第47話:襲撃する者と襲撃される者
男は王都の街を酔いどれ足で歩く、そんな男を追う影が二つ。そして裏路地に入ったタイミングで振り向き声をかける。
「貴様ぁー俺を、誰だかぁーわかってるのかぁー!」
「さぁ、誰だろうね」
「あぇrdftgyふlp!!」
酔った男が憤ったように喚き暗器を取り出し構える。
「あはっ! 無駄無駄ぁ! あのお方の前じゃ抵抗は無意味だよ!」
そう影が言うと、目の前の男は背後から近づいていた、もう一つの影の中に落ちた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「んんっ……ここはどこだ?」
手足を縛られた男が目を覚ます。
「やぁシザル、半年ぶりくらいかな?」
ニタニタとシアが笑いながら男の目の前に顔を出す。
「んな!? お前スティシアか! 今日王都を出たはずなのに!!」
「あれぇ? 僕は《《久しぶり》》って言ったんだよ?」
シアの言葉に顔色が悪くなる男。
「まぁ、君が僕を見ていた事は知ってるんだ」
「な、何の事、ぎゃああああああ!!」
焦る男にシアがナイフを突き立てる。
「おっと……このままじゃ死んじゃうな……ごめんなさいご主人様」
「いや、それ位は瑣事だ」
ローブの奥から妖しく目が光り男を捉える。そして傷口にかざした所からみるみるうちに傷が治る。
「はっ、はっ、——ふーっ、ふーっ!」
「さてジザル、僕の質問に答えてもらうおうか?」
「ははっ、俺がそんな簡単に口を割るk、ぎゃあああああああ!!」
「全く、危機感が無いなぁ……ほら、回復しなきゃ死んじゃうよ?」
腹部を刺された男が倒れ、懐から金貨が零れる。
「あららぁ……新造されたばかりの金貨じゃん、ここまで綺麗だと誰が犯人か判っちゃうなぁ……」
男の目に涙が溜まる、ここまでバレたらもう命が無いとおもったのだろう。痛みと絶望で暴れ始める。
「はいはい、まだ聞きたいことがあるんだ。まぁ喋れば命だけは助けてあげるよ?」
「わかった、何でも喋る! お前達を売った事も謝る! だから助けてくれ!!」
「へぇ……僕を売った自覚はあるんだ……」
「あぁ、そうだ! 依頼者から何まですべての情報はやる!」
「ふーん……じゃあ話して」
シアが冷たい目で言い放つ。
「ち、治療は?」
「話さないと、治さないよ? ほら、早く」
「わ、わかった何が聞きたいんだ?」
「最近王都で起きてる失踪事件についてだよ」
ニタニタしながらシアが男の前に顔を見せる。
「ひぐぅ! わかった! 依頼者は国王、薬で眠らせた奴を王宮まで運び込むのが俺達の仕事だ!」
「そんな事簡単に喋って良いの? 王様に殺されない?」
「んなもん、アンタに殺されるよりはマシだ!」
男が喚く、流石に血が出過ぎなのでこっそり治療しておく事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「よっこいしょっと、シアここで良いの?」
「そこで大丈夫だよご主人様、ゴメンねぇ手を煩わせて」
気絶したシザルを、彼の部屋に放り込み外に出る。
「いやぁ、拷問とか慣れてないから助かったよ」
あの後とてもクロコには[みせられないよ!]な拷問が続きあらかた情報を聞き出した。
その結果、失踪事件と聖女暗殺計画が密接に関わっている事が分かった。
「うーん、それにしても聖剣の行方はわからなかったな……」
「そうだね、でも現王は正当な血筋じゃないから躍起になってるみたいだね」
「やれやれ、今のアミリアってシアと同じくらい強いんだけどね……」
「確かに、私が真っ向勝負なら力負けしちゃうよ。でもアミリア様とはタイプが違うからなぁ……」
「毒とか暗殺なら右に出る者居ないもんなぁ……」
「あはは、暗殺もクロコがちゃんと覚えたらもう敵わなさそうだけどね……」
「影に潜むのは凄く強いよね……」
「刃が通るならどんな魔物も人間も簡単に殺せるからね、末恐ろしいよ……」
そんな事を話していると、俺達の上に影が落ちる。
――キンッ、カランカラン。
「!!」
飛んで来たナイフを躁血魔法で作った刃で叩き落とす。
「全く……無粋だねぇ……」
「そうですね~」
広域探知を使うと5人の内3人はこちらへ向かい、二人は逃げ出した。
「死ねぇ、化物!!」
「酷いなぁ、化物なんて……」
素手でナイフを受け止め蹴り飛ばと木箱を巻き込みながら壁に突っ込む。
「うぐっ……クソッ!」
もう一人は躁血魔法で磔に、最後の1人はシアが俺の作ったワイヤーで投網で搦め捕っていた。
「クソッ外れない!」
「それは無理だよ~ご主人様お手製の鋼の網だもん、切れないし動けば動く程絡みつくよ?」
「さて、後の二人は飼い主の元へ向かわせるとして……。まずは君、情報を話してくれれば命だけは助けるけど……どうする?」
「貴様らに話す事など!」
捕らえた二人が口内で何かを噛む、すると苦悶の表情を浮かべる。
「はい、『——復元』。毒で死ねると思った?」
解毒とすると襲撃者が今度は舌を噛もうとする。
「嚙み切っても良いけど、無限に治せるからね?」
「知った事か!」
忠告も聞かず舌を嚙み切る。
「はぁ……『——復元』」
それから何度か襲撃者は自死を試していくが、全て悉く回復させてしまった。
「クソッ……我々の負けだ……」
「まぁ、勝ち負けなんて気にしないし、君達には情報を吐いてもらいたいからね」
そう言うと襲撃者は諦めた様に頭を垂れた。
作者です。
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