第55話:秘策の準備②
という訳で3日後、やってきましたここは魔族領の南端にある大山脈の一角。元々この場所は最南端の領地へ行くために長くトンネルが掘られていたのだ。
「本当にやって良いの?」
「はい、トンネル自体は150年前に作られたのですが内部の亀裂や雨水の漏水で危険性が増しております」
「そうなんだ、でも山一つかぁ……」
樹木は魔王軍総出で運んだ場所でアミリアとセレーネ、それと数百の兵士が解体してくれる様だ。
「えぇ、危険性も無いようにこの山自体は3日前から立ち入り禁止にしているんです、山上を通りこともあり、この子に縄張り化してもらっていたんです」
「わふぅ!」
最近見ないと思ったらなんか逞しく成長していて見た目がもの〇け姫に出て来るくらいの大きさになっている。
「デカくない?」
「はい、どうやら優希様のお陰で強くなり、このあたりの住民を野犬や野良の狼から守って事で神獣に格上げされているらしく、力が増したそうです」
「マジか……」「わふぅ!」
すりすりと顔を寄せて来る、モフモフなのかと思いきや毛の先端は鉄のように固い。
「でも柔らかいなこいつ」
「ぴーぴー」
撫でていると、お腹を晒し鼻を鳴らしている。
「優希様……私もよろしいですか?」
「いいかい?」「わふぅ!!」
一際元気に答えたグレイウルフはリリアーナに身を任せる、ぽふっとお腹の上に倒れ込んだリリアーナを受け止めわしわしされている。
◇◆◇◆◇◆◇◆
たっぷりもふった俺達は向う側の準備が終わったと連絡を受け準備を開始する。
「んっく……ゴクッ……んっく……ゴクッ……ぷはぁ……」
「じゃあリリアーナ、始めようか」
大量の血を飲み終えたリリアーナが剣を創りだす、俺の渡したレイピアに躁血魔法で刃を強化した状態にする。
「では行きます!——はぁ!!」
一振りで10本以上の木を切り倒す、
その姿を後ろから見守る。
「さて、クロコ。入れるよ!」
影から親指がサムズアップして出て来るターミ〇ーターかよ!
「よいしょっと!」
影に入れると向こう側で引っ張りあげられる、スルスルと影の中に納まっていくので見ていて気持ちがいい。
「あ、あのユウキおにーちゃん」
「ん? どうしたクロコ?」
「聖女様が枝は落として欲しいそうです」
「あーそうだよね、わかった『——ウィンドカッター!』」
風魔法で枝を落とす、するとグレイウルフが枝を器用に加えてはじに避ける
「ありがとう」「わふっ!!」
そういえば名前が無いな……後で名前をつけてあげるか。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから数時間、ひたすらに伐採と転送を繰り返していると、とんでもない事が起きた。
「ふぅ……つかれまし……っつ!?」
「リリアーナ!?」
光に包まれたリリアーナの姿が縮んでいく。
「わわっ!?」
「わふぅ!?」
光が収まると、リリアーナが小学生くらいのサイズになっていた。
「優希しゃま?」
「えぇ……どういう事……」
「私、一体。どうなってしまったんでしょうか?」
「とりあえず、城に戻ろうか。ノクタールさんに聞こう」
「ひゃい!」「わふぅ!」
「っとその前に……クロコ聞こえる?」
「はい、どうしたんですか?」
「今日の作業の終了を伝えて欲しい、それとリリアーナに問題が発生したから城に戻って欲しいと二人に伝えて」
「は、はい!」
急いで影の中に入っていった。
そして城に戻りノクタールさんの元に駆け込む。
「ノクタールさん!!」
「うわぁぁぁ!? なんだいびっくりしたぁ!?」
「そ、それが……リリアーナが!」
小さくなった(服はクロコの借りた)リリアーナを差し出すと、朗らかな顔になって口を開いた。
「おや、もう子供が出来たのかい? 幼いころのリリアーナに似てるねぇ……」
「おとうしゃま! わたくしですわ!」
「へ?」
「リリアーナでしゅわ!」
「え?——えぇぇぇぇぇ!?」
――ガタン! バタバタバタ!
「何があったんだい!?」
「わからないです! ですがリリアーナはだいぶ魔力を使ったからそれ関係じゃないかと」
「そうなのかい? リリアーナ」
おろおろしながら声をかけるパパさん。
「ひゃい! まりょくをせーぶしてたのでしゅが! さぎょうのおわったちょくごに、こうなりました!」
舌っ足らずにもなっているみたいでもう幼女にしか見えない、というか見た目幼女なんだけど。
「ともかく俺の血を吸わせてみたんですが、治らなくて……」
「そうか……私の方でも歴代吸血鬼の情報を洗い出してみるよ。ユウキ殿もわかる方に心当たりは無いだろうか?」
「そうですね……って、そもそも俺の知り合いに吸血鬼は居ないんですよね……」
「そうなのかい? 残念だな……」
「ふっふっふー!! 今こそ私の出番ですね!!」
「「「!?」」」
いきなり声がして部屋に光が集まる、するとそこにはマリアンが居た。
「マリアン!?」
「マリアン様!?」
「まりあんしゃま!!」
「ふっふっふー、実はですね、その状態は只の魔力切れでは無いのです!」
ドヤ顔でマリアンはリリアーナを指差した。
作者です。
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