第75話:最終決戦に向けて・貴族との会食③
それから全員の自己紹介を終えると、料理がワゴンに乗せられ運ばれて来た。
「えっと……皆さん食べられないものはありますか?」
「あてくしは大丈夫でございますわぁ」
「僕も、食事は嗜むし大丈夫だよ」
「私も大丈夫だ、特に食べて死ぬようなものは無い」
「吾輩は硬いものでなければ大丈夫でござる」
「私も大丈夫だけどー同族食いだけは駄目かな~」
「それは大丈夫ですね、料理長お願いします」
「はい!」
料理長へ視線を送ると、緊張しながらも綺麗に盛り付けていく。
「お待たせしました、こちら前菜のカンブリとマンドラゴラのサラダです」
出されたのは桜色の身が綺麗な寒ブリをカルパッチョにしてマンドラゴラと合わせたサラダだ。
「おぉ……」
「これは……美味しそう……」
「カンブリ……カルパッチョ……聞いた事が無いですね」
「私も初めて聞きました……」
「私の世界での魚で、色々な調味料を加えたものをサラダにしました。この時期ですと脂が乗って美味しい時期ですので」
まぁ俺は魚切って、春華のレシピ通りにソースの仕込みをしただけなんだけどね、料理長に味見してもらってマンドラゴラの部分は任せちゃったし。
「これが……魚……」
「なんて美味しそう……」
「お肉みたいですね……」
リリアーナ達も驚いてる、まぁ俺も異世界で寒ブリ食べれるなんて思いもしなかったけどね。
来賓の皆も驚いている様だし、上々かな?
「続きましては――」
それからかぼちゃのポタージュやエビのパスタを出して驚かせ、中には俺が作ったという事を驚きながら食べている人もいた。
「では、こちらがメインになります」
そして運ばれて来たメインはハンバーグだ、ソースはデミグラスソースで付け合わせの野菜も上手に出来たやつだ。
「こちらは、全て魔王様が手ずから作られたものです」
「まぁまぁ~」
「なんと……」
「ハンバーグ……」
「美味しそう……」
皆ナイフとフォークを手に取り、おずおずと切り始める。
「うわぁ!」
「なんだこの柔らかさは……」
「吾輩の歯でも食べやすい……」
「わわっ……透明な汁が!?」
「それにソースの香りも美味しそう……」
「はむっ……んんっ~!! 美味しいですユウキさん!」
セレーネが一口食べて顔をとろけさせている。
「そうか、それは良かったよ、俺も一口……ん~美味しい」
ラベルが付いていなかったけど相当良いお肉なのが伝わって来るし、肉とソースの合わさりが、かなりマッチしてる。
(春華には感謝だ、後はマリアンもか)
春華への感謝とか、後でマリアンの分も届けてあげようと思いながら、手と口を動かしているとすぐに終わってしまった。
「では皆様、こちらが最後のお品になります」
そして、デザートにはこの間作ったプリンを再度チャレンジしてみた。
「こ、これは……」
「プリンね!」
「やった! ユウキさんのプリン!」
すると、足元の影がうずうずと動き始めた。
(クロコが居るのか、仕方ないなぁ……)
膝元の影にプリンを置くとクロコが少しだけ顔を出す、頷くとプリンを持って沈んで行った。
「これは……美味しいですわぁ」
「あぁ……様々な蜜菓子を食べて来たがこれより美味しいものは食べた事が無い……」
「う、うますぎる!!」
「これが菓子というものなのでござるか……」
「おいしい……こんなの初めてよ!」
どうやら口に合った様だ、皆満足そうな顔をしている。
「お口にあって良かったです」
「えぇ~あてくしこんなに美味しい料理は初めてでしたぁ~」
「はい、非常においしかったです。魔王様の料理は世界を取れますね」
「あはは……ありがとうございます」
――コンコン。
そのタイミングで部屋の扉がノックされた
「入れ」
「失礼いたします」
入って来たのはシアで、人数分のティーセットをワゴンに乗せてくれている。
「皆様、こちらをどうぞ」
目の前に乳褐色の液体が置かれる、確かキーマンという茶葉のロイヤルミルクティーだ。
「ありがとう、シア」
そう声をかけると、一礼して下がる。
「魔王様こちらは?」
イザノーラ伯爵が聞いてくる。
「俺の世界の紅茶です、普通に煮だしてから牛の乳を入れたロイヤルミルクティーというものですね、苦みが強い場合は砂糖を入れて下さい」
角砂糖を入れたポットを並べると、各々一口飲む。
それから皆が砂糖で好みの味に調え飲み始める。
「うん。美味しいよ、シア」
「あ、ありがとうございます……」
ストレートに褒めると耳まで赤くする、こういった場だからよく目立つ。
「それで、魔王様よろしいですかぁ?」
「どうしました? イザノーラ侯爵」
「事前に聞いていたのですがぁ、本当に国取りをするのですかぁ?」
その質問に和やかな場が、引き締まった、貴族の皆が俺をじっと見る。
「えぇ、皆様に1軍を率いてきてもらったのもその為ですから」
「ですがぁ、知っての通りかぁ、の国と我が国の関係はあまり芳しくないはずがぁ?」
「はい、知ってますよ?」
「でしたら何故ぇ?」
「いや、ここにいるアミリアが望んだので」
「聖女様が?」
「えぇ、だって彼女は正当なフィルレシア王国の王女ですから」
「「「「「え? えぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」
「それと、皆様も知っている。【剣の聖女】本人ですから」
アミリアが剣を出して中央に置く、淡く虹色に光る剣は過去で作った聖剣と全く同じだ。
「「「「「えぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」
「そ、それだけでは……確かな証拠にはなりません! 私達も民を犠牲にすることになります」
フィリアン伯爵も声を上げる、まぁそうなるよね。
「でしたら、私が本物の聖女か、確かめよう……聖女には天を裂く奇跡があると聞いている」
バルドル伯爵がそう言って立ちあがった。
作者です。
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