|幕間|:グランツとロップルの過去。ユフィと耀の準備。
今日は短い幕間です、前半はロップルを連れて行く経緯と、後半は元世界のお話です。
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アミリアを転移で王都に送り届けた後、俺は職人ギルドの皆と送別会という名の宴会を楽しんだ。
「聖騎士様! 私連れて行って下さい!!」
「え? 嫌ですよ……」
ロップルさんが目を爛々と輝かせながら詰め寄って来る。
「何でですか!? それなら聖騎士様の子種を!!」
「あぁもう! 駄目だっての! 未来に行っても伝手も何も無いだろ!」
「そこは聖騎士様が……」
「お断りします」
「なんでですかぁ!! 私じゃ不満なんですかぁ!!」
「そんな金目的の打算で好かれるなんて嫌ですよ! それに、もう二度と帰ってこれないんですよ? ご両親とも会えない。ただの旅行じゃないんですから……」
「うっ……そ、それは……」
「いーじゃねーか。聖騎士様コイツ連れて行ってくれよ」
「え? ギルマス?」
グランツさんがヌッと出て来ると援護する、そして唖然とするロップルさん。
「こいつは元々向こうの王都に居てな、最初の争乱で命からがら逃げて来たんだよ」
「そうなんですか……」
「それに両親は居ないし、正直ここにいても埋もれちまうからな……それに、おいロップルいつものやってみせろ」
「え~あれ結構面倒なんですよぉ~(ブツブツ……)」
そうブツブツ言いながら簡易的な作業場に座り器用に小槌で金細工を拵えていく。
「おぉー凄いですね」
「あぁ、アイツは彫金が上手くてな。一時期は工房勤めもしていたんだがそこのおやっさんが亡くなって以降、ロップルの見た目しか見ない奴ばかりでな」
「まぁ確かに可愛いですもんね」
「ほら、ちょっと前にお前さんに突っかかってきたズークって居ただろ? あんな奴ばかりで困ってたんだ。それで仕方ないからギルドの受付にしてたんだよ」
「大変だったんですね……」
「はい、できましたよ~全くギルマスは人使い荒いんだから……」
ほんの5分程だがロップルの手元には凄く綺麗な蝶の髪飾りが出来上がっていた。
「すごっ……」
「お前……また腕上がってるな……」
「えへへ~聖騎士様の世界の物見てたら創作意欲が湧いてきちゃって……」
照れている姿が可愛らしい、好みじゃないけど彼とは気が合いそうだよな……。
「まぁ、気に入らなかったら他の人を紹介してあげれば良いか(ボソッ」
「ん? 何か言いました?」
「いーや、もし良かったら俺の世界で働いても良いかなと思ったんだ」
そう言うとロップルは目を輝かせる。
「ホントですか!? やったぁ!! これで大金持ちだぁ~!!」
「いや、ちゃんと働かないとお金は貰えないぞ?」
「えぇ~」
「まぁ、職場は用意してあげるし、俺の世界の職人も紹介してあげるからさ」
「むぅ……お給料は弾んで下さいね」
「わかったよ、まぁ俺の世界に戻る前に色々と、解決しないといけない事ばかりだけどな」
もう俺の話を聞いて無いロップルが、お酒を片手に同僚に絡みに行った……。
「とりあえず、アイツを連れてく時は簀巻きにでもして行ってくれや」
「えぇ……」
「ははは、騒がしかったらそっちのが大人しくなるだろうからな!」
わははと、瞳を潤ませながら笑うグランツさんはお酒を呷るのだった。
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「どうヒカリ? 感覚は掴めた?」
「えぇ、これなら問題は無さそうね」
ユフィによって改良が加えられた杖を振るいながら答える。
「良かった、それじゃあ後は皆の準備だけ」
「そうね、春華ちゃんと冬華ちゃんは?」
もう1週間は姿を見ていない二人の事を聞く。
「ハルカとトウカはユキとメアリーを連れて昨日ダンジョンに行った」
「あれ? 昨日だっけ?」
「そう、時間の経過が違うから昨日、ヒカリは向うに居過ぎるから時間の感覚が狂ってる」
「ありゃ、そういえばそうだったわね……失敗失敗」
「そういえばユウキは?」
「あーなんか剣打ってた」
「剣? 魔法剣?」
「そうそう、何か優希の魔力を込めた鋼で剣を作る必要があるんだって」
「その剣……欲しい……」
目を輝かせながらそわそわするユフィ、流石にアミリアちゃんへの、優希のお手製プレゼントだしなぁ……。
「うーん……アミリアちゃんへのプレゼントだからねぇ……」
そう話すとユフィが少し落胆した。
「そう……なら今度作ってもらう」
「そうだね、私も作ってもらお」
「ん、それが良い。皆に一つづつ作るべき」
「あはは……優希大変だぁ……」
そう言って笑っているとユフィが思い出した様に言う。
「ん、そういえばエアリスが迎えに来てだって」
ボロボロになった手紙らしき紙片を取り出してユフィが言う。
「仕事は終わったのかな?」
「多分、文字が消えたりしてるから読めないけど」
劣化し過ぎてもはや半分近く判別できない元手紙をまじまじと見る。
「うーん……まだやっぱり上手く転送できないかぁ~」
「ん、改良が必要」
「そうだねぇ……まっ、お茶飲んだら行きましょうか」
「私も飲む」
「はいはい、いつものメアリーブレンドで良い?」
「お願い」
その返答を聞いて私は郊外に作られたユフィの実験場を後にした。