第23話:わかった事①
半日かけてアミリアと共に大型の敵を倒して回り、第一砦の脅威はほぼなくなった。
そして少し仮眠をとった俺とアミリアは軍議に顔を出している。
「と、いう事で。後は皆さんにお任せしますね~」
「ありがとうございます聖女様、聖騎士様」
「圧倒的に被害を押さえる事が出来ましたし、これで攻略も容易になりました」
「魔王といい、この度の大型の敵の討伐といい、感謝してもしきれない……」
王様が何度目かわからない頭を下げた。
「いえいえ、私達も出来るだけ早い帰還を考えてますので」
「そうじゃったな……先の未来に帰るところがあるのじゃったな……」
「それと、多分俺達がここに長居をしたら未来が滅茶苦茶になる気がするんです」
「それは、本当なのですか?」
「ならば早く戻っていただかねば!」
貴族たちが少し騒がしくなる、その横でアミリアが俺の顔を見上げて来る。
「ユウキ、それって?」
「ん? 勘だよ勘」
本当はあの城の地下にあるのが邪神に関係があるのなら、マリアンに報告もしないといけない、なにより以前関所で大暴れした魔獣と関係ありそうな感じだからなぁ……。
「そうなのね、じゃあ早く倒さないと」
「後で詳しく話すよ、予想だけど」
「わかったわ」
アミリアとの内緒話が終わると、貴族たちが困った様な顔をしていた。
「どうしたんですか?」
「いや、聖騎士様と聖女様の時代に対して我々が出来る事が無いのが心苦しいのです」
「私など命を助けていただいたのに恩を返せず……」
「大丈夫です! 私達の時代は私達がどうにかします! だってユウキが居ますから!」
そう言ってにこりと笑う、そう言われたら仕方ないな……。
「あぁ、任せてくれ、この時代も未来も救ってみせるよ」
「では、私達は代々受け継いでいきます」
「えぇ、この時代の為に尽力をしてくれた聖騎士様と聖女様が居た事を」
「いつかの未来にお二人の力になる事を」
次々と貴族たちが賛同する、というか絵に残すとか戦記に記すとかやめてくれ。
「皆様、お食事が出来ました」
天幕の中に入って来たメイドさんが俺達に声を掛ける。実は少し悪かった全軍の食事事情も。追加でオッサンが糧秣を手配してくれて、使用できる食材が増えたため、調理する人数が足りなくなり城から派遣してもらったのだ。
「それでは皆の者、食事にしよう。」
◇◆◇◆◇◆◇◆
夕食を終えた俺とアミリアは先程話していたことを共有するために天幕へ戻って来た。
「それで、さっきユウキが言ってた話は本当なの?」
ベッドに腰かけたアミリアが聞いてくる。
「うん、この時代に召喚されて来た事も関係してるんだろうけど、昨日アミリアと闘う前に索敵をしてきたんだ」
「それで?」
「悪神と呼ばれる存在……邪神なんだけど偵察してたらアイツが一気に強くなったんだ」
「そうなの?」
「うん、以前にグレイウルフを助けた時の事、覚えてる?」
そう聞くとアミリアが大きく頷く。
「レイルの事ね、大きくなって関所で暴れたわよね?」
あの子レイルって名前なのか、まぁそれは置いといて。
「その時に急激に大きくなって暴れたじゃん? その力がどこから与えられたのか不明だったんだ」
「あの奴隷商人が王様の御用商人なのは判ってたんだけど、どこでその力を得てたのかがわからなかったんだ」
「そうなのね……それでどこだったの?」
「恐らくだけど城の地下だ」
そう言うとアミリアは首を傾げる。
「私、幼い時に城の地下に行った事はあるけど。あそこには倉庫と牢屋しかなったわよ?」
お転婆だなぁ……まぁ秘密の通路とかあったら入りたくなるよね。
「うーん……疑問なんだけど。アミリアのお父さんが追い落とされたのって政治的になのかな?」
疑問に思った事を問いかけるとアミリアが悩み始める。
「うーーーーーーーん……わかんない!」
「そっか、まぁそこら辺はシアも詳しそうだし、帰ったら城の地下にも忍び込もうかな」
「むぅ……」
色々と考えてると、何かアミリアが膨れてる。
「シアだけとかずるい、私も連れて行ってよ」
「えぇ……一応シアも俺も《《魔法で気配を消すのは》》得意だからなんだけど……」
「じゃあ! 私も覚える!!」
良い笑顔で行って来るアミリア。ちゃんと学べば使えるだろうし、まあいっか。
「それじゃあ戻ったらシアに教えてもらって、その間に俺は色々と動くし。魔王城の書庫で調べたい事もあるから」
「わかったわ、私は……勉強苦手だから任せる!」
良い笑顔で言うアミリア、王様になりたいなら勉強しなさいな……俺もだけど。
「王様自体の情報も集めなきゃなぁ……」
レナスはちょくちょくアミリアへの慰労の手紙を送ってくれてるし、それに混ぜて情報のやり取りもするか。
「この時代に飛ばされた事も悪い事じゃなかったな」
「そうね、お陰で色んな事が分かってきたわね」
「さて、さっき仮眠は取ったけどもう寝ようか?」
「わかったわ、それじゃあおやすみ」
「あぁ、おやすみ」
そうして灯りを落としたのだった。