第20話:なんちゃって魔王と聖剣
――――カーン――カーンと金槌で金属を叩く音が響く。
「おお! いいぞ兄ちゃん!」
「たまげたなぁ……昨日今日でここまできるなんて……」
「お前ら静かにしてやれ! 集中してるだろ!!」
「「おめーが一番うるせえよ」」
ドワーフ三人衆が騒ぎ立てる、黙られるよりはやりやすい。
「ふぅ……これで良いですか?」
三人に出来上がった剣身を見せるとより一層湧き立つ。
「おう! 後の研ぎは俺が」
「鞘はワシが」
「柄は私がやるからね!」
三人衆は出来上がった剣身を持って行ってしまった。
「凄いわね……」
「あはは……三人共凄いね」
「ユウキ、お疲れ」
アミリアがタオルを持ってきてくれた。
「ありがとう、いやー手が痛い痛い」
普段使わない筋肉を使ったので若干筋肉痛だ。
「さて……もう一仕事してくるかな~」
汗を拭い終えたタオルを空間収納に仕舞いながら伸びをする。
「毎日大変よね……」
「まぁ、明日で終わりだから」
「ねぇ……明日って本当にやるの?」
不安そうな顔をするアミリア。その頭を撫でながら答える。
「まぁ、アミリアが舐められてるからねぇ~」
「私は別に……」
「いや、俺がムカついてるから。それにあんな奴をそのままにしておくと国にとっても良くないからね、それに骨は折れるけどこれ位なら面倒じゃないし」
「……わかったわ」
覚悟を決めた顔でアミリアが言う。
「それじゃあちょっと行って来るわ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、着替えて仮面を被って……」
ボロボロのローブを着込んで仮面を被る、目の所を光らせてボロボロの剣を持つ。
「『——飛翔』」
空を飛び貴族陣営に向かう、見張りが俺を見つけ叫ぶ。
「敵襲ー!! 魔王が現れました!!」
ガンガンと鐘を鳴らし陣営がざわつく。
(今日は風の刃でテントを壊すか……)
手を振るうと風の刃が飛びテントを切り刻む、何人か風の刃に巻き込まれ怪我をしている。
(ごめんなぁ~後で治すから許してくれ……)
そうして存分に荒らした後は第一砦の方へ飛んで行き変装を解いて戻る。
「さて……明日は仕上げだな」
転移を使ってアミリアの元へ戻るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「それじゃあ、行って来るわね!」
以前作った砦の入り口で、軽装鎧に俺の魔法鎧を着たアミリアが馬に乗る、腰には魔石で彩られた聖剣(俺作)を佩いている。
「第一砦に到着したらポーション飲む様に。後、最後は渡した魔道具を使ってね」
「わかったわ! 行くよ!」
アミリアは馬の首をひと撫でして腹を蹴り駆け出して行く。
「さて……俺も出発するか」
借りている工房に戻り鍵をかける。
「後3時間かぁ……」
先に砦の奥の偵察に行くか。
魔王セットを装着して転移する。
「よっと……『——飛翔』」
浮き上がり空を飛ぶ、よく見ると村があったであろう集落や家の集まりが散見される。
「おっ、城が見えた」
未来の世界よりは小ぢんまりしているが城壁は高く、城下も入り組んでる。
「これ、前もって吹き飛ばすか……城下もこれだけ朽ちてると壊して再建した方が良さそうだし」
さて次は、城を見に行こう。
「そうだ、『広域探索&鑑定』」
やっぱり邪神って表示されるな、レベルは1000ちょっとだからかなり低いけど。
「どこから力を得てるんだ? 敵はそこまで強くないし、同胞同士を戦わせてるわけじゃないしな……」
上空から見る限り大型の敵とかも伸び伸びと寝ている。
「うーん……外からじゃわからん……」
そんな事を考えてると、邪神の魔力が地下へ進んでいく。
「地下に何かあるのか……えっ!?」
地下に行き魔力が膨れ上がった瞬間レベルが100程跳ね上がった。
「こりゃ大収穫だ、地下に何か居る可能性があるな」
――――ピピピピ――――ピピピピ。
「時間切れか、戻らないと……」
踵を返して戻る、近づくと攻城戦が開始されていた。
「あのオッサンは……。指揮官やってるな、予想通り」
怒号をまき散らし無理な指示を出す、そうこうしてる内に大型の敵が兵士を蹴散らしていく。
「!?!?!? 魔王です!! 魔王が現れました!!」
「クソッ! クソッ!! ただでさえ押され気味なのにアイツが出てきたら崩壊するだろ!!」
ゲシゲシと部下の伝令を足蹴にする。胸糞悪いな……。
(とりあえず『——広域探索』)
すると騎馬に乗ったアミリアが軍勢を切り裂くように駆けている。
(さて……それじゃあ始めますか!)
急降下してオッサンの目の前に降りる、すると腰を抜かしたのかその場に倒れ込む。
「ひゃああああ、たすっ助けて!!」
「………………」
無言で背負った剣を構える。
「あ、アイツを倒せ!! 倒した奴は褒美だ!!」
周りの兵士が剣を構えじりじりと詰めて来る。
「………………!!」
「うわあぁぁ!?」
「ぎゃあっ!?」
「ひぐっ!?」
飛び掛かり他の兵士を持っていた剣ごと切り捨てる。
「………………」
「ひいぃ」
剣を構え斬りかかる、その直前。目の前に深紅の髪が飛び込んで来た。
「させないわ!!」
俺の剣を受け止めたのは完全武装したアミリアだった。