第71話:最終決戦に向けて・パーティー準備③
とりあえずお土産を全部しまい、お茶を用意する。
用意された椅子を座りながら話を始める。
「結論的に言おうか、この【邪神の萌芽】について、現状で発現した後の対抗策は無いね」
「そうか……」
「何とか、ならないんですか?」
何とも言えない顔で言うマリアン。
「うん、少なくとも〝今〟の段階はだね」
「じゃあ、いずれどうにかなるんですか?」
「うーん、発現した後の薬と言うなら答えはイエス。ただ、数十年かかるかもしれないし、数週間かもしれない……この薬だけから創りだすのは難しいんだ、それに、〝萌芽〟を消すだけなら『解呪』の方が手っ取り早いしねぇ」
「俺が以前冒険者たちにかけたやり方か……」
「そうだね。でも、覚醒薬を使われたら倒すしか……」
「わかった、その時は倒すしかないと皆に伝えるよ」
「うん、ゴメンね」
「はい……ごめんなさい」
二人共、気不味そうにする、そんなに気にしなくて良いのに。
◇◆◇◆◇◆◇◆
神様達のとこから帰って来た俺は、皆を部屋に集め【邪神の萌芽】とその覚醒薬について話していた。
「そのまま飲めばパワーアップ、〝萌芽〟とあわせれば邪神化か……やっかいだよねぇ」
「しかも、その〝萌芽〟は、優希様しか解呪できない」
「既に邪神化した者は倒すしかない……」
「使われたら皆あんな風になっちゃうんですかね……」
「ご主人様ぁ僕は大丈夫だよね!?」
1人慌てるシア、確かに元バルダーンの手先だったから心配だよね。
「大丈夫大丈夫、最初に会った時『解呪』をかけたじゃん」
「そうでした……よかったぁ……」
大きく息を吐くシア、そこまで心配しなくても、どうにかするし。
「一応もう一回かけとく?」
「えっ!? い、いや……それは……」
「そうね、心配だろうしもう一度かけて貰ったら?」
「そうだよ、予防は大事! ユウキさんも言ってました!」
「で、でもぉ……」
何故か、気まずそうに指をつんつんと合わせている。
「まぁまぁ優希様、恐らくシアは別の事が引っかかってますから」
「別の事?」
「はい、優希様にもう一度かけては欲しいけど、それはそれで優希様の実力を疑ってるみたいで嫌だという事あたりでしょうか?」
「———っつ!?」
図星だったのか額に大きく汗をかくシア、そんな事気にしないで良いのに……。
「大丈夫だよ、シア。俺だって完璧じゃない、だからもう一度かけておこうか」
「い、いえ! ち、違うのです!」
わたわたと汗を拭きながら目線を逸らす。
「そ、その……ご主人様の力を一瞬でも疑った自分が嫌なのと、私の不安解消の為に気を遣って貰えるのが嬉しいのと、ご主人様の魔力を流し込まれるのが……」
最後の言い方ぁ! それと、もじもじしながら言われると、なんか変な意味に聞こえちゃうじゃん!?
「た、確かに……優希様の魔力を流し込まれるのは凄く気持ちが良いですわね!」
「わ、わかります……あの感覚……たまらないです……」
「回復魔法とか。あー疲れが癒される~って感じだしね」
「「「それはちょっと違いますね(わ)」」」
シア、リリアーナ、セレーネが否定する、というか魔力の流し込みに違いがあるのかい……。
「優希様の魔力は心地よいですし」
「か、体が熱くなるし!」
「ぶっちゃけ僕はムラムラする」
「おいおいおいおいおい!?」
「えっ? 本当?」
「アミリアも顔を赤らめながら聞かないで!?」
「で、でも……」
もじもじし始めるアミリア、いやその顔は何!?
「優希様……」
「な、何? リリアーナ」
「試しましょう!」
「えぇ……」
目がマジだ……瞳孔がめっちゃ開いてる。
「さぁ! さぁさぁさぁさぁさぁ!!」
躁血魔法で俺の腕を拘束する、ちょっとーリリアーナさん何でそんなに上手くなってるんですか!?
「ちょ! 皆助けて!!」
「ユウキ……ごめん!」
「ユウキさん失礼しますっ!!」
足が固定されセレーネに馬乗りにされ服を脱がされる。
「いやーやめてぇ!?」
「ご主人様ぁ……はぁはぁ……失礼しますね……はぁはぁ……」
「あっ……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「早速渡されたものが役立つとは……」
最近併設した城のお風呂に入りながら息を吐く、今頃は皆は部屋で伸びてると思うのでゆっくりできる。
「いやー大変だねぇ~」
「はい……ってぇ!? ノクタールさん!?」
「やっほー、仕事が一段落したからお風呂に来たんだけど、そうしたらユウキ殿ひとりっぽいからね入らせてもらったよ」
「そ、それは……大丈夫ですけど……」
「良かった良かった、ついでに話したい事があったからねーんっ……ふぅ……」
大きく伸びをするノクタールさん書類仕事が多いのか肩凝ってそうだ。
「話したい事ですか? あっ、回復魔法かけますよ」
「あぁ、ありがとう……おー効くねぇ~コリが解れるよぉ~」
回復魔法の淡い光に包まれノクタールさんの顔が上気する。
「そ、そういえば……俺の回復魔法って、変な気持ちにならないですよね?」
「どうしたんだい? いきなり……まぁ、このお風呂みたいな感じでじっくりと体の中から疲れが抜ける感じはするけど……そんな感じにはならないかな?」
「ですよねぇ……」
不思議そうなノクタールさんに色々と端折りながら説明をする。
「ははは! 大変だったね!」
「はい……大変でした……」
「そうそう、最初の質問だがね、聖女様と娘たちが違ったのは使った魔法が『——悦楽の結約』だからだよ、あれは魔力の通り方が淫紋を通して伝わるからそう言った気分になるんだ、まぁその感覚を体が覚えてるからって感じだね」
「なんか……弊害が多そうですね……」
「まぁ、サキュバス種にしか使えないからね、普通の魔族や人間だと使えないもんなんだけどね……」
「マジですか……」
「まぁ、ユウキ殿は特別だし、それに使い慣れて行けばそう言った奴隷側のエッチな気分をコントロールも出来るからね、頑張れ」
良い笑顔で言うノクタールさん、あんまり使いたくはないんだけど……。
「と、いう事で、話が大分それてしまったね、本題に移ろうか」
「えっ、あっはい……」
「何だい? もう少しそういった話をするかい?」
「あぁ、いえ! 大丈夫です……」
流石にそういった話をお義父さんするのは恥ずかしい……。
「ははは! では、本題の話だ」
そう言って、俺の方へ向き直った。
作者です。
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