
セレーネの言葉に驚きながら聞きかえすと、真剣な目でこちらを見て来る。
「宝石獣の価値は額の宝石です、それを見て結婚を宝石獣の男性は結婚の相手を決めたりします、宝石が傷ついた女性は宝石獣の中じゃ見向きもされません」
俺の手に小太刀を押し付ける。
「それに、宝石獣は互いの宝石をどちらかの死後半分にして、互いに持つのが風習です、それが死後も裏切らないという永遠の約束ですから」
額をかき上げ俺によく見えるように宝石を見せる。
「でも……」
「痛いのは承知です!」
俺を見るセレーネは真剣な目をしている。
「わかった、でも今度でも良いかい? 里の長老やセーレさん達にもちゃんと許可やデメリットを聞かないといけないし」
「はい……」
しゅんとなるセレーネ。
「それに、俺自身もまだ自分の腕が100パーセント信用できないから……」
自分の手を見る、一応鷲司さんから様々な技は教えて貰っているがまだ皆伝とはなってない。
「わかりました、でも! 近い内にお願いします!」
「あぁ、任せてくれ……ってのはおかしいかな……?」
「楽しみにしてます!」
これは……帰って鷲司さんに説明しないと駄目かな……。
「そうだ、俺の師匠にセレーネも師事しないか?」
「ユウキさんのお師匠さんですか?」
「あぁ、セレーネの刀は俺の刀より大きい【大太刀】ってものでね、俺も大太刀の技はまだ習って無いんだ」
セレーネの手に小太刀を握らせセレーネの額の宝石を撫でる。
「ユウキさんも一緒ですか?」
俺の服を握りながら聞いてくる。
「あぁ、俺もせっかくだし習おうかな」
「だったら、やります!」
飛び込んで来たセレーネを受け止め、腕の中でその体温を感じていると天幕の入り口が開いた。
「ただいまーって、もう大丈夫そうね」
「あーずるいです!」
「ご主人様! 私も抱いて!」
駆け寄って、抱き付いてくる二人、アミリアはやれやれといった苦笑いをしていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて……到着したね……」
「そうですね……」
4日後、特に問題もなく国境を越え、目の前に広がるのはミローズの街、突如現れた約7000人以上からなる軍に騒々しくなる。
「ユウキ、連れて来たわ」
アミリアと共に馬に乗って現れたのは武装したナタリアさんと数騎お供のだった。
「お久しぶりですナタリアさん」
「えぇ、聖騎士様……。いえ……魔王様とお呼びすればいいですか?」
仰々しく馬上礼をするナタリアさん、俺もにこやかに礼で返す。
「本日はこの様な大軍を率いて一体どうなされたのですか?」
ナタリアさんの目が鋭くなり周囲を見回す。
「はい、この度は『フィルレシア王国』の正統後継者たるアミリア・フィルレシアへの忠誠と直参を求めに来ました」
その言葉にナタリアさんは平然と、お供の兵士達は驚き、アミリアを見て困惑していた。
「聖女様が正統後継者? それはいったい……」
「言葉の通りです、アミリアは前国王の遺児ですので」
「それでしたら、聖剣をお持ちのはず!」
「アミリア」
俺が声を掛けるとアミリアが馬に吊っていた剣を取りだす。
「ナタリアさん、抜いてみますか?」
「え、えぇ……」
馬から降りてアミリアから剣を受け取る、鞘を抜くが何の変哲も無い剣だ。
「確かに、伝承の絵図等と一緒ですね……」
鞘に戻しアミリアに剣を返すナタリアさん。
「ですが、聖剣は王家の者が抜けば光を放つと伝承にあります。それを見るまでは信用なりませんね」
「わかりました、アミリア」
「えぇ……っつ!」
鞘から抜いたアミリアが魔力を込める、すると魔力が溢れ剣が光り輝く。
「これは……、わかりました……我がミローズはアミリア様の元に忠義を捧げます……」
膝まずき首を垂れるナタリアさん、それに合わせてお供の兵士も慌てて馬を降り頭を下げる。
「ありがとうございますナタリア、ミローズの力添え大いに感謝します」
「はっ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それからナタリアさんはお供に兵を城に戻させ、出陣の準備を整える様だ。
「ありがとうございます、ナタリアさん。良い役者っぷりでしたね」
「ありがとうございます、最初に演技を提案された時は驚きましたけどこれなら王の手の者が、上手く騙されてくれますね。恐らく今晩にでも慌てて報告に向かうかと……」
「多分、2~3日で正当な後継者の事は広がるし、上手く進めば良いんだけどなぁ……」
「大丈夫ですよ魔王様、私の手の者もそれに合わせて噂を流す準備が出来てますので」
「そんな事まで……ありがとうございます、ナタリアさん」
「いえいえ、旦那様が提案してくれたことなんです」
「そうだったんですね、じゃあウルベリックさんにもお礼を言わないと……」
そんな話をしていると、アミリア達が天幕の中に入って来る。
「ユウキ、ナタリアさんとこの兵士さんが来てるよ」
「優希様、今日の野営の準備終わりましたと、セレーネが」
「アミリア、リリアーナありがとう」
「アミリア様!」
ナタリアさんが勢いよく跪いて頭を下げた。
作者です。
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