第70話:最終決戦に向けて・パーティー準備②
「うわっ!」
「きゃあ!?」
スライム風の邪神? に変化したホラークスが暴れ土煙が上がる。
「グヘヘヘヘ! コノチカラダ! サイコウダアァァ!!」
クロコによって地面の下に潜り込んだ俺達を、倒したと思い込んでるのか高笑いをしている。
「危なかったですぅ~」
「クロコ、ありがとうな」
「クロコちゃんありがとう」
俺とセレーネが交互に頭を撫でると嬉しそうな顔をする。
「さて、あんまり暴れられても困るし、さっさと倒しますか……」
「あ、あの! ユウキさん! 私がやっちゃ駄目でしょうか!?」
ワクワクした顔で太刀を取りだしてるセレーネ。
「まぁ良いか、危なくなったら援護に入るから好きにやりなよ」
「「はい!」」
「いや、クロコはお留守番だよ」
「そんなぁ……」
がっくしと肩を落とすクロコ、こんなにこの子好戦的だったっけ?
「それじゃあ行こうか」
「「はい!」」
そうして表に出た俺達、大きなスライム状の中に脳と目が浮いている。
「ナニィイギテルダロォ!」
「気持ちわりーな……」
「ですね……」
「なんか嫌……」
「ギザマラァァァ!!」
「はぁ!」
しならせた触手が飛ぶ、それをセレーネが両断する。
「グギャアァァン!!」
「セレーネ(おねーちゃん)!」
「「行ってらっしゃい!」」
「はい!」
元気よく飛び出すセレーネ、空中に飛んだ彼女は額の宝石を輝かせる。
『私は求める炎の力! 敵を焼き尽くす矢となりて私の敵を灼いて!!』
炎の矢を創りだしたセレーネは次々と射って行く。
――ジュウウウ!
「ギャアアア!? アヅイイィィ!!」
肉の灼ける音がする、匂いはドブ川の様な匂いがして鼻を摘まむ。
「うひゃああああ臭いぃぃぃぃい!?『私は求める風の力! 私を羽ばたかせ、大空へと解き放って!』」
風魔法で飛び上がり空中へ逃げる、そのまま対空しながら次の呪文を唱える。
『私は望む! 力強き大地の力! 私の刃となって敵を斬り払う!』
鞘に納めたままの刀に岩を纏わせて刀身を創り出す。
「これで! とどめだぁ!!」
轟音を鳴らし敵を圧し潰し斬る、大きな跡を作りながら擦り潰し砕ける。
「オーバーキルだなぁ……」
「ふぇすへぇ……」
クロコが鼻を摘まみながら言う、うーん、手掛かりが残ってればいいな……。
それから、ぐちゃんぐちゃんになった平原を土魔法で綺麗にしてホラークスの欠片と荷物を集めた。
護衛の男はクロコに探しに行ってもらったが全くの痕跡も無かった。
恐らく喰われたのかもなぁ……。
「っと、こんなもんか、『——復元』」
復元魔法で持ち物を復元する。
少量のお金と保存食、国王からのメモと最後にホラークスが呑んだ小瓶とその中身だ。
「へぇ……邪神の一部を切り取った強化剤か……」
どうやらこれを飲むと【邪神の萌芽】を埋め込まれた者から発芽して邪神化させるのか……。
「これはマリアンに調べてもらうか……」
適当にホラークスの持っていた鞄にしまい立ち上がる。
「後の問題は……こいつか……」
セレーネの事が書かれたメモだ、まぁ新魔王の婚約者として名前が出てるから知っててもおかしくは無いけど……。
「警備体制の見直しをしないとな……」
「そうですね……」
自爆覚悟のこういった奴が出て来る事も予期しとかないと……。
「それじゃあクロコ、セレーネ、ノクタールさんへの説明は任せた。俺は一度マリアンのとこに行ってくる」
「はい!」
「わかりました、任せて下さい!」
ふたりが影に潜ったのを確認して俺もマリアンの元へ跳んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「おーい、マリアン」
神域に転移した俺は、作業中のマリアンに声を掛ける。
「あれ? 優希さん、どうかしましたか?」
「面白いものを手に入れてたからさ」
「何ですか?」
首を傾げるマリアンに例の小瓶を取りだす。
「【邪神の萌芽】って植え付けた邪神の種を発芽させる薬」
「!?」
目を見開き、驚いた顔で口をパクパクしているマリアン、知らなかった様だ。
「これが王からの刺客が持ってたんだ、つまり王都のどこかにこの薬が大量に存在するはず」
「つまり、私はそれを見つけ出せばいいんですね……」
「そうだね……できれば対抗薬かワクチンあたりは作れたりはしないよね?」
「そうですね……やってみないと分からないですが……時間が足りないかもです……」
「そっか、じゃあ仕方ないな……」
「すみません……」
申し訳なさそうなマリアン、何か改善策は無いかなぁ……。
「そうだ、理映を呼んで調べて貰えば良いんじゃないかな?」
「その手がありました! ちょっと呼んできますね!!」
扉を作り開いて行ったマリアン、10分くらいしたら理映と戻って来た……ってなんか凄い荷物だな……。
「おひさー優希君」
「ぜーはーぜーは……優希さん……これ……お嫁さん達から……ですっ……」
――べちゃっ。
「「あ……」」
荷物に潰されたマリアンを救出して、彼女が預かって来たものを広げる。
「おかずに、ケーキ、お菓子に日本語の勉強本、後お米が1俵……」
主にお米原因だろう、空間収納にしまいながら話を続ける。
「あと、これ。耀ちゃんから」
理映がドンと置いた袋からなんだか箱のようなものが見えた、というかあれは……。
「『ヤるのは良いけど、ちゃんと避妊しなさいよ』だって、大変だねぇ~」
「あ……はい……知られてたんすね……」
「そりゃ、監視してるからね」
からからと笑う理映、ですよねぇ……。
「うん……今度会ったら、謝ろう……」
そう心に誓うのだった。
作者です。
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