第74話:最終決戦に向けて・貴族との会食②
「失礼します、ユウキ様」
「あれ? 料理長と……誰?」
申し訳無さそうに入って来たのは厨房の料理長と顔を青くした見慣れない青年だった。
「それが……」
聞くと用意していた料理の一部を、新人の青年が間違えて賄いとして出してしまったらしい。
「非常に申し訳ございません!! ほら! お前も謝れ!!」
「うぐっ……すみません……」
先程からボロボロと泣いている青年、酷く怒られたのか頬も腫れている。
「「「…………」」」
皆が唖然としている、流石にこのような事態は初めてなのか
「あー、大丈夫ですよ」
「ですが! 本日は皆様との昼食会! このような失態は許されません!!」
見てるこっちが申し訳なくなる程の勢いで、頭を床に打ち付ける。
「優希様……」
「流石に今からじゃ間に合わないわよね……」
「うぅ……どうしよう……」
皆も思案してくれているのか考え込んでくれている。
「あー、皆。大丈夫だよ、だって予備があるから」
「へ? 予備?」
料理長がポカンとしながら答える。
「はい、俺の空間収納は時間停止も入ってるので、かなり多めに作ってたんです。まぁ後でこっそり食べようとしていたのもあるんだけどね……」
苦笑いしながら空間収納から使ってしまった分の料理を取りだす。
「あ、ありがとうございます!!」
「うぐっうぐっ……ありがとう……ございます……」
「はいはい、君も泣かないで。料理はあっても盛り付けとかはしてもらわないといけないんだから」
青年に『——回復』をかけて頬の腫れを収める、その後は背中を叩いて厨房へ向かわせた。
そして、席に戻ると皆が唖然としていた。
「流石ユウキね……」
「対応といい、フォローといい、素晴らしいですわ優希様……」
「カッコイイです! ユウキさん!」
「いや、俺が皆とこっそり食べたいから残してただけだし、食べるタイミングが変わっただけだよ」
起こってしまったものはしょうがないし、また作れば良いかなぁと思いながら準備が出来るのを待っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから10分程でラティティがノックをして入って来た。
「ユウキ様、皆様! 来賓の方々がいらっしゃいました」
そう言って下がると統一された、気品のある人達が入って来た。
ある人は俺を見て目を見張り顔を青くしつつ、ある人はニコニコと小さく手を振る人、表情には見せないけど目が泳いでる人、平然としている人と様々だ。
形式的には会食にしているが謁見扱いなので座って待つ。
「座りなさい」
「「「「「は!」」」」」
その場に跪く皆。
「いやいや、椅子にだよ!?」
思わずツッコんじゃったよ!
「ぷっ……」
「ふふっ……」
「……っつ!……っつ!」
皆が笑いを堪えている、ほら貴族の皆がポカーンとしてるじゃん!!
「あ、はい……」
「すみません……魔王様……」
おずおずと皆、椅子に座る。
「この度は、集まってもらい感謝している。リリアーナの体調の面や公の場に慣れない妻たちの為に今回は会食とさせてもらった、すまないな。それと、このような形で受け入れてもらい感謝する」
俺が頭を下げると大慌てする貴族の方々、まぁそりゃいきなりこんな事されたら驚くよな。
「魔王様顔を上げてください!」
「そうです! 無理に時間をいただいたのは我々なのです!」
女性と男性の声がする、恐らく侯爵の二人なのだろう。
「優希様、お顔を上げてください、皆様どうしたらいいのか困惑してますから」
リリアーナの声で顔を上げる、すると目を白黒させ非常に困惑した貴族の皆が居た。
「驚かせてしまったらすまないね、どうしても先に一言礼を言っておきたくてね」
「いえ、謝らないでくださいまし」
「今ので新しい魔王様の人となりが分かりましたので」
青肌に豪華な薔薇を生やした綺麗な女性貴族と、目元を隠したやたら高身長の美形の男性貴族が微笑む。
あの二人がイザノーラ侯爵とフィリアン侯爵なのだろう、そして女性貴族の方が立ち上がる。
「あてくし、イザノーラ・ウィリンダーと申しますわぁ、種族はアラウルネでございますわぁ。新魔王様はとても愛らしいお方でございますわぁ」
ねっとりとした視線で見られる、そして両隣から抓られる。
「僕はフィリアン・エヴィトリアだ、種族はインキュバス。サキュバス族の中に生まれる特異体質なんだ、目は女性に対して『魅了魔法』をかけない様にしているので隠していてすまない」
なんだか背筋がぞくっとしたんだけど……まさかね……。
侯爵ふたりの挨拶が終わり残りの伯爵三人が立ち上がる。
「私はバルドル・アデリンと申す、種族は緋牙族である、四天王を拝命させていただき至悦極喜(魔族の古語)魔王様においては国境の争いを静めていただき感謝しかありませぬ」
名前が可愛いな……まさか家名を名乗ってたのってそういう事なのか?
「吾輩はレティアス・ミリビラ、種族は幻魔でござる。四天王の一角で諜報活動を拝命させていただいておるでござる」
口調の癖が強いな!! そして目を合わせてくれないがチラチラと視線が首元に向かうので、目を見ようと頑張ってくれてる様だ。
(俺も陰キャだったから、視線の置き場に困るよな……わかるぞ……)
「はーい! 私はイザノーラ・ベアティルでーす! 種族はセイレーンでーす! 歌の魔法が得意で色んな事が出来るよ! 城下で劇場もやってるから来てねー!」
セレーネと同じくらいの年齢で元気っこの様な感じにほっこりする、そうしているとリリアーナから耳打ちされる。
「優希様、イザノーラ伯爵はお父様より年上です、ちなみにお父様が振られてるお方です」
後半の情報いらないよね!? ノクタールさんが可哀想なんだけど!?
作者です。
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