第58話:ダイバーン伯爵
俺も簡単に着替えると、アミリアの手を取り歩く。ちなみにシアは右手にくっついている。
「シア、そろそろ離れてくれないか?」
「むぅ……じゃあ代わりにアミリア様がくっついてあげてくださーい! ずっとそわそわしてますし」
「ひゃう!? ちょっと、シア!」
顔を赤くして怒るアミリア、ニヤニヤと口角を上げ続けるシア。
うん、さっきから眺めてたし……助け船出すか。
「あー、アミリア。シアもこう言ってるしどうだ?」
繋いだ手を離し、代わりにスペースを作る。
すると……顔を赤くしながらも腕に抱き付いてくる。
(自分から誘っておいてなんだけどすげぇ恥ずかしい! そして形を変える胸が……)
「——ウキ! ――ユウキ!!」
「はっ!? どうした?」
「ぼーっとし過ぎ!」
「あ、あぁ……ごめんごめん」
「仕方ないですよ~アミリア様のお胸、相当柔らかいですもん」
「「んなぁ!?」」
ばっとアミリアが離れ胸を抑える、柔らかい膨らみが形を変える。
「うぅ……」
「あーすまん……」
「まぁまぁ、アミリア様。奥方様の中で今一番大きいのですから利用しませんと、僕には無いですから……」
段々と白黒になるシア、気にしてたんならごめん……。
「で、でも……恥ずかしいし……」
「何を言うんですか!? ご主人様は大きいのが大好きなんですから! 割とじっくり見てたりすんですから! 持ち味を生かせぇ!!」
「えぇぇぇぇええ!?」
「僕は……もう……成長しないんですよ……」
恥らうアミリアをガシッと掴みシアが血の涙を流しながら言う、そういえば成長速度がめっちゃ早いのを常に見てたのか……すまん……。
「ご、ごめんシア……ほ、ほらユウキもなんか言って!!」
「えぇ……大丈夫! シアの魅力は胸じゃないから!」
「そーじゃねーですよ!? アホご主人様ぁ!?」
シアの攻撃を受け止める、本気じゃないので簡単に受け止められる。
「あーごめんな……」
「うぅ……同情するなら乳をくれ!!」
ガックンガックン揺さぶられる、俺にどうしろと!?
「わかった! 俺の世界に連れてくから! そこだと色々豊胸の方法あるらしいから!!」
効くか知らないけど!
「ほう……きょう……?」
「あ、あぁ……胸を大きくする事だよ。俺の世界にも悩んでる人居るし、この世界より格段に医療は進歩してるから……」
「ご主人様! 愛してる!!」
一応種族的な事もあるし、シアの身体的な成長がここどまりなのか調べてもらうか……。
ぐりぐりと下腹部に顔を押し付ける、絵面がギリギリなので辞めて欲しい……。
「と、とりあえず……行きましょう! ユウキ、シア!」
「あぁ、って離れてくれシア……」
「はぁ……ごしゅじんしゃまぁ……しゅきぃ……」
今後はシアの前で胸の話は止めようと思ったのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなこんなで裏の庭園に着くと、俺とアミリアは顔を見合わせ息を呑んだ。
あの時代のおっさん貴族と瓜二つの人が居た。
そしてこちらを向くとその貴族は目を見開き、ジャンピング土下座をしてきた。
「聖女さまぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「ひぃぃぃぃぃぃい!?」
アミリアが俺の後ろに隠れる、その割には左手の剣を抜けるように構えていた。
「おぁぁぁぁぁ!? 聖騎士様と聖女様のご夫婦……尊い……しゅきぃ……」
大丈夫かなこの人……。
「このダイバーン! 聖女様の祖国奪還のお力になろうと2500余名と共に参上しました!」
凄いキメ顔で言っている、まだ動くつもりは無いんだけど……。
「えっと……まだ戦場には赴かないのですが……」
アミリアがそう言うと白目を剥いてびっくりしてる……。
「聖女様のお声……なんと素晴らしいまるで水琴鈴の如く清凛とした音色! 至上の音とはこのようなものだったのですね!!」
むせび泣きながらアミリアの事を拝み始める、何か凄い崇拝されてるな……。
「ねぇユウキ……私なんか罪悪感が……」
「あぁ……俺もだ……」
まさか、あの芝居がここまで影響を及ぼすなんてな。
「と、とりあえずダイバーン伯爵。席に着いて話しませんか?」
「はぁん! 聖騎士様の心に響く様な凛々しいお声……私めの家名を呼んでいただけるなんて! 死んでも良いです!!」
芋虫の様に動きながら、びくびくと跳ねる。段々気持ち悪くなって来たな……。
「話が! 進まないので座れ!」
「はぁん!! かしこまりまっしゅたぁ!!」
埒が明かないので魔力をぶつけながら言うと、びくびくしながら席に戻って行った。
「凄いな……気持ち悪すぎる……」
「シア……それは言わない約束だ……」
その後を追って用意された席に向かう、色々と近づけたくないので俺が伯爵の隣に座る。
「それでは始めようか」
ノクタールさんの言葉に伯爵が立ち上がった。
「ダイバーン・ドウウフェルでございます。此度は急な来訪に対応していただき恐悦至極でございます」
「一昨年の収穫祭依頼だったな、今年はどうだい?」
ノクタールさんが伯爵に投げかけると、伯爵は一礼して座り喋り出す。
「はい、お陰様で今年も豊作でございます、これも聖女様と聖騎士様の御加護のお陰です!」
目をキラキラさせながら言う、加護ってなんだろう……。
「そうか、それは重畳だ。幸いな事にここには本物の聖騎士殿と聖女様がいらっしゃるのでな……感謝の心は二人に向けてくれ」
ニコリと笑うノクタールさんに伯爵は再度拝み始めた。
作者です。
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