第27話:旧王城攻略戦③
室内に入るとボロボロの玉座に一人の青年が座っていた。
「ギザマラ……ナニモノダ……ゴコハオウノギョジョウデアルゾ」
「えっと……どちら様?」
確かにあの王様を30歳位若くしたらあんなんだけどさ。
「ワレバ……コノクニノ、オウナリ」
「え? 王様の兄って言ってたからもっとご年配かと思たんだけど?」
「オウダト? アノ……グテイノキシカ……」
「うーん、違うわね。聖女として呼ばれはしたけど騎士では無いわ」
「ゼイジョダト……」
「とりあえず、アンタの力。どこで手に入れたか教えて欲しいんだけど!」
「ワレノヂガラハ……イカイノカミヨリイタダキシモノ」
異界の神って……まさか?
「わかった、その力の源泉は地下にあるんだな!」
「ナゼソレヲ!?」
「いや、調べたからに決まってるじゃん」
よし、図星みたいだし。さくっと片付けてしまおうか。
「それじゃあ、ここは私に任せて。ユウキは地下へ!」
意気揚々とアミリアが言う、全身から魔力が漏れてるし殺る気に満ちてる。
「任せた!」
踵を返して地下へ駆け出す、今のアミリアなら多分余裕で倒せるだろう。
「さて鬼が出るか蛇が出るか……」
背後で膨れ上がるアミリアの魔力に感心しつつ窓枠から外に飛び出すのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇アミリアside◇
「はぁっ!」
抑えていた魔力を解放して剣を構える、私の構えに相手は顔を顰める。
「ナンダソノチカラハ……」
「私の最愛の人が与えてくれた力よ!」
「イマイマシイ!!」
初めて大きな感情を見せた敵が牙と爪を生やし跳躍する。
「まるでおとぎ話の中の悪魔みたい。でも、遅い!!」
「ギャアアアアアアアア!?」
横を駆け抜けざまに腕を切り落とす。ユウキの思惑通り相手の腕は再生しない。
「グウゥゥゥ!? ナゼダ! ナゼェェェ!」
呻いてる相手の眼前に飛び込み両断する。
「愛の力、なんつって……あー恥ずかしい」
「ウグゥ……ソンナモノニ、マケルノカァァァァ!」
咆哮をしたと思ったら下から膨大な魔力が昇って来た。
「っつ!? まずいっ!」
慌てて避けるも、崩落に足をとられる。
「きゃあああああああああ!?」
私はそのまま落ちてしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇優希side◇
「この下が、問題の場所だけど……もう降る階段は無いんだよなぁ……」
おおよそ10メートル、そこに根源が居るっぽい。
(この際ぶち抜くか?)
「ふっつ!」
――パァン……バァン!!
とりあえず魔力込めて殴ると2メートル程地面が抉れた。
「後5~6回か」
「ふっつ!」
――パァン……バン!!
「ふっつ!」
――パァン……バァン!!
「ふっつ!」
――パァン……バスン!!
「ふっつ!」
――パァン……ベギン!!
「え? うわぁぁぁぁぁあ!!」
そうして後1回という所で魔力の奔流が起こった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「うへぇ……気持ち悪い……」
外傷等は無かったけど、気持ち悪い魔力を浴びて嘔吐感がせりあがって来る。
「しっかし……まじか……」
目の前には巨大な魔石が鎮座していた。
「しかもこれ、人間の魔力を凝縮してる……というか……人間そのもの?」
よくよく見ると周囲に人骨が散乱してる、これは人間を煮詰めて作ってるのか……。
「ん? 何か落ちて来る?」
「きゃあああああああああ!?」
「よっと……大丈夫?」
落ちて来たアミリアをキャッチして抱える。
「ゴメン……しくじった……」
アミリアが指さすとそこには魔石に取りついて、奴が身体を無理矢理再生させていた。
「マリアン!」
「は、はぃぃぃ!!」
現れたマリアンに問いかける。
「アイツ、倒して影響は無いか?」
「どれどれ? うわキモっ……えっとですね……そのまま壊すと不味いです! 何か封印する物があれば!」
「封印かぁ……何か無いか?」
マリアンを見ると想定してなかったのか驚く
「えぇ!? 私、実は優希さん達を戻す為に力を預けてきちゃったので今はこんなものしか……」
なんか瓶が出てきたんだけど……。
「いやー入らないでしょ……」
「ですよねぇ……」
「あの? 二人共……これじゃダメ?」
アミリアが俺の作った剣を出してくる。魔力を込めたのかめっちゃ輝いてる。
「剣ですか……って何ですかこの神気!!」
「ユウキが打ってくれたのよ」
「通りで……これなら大丈夫です!」
マリアンが万遍の笑みを浮かべる。
「でも……良いのか?」
「大丈夫! またユウキに作ってもらうから!」
「わかった、今度はもっと良いのを作るよ」
そう答えて、アミリアと共に一本の剣を構える。
「じゃあ、やるか!」
「えぇ! 終らせるわ!」
「私も少しですが! 浄化の力を込めます!!」
マリアンが力を込めると、剣の輝きが強くなる。
「じゃあ行くぞ!」
駆け出して邪神と魔石を一直線に置く。
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
「フフフ! コノチカラガアレバ!? グァァァァァァ!?」
そのまま貫いて魔石に剣を突き立てる。
「グァァァァァァ!!」
潰された邪神は黒いものを吐きながら最後のもがきをするが段々と力が無くなり灰と化して消えた。
「!? 優希さん未来が見えました!!」
そのマリアンの言葉にアミリアと顔を向き合わせる。
「という事は?」
「帰れるのね!!」
「「やったぁぁぁぁぁぁ!」」
二人で抱き合うと外から勝ち鬨が聞こえた。