第78話:最終決戦に向けて・婚約披露パーティー②
城前のバルコニーに出ると、城下にはすし詰め状態の市民が顔を上げてこちらを見ている。
「凄い人だな……」
「こんなに人が居たんですね……」
「そうね……」
俺達が人の多さに驚いているとノクタールさんが一歩前に出る、すると段々と静まりをみせてくる。
「皆の者! この度は新しい魔王とその妻達のお披露目に集まり感謝する!」
「「「「「わぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」
「姫様おめでとー!!」
「あそこに居るの、たまに警邏に居た娘だよな?」
「あれ、あそこにいるの聖女様?」
「「「「「あの男って誰?」」」」」
そんな事が聞こえて来る、というか俺知名度無いのか……警邏とか買い出しとかちょこちょこやってるんだけどなぁ……。
「では、皆の者こちらに居るのが新しい魔王だ!」
「「「「「えぇ~!?」」」」」
そんな驚くなよ……悲しくなるだろ……。
「思う所はあろう、だが彼は我々よりはるかに強く、聡明だ!」
その言葉にざわざわとする、魔族は基本的に人間への差別感は無いのだが、自分達の方が寿命や力が上の存在だとは思っている。
「その力を持って国境での騒乱を抑え、街を瞬く間に作り上げた!」
「お、俺聞いた事が……魔王様が人間の軍とぶつかる地点を崩壊させ、争いを収めたと……あれは新魔王様だったのか……」
「そういえば最近王都の近くに街が出来てたわね、何やらテルマエ?っていうお風呂が人気らしいのだけど……」
「あそこね! 私も行ったわ!」
「あれを作っちまうとは……すげぇんだな……」
城下がざわつく、主にお風呂の話なんだけど……まぁ、お風呂が大人気過ぎてもう二つほど作らさせたのは知ってたけど、王都の皆も結構行ってたんだな……。
「新魔王様ぁ~ありがと~!」
「アンタのお陰で、息子も帰って来れた~!」
なんか……思ってた方向と違うけど……まぁいいか、悪い事は言われてないみたいだし。
「こういった形で受け入れられるって、ホント……驚かされるわね……」
「ですね! でもユウキさんらしいです!」
「流石優希様ですわ!!」
三人も満足そうに笑っているし、というかリリアーナは何で腕組んでるの……。
「それでは、新しい魔王よこちらへ!」
ノクタールさんに呼ばれ前に出る、すると皆一様に好奇の視線を向けられる。
期待と羨望と、若干の悪感情が混じる視線がこちらを見据える。
「ユウキ殿、一言でも良い、声をかけてくれ」
「はい……」
何度か、大勢の前に立つことはあるがやっぱり慣れない、じっとりと汗をかく。
「皆さん、この度姫様と婚姻を結ばせてもらい、魔王を継承する事になりました上凪 優希です。これから皆さんの生活が様々な所で変わっていくと思いますが、伝統も尊重し、新しい王として頑張って行きたいと思います!」
一礼すると静まり返った城下から拍手が上がる。
――――パチパチパチパチ!
だんだん洪水のように広がり、聞き取れないほどの様々な声が上がった。
「随分、思い切った事を言ったね」
隣にノクタールさんが立って話しかけて来る。
「まぁ、警邏で見回ってると、どうしても目につきますから……」
改修されてるとはいえ2000以上前から殆ど変わっていないからね。
「やっぱり君に任せて、正解だったよ」
「実務はノクタールさんに任せっぱなしですけどね……」
「ははは、それは仕方ないよ。数十年の積み重ねをしてるんだ、それに私が当てにしてるのは君の知識と平和の心だからね」
そしてその熱が収まると、いよいよリリアーナ達への婚礼の証を渡すというメインイベントだ。
「では、続いて婚約の儀に移ろう!」
そう言うと、リリアーナ達が前に出て来る。
「魔王様、こちらを……」
正装に身を包んだラティティが三人のティアラを持って来た。
「ありがとう、ラティティ」
さて、最初はリリアーナからだ。
「優希様、私はこの日をお待ちしておりました……」
「ごめんな、本当はもう少し早くしたかったんだけど」
「いえ、結果的にオッケーです!」
そう言って頭をこちらに向ける、その頭をティアラで飾ると歓声が聞こえた。
「じゃあ次に……!!」
アミリアに向き直ろうとした瞬間、突如身の丈程の矢が飛来してきた。
――ガキンッ!!
素早く空間収納から抜いた刀で斬り落とし、飛んで来た方向を見る。
「ユウキ、あれ!!」
「あぁ、見えてるよ……」
王都の入り口で蠢く巨大な邪神、恐らく都市の外で衛兵に弾かれた刺客が行ったのだろう。
「優希様!」「ユウキ!」「ユウキさん!」
三人共装備を取りだし戦闘態勢になる、この距離なら俺とリリアーナが最適か……。
「距離がある、俺とリリアーナで飛んでくから……ってちょっとアミリア!?」
一息に跳躍したアミリアが民衆の上を跳び民家の屋根へ降り立つ、それから屋根がはがれる程の踏み込みで翔けていく。
「自分の番で邪魔されたら怒るもんね!」
「優希様! ここは私達に任せてアミリアさんを!」
「わかった! 頼む!! 『血戦魔装展開』」
全身を躁血魔法の鎧で包み魔装と合わせ強化する、見た目は騎士と某ライダーを混ぜ合わせた様な見た目だ。
そこから翼を出し、跳躍と滑空を混ぜアミリアに追い付く。
「アミリア!」
「ユウキ……」
顔を見ると怒りと悲しみが交わった、何とも言えない顔をしている。
「アミリア、あんな奴さっさとぶっ倒して、早く続きをしよう!」
そう言うとアミリアはハッとして微笑む。
「そうね! さっさと倒して、私達の晴れ舞台見て貰わなくちゃ!」
城壁を飛び越え邪神にの前に躍り出た。
作者です。
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