第82話:はじめまして。
マーレルさんを仲間に加え、リリアーナ達の元に戻るとリリアーナとアミリアがすっごい座った目をしていた。
「えっと……どうしたの?」
「いえ、優希様は手が早いな~と思いまして!」
「私達が居るのに、そうやってすぐ女の人引っ掛けて来るんだから……」
「さすがご主人様ですねぇ……」
「ん? どういうこと?」
三人の言っていることがわからず聞くと二人共マーレルさんを指差した。
「その女の人は誰ですか?」
「えっと……マーレルさんの事?」
「へぇ~マーレルさんって言うんだ」
アミリアが額に青筋を作りながら言う。
「マーレルさんが見える? って見えてる!?」
そりゃ、光の玉で見えてたし……って、あれ?
「そうじゃん! 見えてるじゃん!?」
俺もびっくりする、いつの間にかマーレルさんの姿が冒険者風に変わってるじゃん!
俺達の驚きにはてなマークを浮かべる三人。
『ぷぷっ……二人共今更だよ~』
噴き出して笑うマーレルさん、ころころと変わる表情は少女の様だ。
『えっと……私はマーレルかなり昔、宝石獣の里を出て、人間の男性と結婚した宝石獣でね。セレーネちゃんとは種族と、人間の旦那様が大好きって事しか共通点が無いけど』
からからと笑うマーレルさんに、俺達は開いた口が塞がらない。
「そ、そうなんですね……」
「という事は幽霊?」
「ですかね? 浮いてますし」
『うーん……正確には精霊とかそういったものらしいけど、幽霊と変わらないしそれであってるわね。とはいっても物は触れないし、魔法くらいしか使えないけどね!』
「でも、どうしてセレーネさん達と?」
リリアーナが首を傾げる。
『それはね~私の里の子孫が頑張るって聞いたし。それに人間と魔族の中を悪くした相手を1発殴りたくてね!』
凄く良い顔で言うマーレルさん、そっか彼女は人間と魔族の関係性、つまり自分と旦那さんの事を否定されてるのが嫌だったのか……。
「そういう事なのね」
「確かに、私も優希様を愛してますからわかりますわ」
「マーレルさん……」
「それでマーレルさんはご主人様の事は、どう思ってるのですか?」
「ちょ!? 良い話で終るとこを!!」
シアがぶっこんだ事で再び俺に疑惑の視線が向いている。
『え? 彼? 彼は無いなぁ……私の旦那様のが素敵だし』
あっけらかんと言うマーレルさん、その後首元からロケットペンダントを取りだす。
『これ、旦那様の絵姿なのよ~どうどう!? カッコいいでしょ~!!』
見せられたのは滅茶苦茶ダンディーなおじさまだった。
「安心ね」
「えぇ、そうですね」
「ご主人様とは真逆ですね」
「カッコイイ……」
「「「「え゛っ?」」」」
セレーネの意外な発言に俺達は変な声が出た。
「ち、違いますよ!? ユウキさんがあんな感じになったらカッコいいなと思ったんです!!」
「そ、そうか……」
慌てる様に言うセレーネ、その言葉を疑うじゃ無いけど悲しくなってくる。
『あはは! ユウキ君! 心配しなくて大丈夫だよ! 宝石獣の性質でね私達の種は少し老けた男性の方が好みなんだ』
「そうなんですか?」
『あぁ、ほら思い返してくれ、里の結婚してる者達は少し老けていただろう?』
そう言われ思い返す……確かに里の夫婦の殆どは。女性の方が若々しいけど、男性側は少し年を取っている様に見えた。
「そうですね、若者男性と結婚するなんて最初から許嫁とかじゃない限りはありえませんでしたね」
うんうんと頷くセレーネ、そういう事だったのか。
『そうそう、あと【虹の子】は早くから里長としての仕事があるから、慣例で若い者と結婚する事があるくらいね』
「確かに、セレーネはすぐに結婚相手を見つけるようにしてたもんね」
「私はユウキさん以外どうでも良かったですけどね」
あははと笑いながら頬を掻くセレーネ。
『まぁ、その子の言う通りだし、大丈夫よそれに宝石獣って実は浮気をしないのよ』
「そうなんですか?」
『えぇ、どうしても好みの関係上男性の側が先に亡くなるのよ。それもあってか宝石獣は永遠に旦那様を愛し続けるの、それこそ死んでもよ……』
慈しむ様にロケットペンダントを撫でるマーレルさん、確かに今の彼女を見るとそうとしか見えない。
『と、いう訳で気にせずちゅっちゅっしなさいな』
「マ、マーレルさん!?」
セレーネの顔が瞬間湯沸かし器みたいになるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから進み、今日は宝石獣の里と最前線の中間で休む事になった。
「では、私とアミリアは行軍の日程調整などを行ってまいりますね」
「俺も行くよ、軍全体の事だし」
「いいわよ、確認事項だけだから」
天幕を張り終えて、装備解除したリリアーナとアミリアが軍議に向かうとの事で同行しようかと聞くと止められる。
「それよりご主人様は」
「セレーネと話し合ってきなさい」
「そうです、軍議より重要ですから」
そう言うと三人は出て行ってしまった。
『私も、少し探検して来るわ~』
マーレルさんもすぅ~っと天幕から出ていく。
そして残る俺とセレーネ、あれから後ろめたさで、俺は少し気まずくなっていた。
「「あ、あの!」」
「セレーネからどうぞ」「ユウキさんからどうぞ」
「じゃ、じゃあ……セレーネ、ごめんな……」
「いえ! 私が紛らわしい事言ったから!」
それ以降も「俺が」「私が」の堂々巡りになって来てしまった。
「それじゃあ、ユウキさん。一つお願いを聞いて下さい」
そう言ってセレーネが顔を上げる。
「お、おう……俺に出来る事なら……」
セレーネが俺が渡した小太刀を空間収納から取りだす。
「これで、私の額にある宝石を斬って下さい」
「は?」
「だから、私の額の宝石を斬って下さい!」
「ど、どうして?」
俺は唐突の事に、困惑してしまった。
作者です。
投稿遅れて申し訳無いです!!
本日も読んでいただきありがとうございます!
もし良かったら☆やいいねをくれると嬉しいです!!