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第33話:宿と夜の飛行デート

城門でのやり取りを終えて馬車を走らせる。昔(2000年前)に行った道順が間違ってないならここからが職人街の宿区画だ。


「凄いな……都市自体は多きくなってるけど中心部はそのままだね……」


「そうね、過去の都市と主要な道はほぼ一致してるわね」


「昔ミローズは人間領では無く魔族領だったんです、それから両国の国主が代替わりしていくうちに小国になったのです。ですが約500年前の大陸戦争で人間領に征服されたんですわ」


「そうだったんだ……でもその割に変わってないね」


道の大小や裏通りの小道が変わってるのはあるけど基本は一緒だ。


「えぇ、ミローズは降伏しただけですので特に街並みなどに被害は出て無いんです、ですので都市自体の区画変更はあったのですが特に変化していないのです」


「「「「「へぇ~」」」」」


俺達皆が感嘆の声を上げた。


「私は、そこまで習わなかったわね……大きな戦争があったのは知ってるけど」


「私は歴史なんて勉強してないです!」


いや、セレーネよ、誇る事じゃ無いぞ……。


「わかった、その内セレーネは勉強だな」


「えぇええぇぇぇええええ!?」


「そうね……私も一緒に勉強するわ、頑張りましょう……」


愕然として肩を落としたセレーネの肩にアミリアが手を置く。


「さて……どうするかな……」


話している間に到着した、職人街の宿屋区は独特の装飾を凝らした宿屋が立ち並んでいる。


「馬だけ置ければいいんだけどねぇ……」


「凄いわ……あの宿なんて庭に噴水あるわよ」


「あちらの窓は色ガラスが使われていますわね」


「すごーい……」


「ふぉおお!? あの細工凄いです! あぁ、あっちの看板の細工も!!」


皆感想が様々だ、そんな事を考えながらどこの宿屋にするか悩んでいると声がかけられた。


「ははは! 元気な嬢ちゃん達だ!」


「えっと……どちら様?」


凄くずんぐりむっくりしたおじさんが荷車を引いていた。


「おう、俺か? 俺はこの宿屋街で統括やっちょるモンだ、名前はグローグって言うぞ」


「えっと……失礼ながら質問なんですが、何で荷馬車引いてるんですか?」


木材や食材が乗ってる荷車へ目配せすると、グローグさんも振り向く。


「これか? これはあの三件目の宿屋の店で補修資材が足りなくなってな、俺が市場に行くからついでに補修資材をギルドから貰って来たんだ」


「そうだったんですね」


「そうだ、おみゃーら宿探してるなら今から行くとこが良いぞ」


グローグさんが三件目の宿屋を指差す。


「その資材を持って行くところですか?」


「おう、飯は美味いし、ベッドもふかふかだ。それに追加料金だが風呂が入れるんだ」


「お風呂ですか……確かにこの辺りじゃ珍しいですね」


「だろう?」


「わかりました、当ても無いのでそこにします」


「んじゃ着いて来ると良い」


そう言って荷車を引いて行ってしまった。


「何ていうか……変わった人ですね」


「そうね……」


「でも悪そうな人じゃないです」


「それは確かにですね」


皆が話す中ロップルさんだけ考え込んでいた。


「どうしました? ロップルさん」


「いやーグローグって職人さんが私の時代に居たんですよ」


「そうなんだ、凄い偶然だね」


「はい、でもその職人さんって人間じゃ無かったような……」


「おーい、おめーらぁーこっちだぞー」


「あっ、はーい!」


グローグさんの呼ぶ方向へ馬車を動かした。



◇◆◇◆◇◆◇◆

結論的には宿は凄く綺麗で、内装にもこだわりが多くみられた。宿の従業員は人間の若い御夫婦だった。


「いやーおいしかったぁ~」


「そうですわね、とても美味しかったです」


「それに、お風呂も最高でしたぁ~」


「ほんとですぅ~」


「あのさ……何で俺も同室なんだよ!」


さっきから放っておかれてた俺がしびれを切らし声を上げる。


「え? だって私達夫婦ですわよね?」


「夫婦だよね?」


「一緒の天幕に寝たじゃない」


「私は養ってくれるなら……」


「わかったけど……ロップルさんはお断りです」


「なんでぇ!?」


だってねぇ……。


「まぁ仕方ないか……とは言っても手は出さんからな!」


「「「「「ぶーぶー」」」」」


「不満を言わんでくれ……それとリリアーナ、夜半過ぎに出発するからね」


「わかりましたわ」


「気を付けてね」


「気を付けて下さい!」


「気を付けてね~」



◇◆◇◆◇◆◇◆

月が天井に向きかけた頃、俺とリリアーナが起きて支度をする。


「リリアーナ、準備できた?」


「はい、大丈夫です」


今夜のリリアーナはいつものドレスでは無く、背中が大胆に出たドレスだ。


「では、お先に失礼しますわ」


リリアーナが背中から翼を生やし飛び上がる。


「すげ~かっこいいなぁ。よしっ、『躁血魔法&浮遊魔法』」


俺も黒い外套の上から、リリアーナと同じ形にした、鮮血の翼を生やし浮遊魔法で飛び上がり、リリアーナへ追い付く。


「凄いですわ! 躁血魔法で翼を作ったんですわね!」


「うん! リリアーナに合わせた形にしてるんだ!」


「嬉し過ぎますわ!」


「ありがとう、それとまだ時間はあるし少しデートと洒落こもうか!」


互いに飛行に干渉しない様、夜の街の上を飛び回るのだった。

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